Kroi、大きな一撃に備えて作戦会議 駆け抜けた2024年の先に見つめたバンドのこれから

Kroi、駆け抜けた先に見据えるこれから

 Kroiの2024年は、前年からの勢いをさらに加速させた“Hyper”な一年だった。1月の日本武道館、6月の横浜赤レンガ倉庫での初の野外フリーライブといった大型ワンマンライブを次々と成功させ、イベントやフェスにもひっぱりだこ。R&Bやファンク、ソウル、ロック、ヒップホップとさまざまなジャンルを飲み込んだグルーヴィーなライブで全国各地のオーディエンスを揺らしてきた。また、「Sesame」(テレビ東京『ぶっちぎり?!』OPテーマ)、「Amber」(ダイドーブレンドTVCMソング)、「Jewel」(フジテレビ"火曜9時枠"『オクラ〜迷宮入り事件捜査〜』主題歌)といったタイアップ曲からKing & Princeへの楽曲提供(「Last Train」)、香取慎吾とのコラボレーション(「UNERI KUNERI(feat. Kroi)」)など、彼らの音楽性が外部に求められる場面も増えている。

 息つく間もない活躍ぶりを見せたKroiのメンバーは、2024年をどのような一年として過ごしてきたのか。久々に話を聞くべく取材を申し込んだところ、リモートインタビューに応じてくれた(内田怜央は途中参加)。音楽にはとことん真面目、でもユーモアも忘れずに。現状に甘んじることなく突き進むKroiのこれからがますます楽しみになる話を聞くことができた。(編集部)

「課題はいくらでもあるし、絶対にそこを諦めちゃいけない」

Kroiアーティスト写真
(左後ろから:関将典、益田英知、千葉大樹、長谷部悠生、内田怜央)

――2024年のKroiについて聞かせてください。1月に初の日本武道館ライブ、6月に3rdアルバム『Unspoiled』のリリース、全国ツアー、台北でのワンマンライブなど精力的な活動が続きましたが、みなさんにとってはどんな1年でした?

関将典(Ba):武道館を皮切りに、年始早々からレベルアップした姿を見せられたと思っていて。その後の活動においても、ワンランク上がったものを見せるというのが暗黙の了解みたいになってたんですよ。そのうえで海外での単独公演であったり、それまでやっていなかった場所でのライブにも果敢に挑んで。どこにいってもその土地のお客さんが来てくれたし、しっかりスケールアップできたんじゃないかなと思っています。

千葉大樹(Key):フェスなんかでも、今まで以上に人が集まってくれて。自分たちがどれくらい聴かれているか、どれくらい関心を持たれているかは、フェスの反応などでわかったりもするし、ちゃんと手ごたえを掴めるようになったと思います。決して曲がバズってるわけじゃないんだけど、僕自身はそれでいいと思ってるんですよ。急激に成長すれば急激に降下するリスクもあるし、着実に積み重ねたほうが持続力につながるんじゃないかなと。「低くても遠くに行きたい」という感じもあるし、変に焦って不用意なことをしないでーークオリティコントロールも含めてーー着実にスケールアップしている状態だと思っていますね。

――なるほど。長谷部さんはどうですか?

長谷部悠生(Gt):そうですね、武道館から始まって……。

千葉:……なんで部屋が赤いの?

――赤いライトですか?

長谷部:LEDライトを買ったんですよ。……色変えようかな(リモコンを操作し、紫に)。話を戻すと、5000人以上の規模感のライブって、感覚が変わってくるんですよ。音のイメージもそうだし、「細かすぎるフレーズだと、いちばん後ろのお客さんに伝わらないかもな」と思って、あえて大味なフレージングにしたり。演奏だけじゃなくて、たとえばグッズにしてもーー僕がディレクションしているんですけどーー東名阪ツアー、全国ツアー、武道館くらいのライブでは販売の個数や作れるものも変わってくるんです。そういう感じで全体の見方が変わってきた1年だったのかなと。

――ギタリストとしての意識も変化した?

長谷部:そうですね。メジャーデビュー以降は、どれだけ音源を良くできるか? ということを考えていたんですけど、ライブでは同期を使わずに5人の音だけでやるので、お客さんが違和感を覚えないようにしたくて。ギターを弾いてるのは僕と(内田)怜央ですけど、ラップのパートではギターを弾かないので、「音源でもギター1本のほうがいいかな」みたいなことを考えたり。「ここは歌いながら弾くのが難しそうだな」というところにフレーズを入れ込んだり、そういうことは常々やってますね。

『Kroi Live at BUDOKAN 2024.01.20』(撮影=jacK / Goku Noguchi)
『Kroi Live at BUDOKAN 2024.01.20』(撮影=jacK / Goku Noguchi)
『Kroi Live at BUDOKAN 2024.01.20』(撮影=jacK / Goku Noguchi)
『Kroi Live at BUDOKAN 2024.01.20』(撮影=jacK / Goku Noguchi)
『Kroi Live at BUDOKAN 2024.01.20』(撮影=jacK / Goku Noguchi)
『Kroi Live at BUDOKAN 2024.01.20』(撮影=jacK / Goku Noguchi)

Kroi - shift command (Live at Nippon Budokan, 2024)

Kroi 横浜赤レンガ倉庫フリーライブ『Departure』(撮影=YUTARO TAGAWA(CEKAI) )
Kroi 横浜赤レンガ倉庫フリーライブ『Departure』(撮影=YUTARO TAGAWA(CEKAI) )
Kroi 横浜赤レンガ倉庫フリーライブ『Departure』(撮影=YUTARO TAGAWA(CEKAI) )
Kroi 横浜赤レンガ倉庫フリーライブ『Departure』(撮影=YUTARO TAGAWA(CEKAI) )
Kroi 横浜赤レンガ倉庫フリーライブ『Departure』(撮影=YUTARO TAGAWA(CEKAI) )
Kroi 横浜赤レンガ倉庫フリーライブ『Departure』(撮影=YUTARO TAGAWA(CEKAI) )

――なるほど。益田さんはどうですか?

益田英知(Dr):怒涛の1年だったと思いますね。武道館から始まって、『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』があって、アメリカでライブをやらせてもらって、台北でのワンマンライブもあって。今年の初めはアルバムのレコーディングをやってたし、その後もタイアップ曲の制作があって、インプットとアウトプットがごちゃごちゃになってたんですよ。気持ちの切り替えもけっこう大変で、気付いたら12月になってたというか。個人的には、少し追われてしまった感覚がありましたね。あと、自分も内面的な変化があって。さっき悠生も言ってましたけど、ライブの規模が上がったことで、バンド内のドラムの在り方だったり、どうしたらもっとグルーヴするか? みたいなことをさらに考えるようになりました。日によってみんなのテンションやコンディションも違うし、そこに合わせてどうアプローチしていくか? という。ライブで演奏して、どう改善していこうか考えて……みたいなことを繰り返してた1年でもあるし、前よりももっとシビアにドラムのことを見るようになったと思います。

関:制作やツアーのたびに新しいアレンジを考えて、アイデアを持ち寄って。それぞれスキルアップしているし、音楽に対する知識力も含めて、成長できている実感もありますね。アルバムのツアーでも、さらに楽曲を成長させられたし、自由自在に音楽を届けられる場面が増えたのかなと。

千葉:もちろん良くはなっていると思うけど、「まだまだいけるな」という部分もいっぱいあって、個人的にはそっちの考えのほうが強いですね。まったく現状に満足していないし、バンド全体のグルーヴ、サウンドメイク的なことを含めて、もっとクオリティを上げないと。課題はいくらでもあるし、絶対にそこを諦めちゃいけないと思っています。

Kroi『SXSW』(撮影=Goku Noguchi)
Kroi『SXSW』(撮影=Goku Noguchi)
Kroi『SXSW』(撮影=Goku Noguchi)
Kroi『SXSW』(撮影=Goku Noguchi)
Kroi『SXSW』(撮影=Goku Noguchi)
Kroi『SXSW』(撮影=Goku Noguchi)

内田怜央(Vo/Gt):すいません、遅くなりました。

――よろしくお願いします! ドラムセットが見えますけど、ご自宅ですか?

内田:いえ、制作スペースですね。これまでずっと実家の部屋で作業をしてたんですけど、さすがに無理が出てきて。昨日も夜中までここで音を鳴らして遊んでました(笑)。

――素晴らしい(笑)。内田さんは、Kroiの2024年をどう捉えていますか?

内田:駆け抜けた印象が強いですね。アルバムを出させてもらって、ライブもかなりの数をやらせてもらって。タイアップ曲や楽曲提供もあったし、今までやってなかったことを体験した年だったと思います。この経験を経て、自分たちがどういう方向に進化していくのか? というところに入ってますね、今は。

――活動の幅とスケールが上がったことによって、Kroiとしても内田さん自身も変化している?

内田:そうですね。Kroi自体、「常に変化していく」というのはずっと考えているところで。最初は衝動的にやっていたし、それが有意義な活動につながっていたと思うんだけど、そういうやり方だけだとだんだん手がなくなって、同じことを繰り返すようになるような気がして。そのなかで、自分たちが刺激的だと感じられるもの、新しいものをどれだけ貪欲に得ていくかがポイントになってくるんだろうと思ってるんですよ。踏ん張りどころ的な面もあるのかなと。音楽性もそうだし、表現に向き合う姿勢もそうで。「Kroiはどんなことをやっていくバンドなのか」というのがここから決まっていく感じがあるんですよね。

――過渡期に差し掛かっているのかも。そのあたり、千葉さんはどうですか?

千葉:うーん……。そういうことは意外と悠生が考えてるんじゃない?

長谷部:え? そうですね……めっちゃ個人的なことなんですけど、25歳になりまして。20代前半の尖りがなくなってきた気がしているんですよ。メジャーデビューして3年経ったというのもあるんですけど、ちょっと慣れてきてしまったのかなと。デカいところでライブをやったり、テレビに出たり、高校生の頃に好きだったバンドと対バンしたり、本当にいろんなことがあったけど、初心を忘れちゃいけないなと最近思うようになりましたね。なので照明を紫にしてみたり、ヒゲの真ん中だけ剃ってみたり。

内田:おまえの初心、そんな感じだっけ(笑)?

長谷部:ただ変になってるだけかも(笑)。でも変な人って魅力的だと思うし、そういうところもなくしたくないので。

――(笑)。関さんはどうですか?

関:最近、今後についての話をメンバーとしたところなんですよ。2025年2月1日にぴあアリーナMMでライブをやらせていただくんですけど、そのためのアレンジを考えているときに、「新しい要素を入れ込むことを怠っていたかもな」というところが出てきて。メジャーデビュー以降、かなりライブの数が増えたんですけど、実力がついてきた反面、こなれてしまったところもあるのかなと。それを払拭したいし、「どういうライブをやったら、みんなに新しい楽しみ方や感動を与えられるんだろう?」という。ライブは自分たちの強みの一つだし、Kroiのライブでしか味わえないものを届けたいので。

――なるほど。

関:新しい環境に順応することに時間を取られすぎないように、順応しつつ進化するというプロセスをしっかり踏んでいく。そういうスキルが今後マストで必要になってくると思っています。来年、再来年とさらに追われる年になるだろうし、そのなかで「今、自分たちが何を表現するのが面白いのか」を余裕を持って考えられるようなマインドに持っていかないと。

益田:さっき千葉が言っていた「ゆっくり着実に積み重ねたほうが持続力につながる」という話も大事だと思っていて。切羽詰まって深刻に考えても、いいものは出てこない気がするんですよ。その状況も楽しめる空気感を持っていたいし、もともと「自分はどうしたらいいんだろう?」と内向的になりがちだからこそ、長い目で見ていろいろ面白いことを見つけられたらいいなと思っていますね。

――ずっとシリアスなままでいるKroiなんて、本末転倒ですからね。メンバーが自由に楽しんでいないと、リスナーも面白くないだろうし。

益田:そうっすね(笑)。おっしゃるとおりです。

#Kroi - Sesame [TVアニメ『ぶっちぎり⁈』オープニング・テーマ]

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