オンラインフェス『カクバリズムの家祭り』から考える、新たな音楽の届け方

『カクバリズムの家祭り』で感じた新たな音楽の届け方

 イベントの後半はアナログシンセと打ち込みトラック、ノスタルジックな映像を融合させた新曲を初披露したVIDEOTAPEMUSICからスタート。新バンド・yamamoは、ZOOMとNETDUETTO(ネット上でリアルタイムのセッションができるアプリ)を使ってオリジナル曲とカーラ・ブレイの「Lawns」のカバーを演奏。思い出野郎Aチームは代表曲「ダンスに間に合う」(〈今夜ダンスには間に合う/分かり合えなくても 離れ離れでも〉という歌詞、コロナ禍の状況で聴くとさらに沁みました)で画面の向こうのオーディエンスを盛り上げた。最後に登場した二階堂和美は地元の広島から「お元気ですか、お久しぶりです。あれからどうしていましたか」と語り掛け、情緒たっぷりのラブソング「萌芽恋唄」をギターで弾き語り(まるで中国の古典楽器・二胡のように響くフェイクも感動的)。自分で「アンコールやります!」と「夏のお嬢さん」(榊原郁恵)を朗らかに歌い上げ、イベントはエンディングを迎えた。

 終了したときは23時を過ぎていたが、まったく飽きることなく、心地よく濃密な音楽の時間を過ごすことができた。そして、このオンラインイベントから感じられたのは、カクバリズムというレーベルの独自性、そして、音楽的な豊かさだった。

 そもそもはYOUR SONG IS GOODの7インチシングル(2003年「BIG STOMACH, BIG MOUTH」)をリリースするところから始まったカクバリズム。2002年の設立から現在に至るまで、圧倒的な個性と高い音楽性を共存させたアーティストを次々と輩出してきた。以前、カクバリズム代表の角張渉氏にインタビューした際、彼は「風通しの良いレーベル、マネージメントを維持しながら、自分たちが興奮できるような音源をリリースして、メジャーに負けないような販売、宣伝をするのが理想」と語っていたが、その理想を貫いてきた結果の一つが、今回の『カクバリズムの家祭り』だったのだと思う。

 UVERworldからKan Sano、大西順子まで、幅広いジャンルのアーティストが有料オンラインライブを行い、音楽レーベル<LD&K Records>がライブ配信サブスクリプションサービス「サブスクLIVE」を7月に立ち上げるなど、コロナ以降を見据えたライブビジネスの模索が続いている。この未曽有の状況を踏まえた新たなスタイルが生まれるのは必然だが、その中心にあるのは、やはり音楽自体のクオリティ。まずは良い音源を作り、それをどう伝えるか(売っていくか)という順序は、今後も変わらないし、変わるべきではないと強く思う。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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