Shohei Takagi Parallela Botanica『Triptych』レビュー:cero 髙城晶平が照らす、此処にいながらも此処にいない音楽の可能性

cero髙城ソロプロジェクト『Triptych』評

 ceroの髙城晶平がソロアルバムを制作中であり、それにはプロデューサー/ビートメイカーでシンガーでもあるSauce81が共同プロデュースで関わっているという話を聞いたのは、いつのことだったろう。もう記憶が定かではないのだが、ただその組合せにとても心が躍ったことだけははっきりと覚えている。

 ceroは『Obscure Ride』(2015年)でネオソウルやヒップホップの黒いグルーヴを自然かつ洒脱に採り入れてみせたが、それはアメリカで暮らした経験を持ち、ゴスペルミュージックにもビートミュージックにも取り組んできたSauce81が模索して作り上げたサウンドとも近しいものだった。だから、『Obscure Ride』の翌年にリリースされたシングル曲「街の報せ」の制作にSauce81が参加していたのも、必然的な流れだったのかもしれない。僕はSauce81の活動を以前から知り、その音源をリリースしたこともあるという、客観的な評価を下すにはバイアスの掛かった立場にあることをまず明かしておかないといけないだろう。だが、そうした立場を離れてみても、繋がるべき人達が自ずと繋がって何かが生まれていくのは、音楽が時折見せてくれる最良の出来事なのだと改めて思ったのだ。

 『街の報せ』において、髙城の作曲でSauce81がビートを組み立てた「ロープウェー」は、双方の持つ音楽性が絶妙なバランスでアウトプットされた楽曲に感じられた。深みのあるくぐもった音像と対比的に表層を漂うようなビートが心地良いレイヤーを作り出していく。それらは歌やメロディと同等か、時にはそれ以上に重要な要素として楽曲を形成していた。そして、シングルのジャケット写真のように、何処かで発見されたレトロでオブスキュアなサウンドにも響いた。これは、ceroにとっても、Sauce81にとっても新たなアプローチだったのではないだろうか。

 そして、ceroのアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』(2018年)に先行してシングルとしてリリースされた12インチ『Waters』にも、何の前触れもなくSauce81のリミックスが収められていた。バンドとしてポリリズムとアンサンブルへの新たなアプローチに舵を切ったアルバムを補完するように、このリミックスはceroの音楽がダンスミュージックとも接続可能であることを証明してみせた。

 そんな経緯を経て、髙城晶平のソロプロジェクトであるShohei Takagi Parallela Botanicaのアルバム『Triptych』が届けられた。まずは一切情報をチェックせずに音に向き合った。1曲目の冒頭を聴いただけで、「ロープウェー」のあの音像が甦ってきた。ギターと歌、コーラスが向こう側から響いて来て、生で叩かれたドラムなのかプログラミングされたのか区別の付かないビートに、やがていくつかの楽器がまとわり付くように演奏を繰り広げていく。空気感やノイズを残した録音やオーガニックでアナログな響きが大切にされている一方で、茫漠とした音響に埋もれることのないアレンジメントが施されてもいる。

Shohei Takagi Parallela Botanica 1st Album "Triptych" 【Official Trailer #1】

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