星野源「うちで踊ろう」はなぜ一大ムーブメントとなったのか? 3つのポイントから考察
(3)星野源の持つ力
こう言ってしまうと元も子もないが、星野源本人のタレントパワーの強さもある程度このムーブメントの一助になっただろう。しかし、では、他の著名な音楽家が同じことをやっても同様の現象が起きたかと言われれば、決してそうではないはず。彼の醸し出す親しみやすいアーティスト像や押し付けがましくないイメージ、そして一種の庶民的な感覚が人びとを引き寄せたのだと思う。
豪華な機材によるハイクオリティの演奏ではなく、自宅でiPhoneで撮ったという今回の動画は、かえって人びとの協力したいというモチベーションを駆り立てている。さらに歌や楽器の演奏ができなくとも、それぞれが好きなスキルを持ち寄ればよい。
また、今回の盛り上がりに一役買った渡辺直美や高畑充希、三浦大知や宮野真守といった人気番組『おげんさん』のファミリーたち、そして大泉洋やバナナマンといった音楽業界だけにとどまらない繋がりがムーブメントの火を加速させたのは言うまでもない。音楽活動だけでなく、俳優業などもこなす彼だからこその結果とも言えるだろう。
【マモからの動画とコメント】
雅マモルは、星野源さんが大好きです!(マモ)#うちで踊ろう #宮野真守 #雅マモル #うちでホップステップジャンプ pic.twitter.com/5ijpu6eOoY
— 宮野真守公式 (@miyanomamoru_PR) April 10, 2020
星野源と言えば「恋ダンス」のブームが記憶に新しい。多くの日本人にとって、彼を見て一番に思い出すのが「恋」だろう。思えばあの曲も人と人の交わり、あるいは”距離”の歌だった。
「うちで踊ろう」に参加している人の中には〈一人を超えてゆけ〉と歌い踊った、数年前の記憶を重ね合わせている者もいるかもしれない。それを考えれば、今回の「うちで踊ろう」のブームは「恋」の頃から一貫していた彼の姿勢が生んだ成果とも言えよう。
2020年に訪れた世界的な危機。人類に襲いかかるウイルスの脅威は、人体のみならず、人との接し方にまで及んでいるように思う。こうした困難な状況を乗り越える”アイデア”こそ、いま私たちは求められているのだろう。
■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)