宮本浩次、ソロアルバム『宮本、独歩。』が絶好調 自由な音楽性に込められた驚きと感動の根元を紐解く
3月4日にリリースされた宮本浩次初のソロアルバム『宮本、独歩。』が好調だ。iTunes総合ランキングやBillboard Japanのダウンロード・チャートで初登場1位を獲得。アルバムから先行して公開された「ハレルヤ」のMVはYouTubeで100万回再生を超え、さらに伸び続けている。また、自身のInstagramのストーリーで3月3日から毎日配信している、アルバムから1曲をピックアップしたダイジェスト動画も好評で、アルバムの売上枚数自体もかなり快調な推移を見せているようだ。
雑誌やWebの音楽メディアに限らず、TVのワイドショーや情報番組でもピックアップされ、世間の注目度もきわめて高い――というこの状況に快哉を叫んでいるファンも多いはずだし、何より本人が手応えを感じているはずだ。エレファントカシマシとしてシーンに登場してから30年以上を経てのソロデビューは大きな驚きと感動をもって迎えられている。
では何が「驚き」で、我々は彼のソロプロジェクトのどこに「感動」しているのか。それを考えるために、まずはアルバムを紐解いてみよう。
全12曲からなる『宮本、独歩。』は、前述のリード曲「ハレルヤ」から始まる。かき鳴らされるエレキギターのコードに乗せて〈行こうぜ baby まだ間に合うさそんな hot place〉と歌い起こされるこの曲には、〈やっぱ目指すしかねぇな baby この先にある世界〉〈今だからこそ追いかけられる夢もあるのさ〉〈そんな俺にもう一丁祝福あれ ハレルヤ〉とエネルギッシュな肯定の言葉が書き連ねられている。華やかなホーンの音色に彩られたメロディも開放的で、まるでアルバムの幕開けを自ら祝福しているようだ。
この無条件の肯定性、メッセージ的にも音楽性の面でも、どこかタガが外れたような自由で縦横無尽な気分こそが、『宮本、独歩。』の真髄であると強く思う。それを証明するように、続いて2曲目に登場するのが、他アーティストとのコラボレーションを除く「初のソロ曲」として2019年2月に配信リリースされた「冬の花」だ。小林武史のプロデュースのもと作られたこの曲は、まさかの歌謡曲、というか世界観としてはほぼ演歌である。初めてこの楽曲に触れた時は心底驚いたものだが、このアルバムの「驚き」はそれだけではない。ディスコテイストの「きみに会いたい -Dance with you-」やハードロックなイントロから痛快なファンクへと展開する「Fight! Fight! Fight!」。単発でシングル(配信)リリースされている時点からそうだったが、「えっ、それもやるの?」という瞬間の連続なのだ。だから、このアルバムを聴いているとリスナーは「見たことのない宮本浩次」に次から次へと出会うという体験をし、驚き続けることになる。