パスピエは常に刺激的な進化を続ける 10周年記念公演『EYE』特別編成ライブに感じたバンドの未来

パスピエは常に刺激的な進化を続ける 10周年記念公演『EYE』特別編成ライブに感じたバンドの未来

 パスピエが2020年2月16日、東京・昭和女子大学人見記念講堂で結成10周年記念公演『十周年特別記念公演 “EYE”(読み:いわい)』を行った。

パスピエ

 2009年に成田ハネダ(Key)を中心に結成されたパスピエ。東京藝術大学でクラシックを学んでいた成田が、ロックフェスを観に行った際にバンドの魅力に気づき、“自身のルーツである印象派の音楽(ドビュッシー、ラヴェルなど)とポップミュージックを融合させる”というコンセプトを立て、メンバーを集め始めたのが、このバンドの成り立ち……というエピソードは筆者も何度も書いてきたが、この10年の間にパスピエは、音楽性と活動スタイルの両面で大きく変化し、いまもなお新鮮で刺激的な進化を続けている。“十周年特別記念公演”と銘打ったこの日のライブでも4人は、キャリアを振り返るのではなく、現在進行型のパスピエサウンドを奔放に表現してみせた。

大胡田なつき

 この日のライブは メンバー4人(成田、大胡田なつき/Vo、三澤勝洸/Gt、露崎義邦/Ba)に加え、サポートドラマーの佐藤謙介、さらにバイオリニストの室屋光一郎を中心とするストリングスカルテット、打楽器奏者の斎藤祥子による特別編成。成田の生ピアノから始まる「あかつき」(現在の4人体制となって最初の配信シングル)、変拍子/ポリリズムを取り入れた「ハレとケ」など、冒頭からバンド、ストリングス、パーカッションを融合させた演奏が続く。弦のアレンジは成田が担当。原曲にストリングスを重ねただけではなく、リズム、メロディ、ハーモニーと有機的に絡み合うアレンジは見事としか言いようがない。高度な音楽理論を備えている彼にとっては当たり前の仕事なのかもしれないが、これほど質の高いストリングスアレンジができるバンドマンは、本当に稀だ(ほかにいま思い出せるのは、King Gnuの常田大希だけです)。

 この後も、パスピエが持つ幅広い音楽性、そして、メンバー個々の高いプレイヤビリティを体感できる楽曲が続いた。

 このバンドのベーシックなスタイル(の一つ)である80’sニューウェイブを経由した「ネオンと虎」、三澤の美しいライトハンド奏法によるメロディを中心に構成された「DISTANCE」、憂いを帯びたボーカルとクラシカルな弦の響きが呼応し合う「瞑想」。音楽性の高さとは何か? という基準は人によって違うかもしれないが、理論に裏打ちされたアレンジ、メンバーの演奏能力を含め、パスピエの音楽の質の高さは疑いようがないと改めて感じた。

 「チャイナタウン」も印象に残った。2011年の1stアルバム『わたし開花したわ』に収録された「チャイナタウン」は、初期の代表曲でありライブアンセムでもあるのだが、この日は大胆なリアレンジが施されていたのだ。ややテンポを落とし、ドラム、ベース、鍵盤が鋭利なフレーズをぶつけ合うようなアンサンブルは、現行のオルタナR&Bのテイストを感じせる先鋭的なものだった。ファンがもっとも聴きたいであろう楽曲にアレンジを加える姿勢もまた、現状維持を良しとせず、常に斬新なチャレンジを続けているパスピエの魅力だ。

 さらに「つくり囃子」ではブレイクビーツユニット・HIFANAが登場。サンプラー、CDJスクラッチなどで即興的に繰り出されるビートとバンドサウンドが一つになり、超レアなセッションにつながる。露崎のファンクネス強めのベースとHIFANAの生々しいビートが絡み合うシーンは秀逸だった。HIFANAをゲストに招いたのは、以前から彼らの音楽をリスペクトしていたという大胡田のアイデア。この自由度の高さもパスピエらしい。

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