パスピエ 成田ハネダ×tofubeats特別対談 サウンドメイクにおける“音楽的ユーモア”の重要性

パスピエ成田×tofubeats対談

 結成10周年を迎えたパスピエから、ニューアルバム『more humor』が届けられた。前作『&DNA』(2017年1月)以降(ドラマー・やおたくやの脱退に伴い)、大胡田なつき(Vo)、成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(Gt)、露崎義邦(Ba)の4人編成となったパスピエ。ミニアルバム『OTONARIさん』『ネオンと虎』を経て生み出された本作は、『more humor』という題名が示す通り、刺激的なポップネスに溢れた“音楽的ユーモア”に貫かれた作品となった。

 バンドの新機軸と呼ぶべき本作のリリースに際し、パスピエの成田ハネダ(Key)と新曲「Keep on Lovin' You」をリリースするtofubeatsの対談を企画。サウンドメイク、リスナーとの距離の取り方、活動における変化などについて聞いた。(森朋之)

「バンドの人は普通、こんなことやらない」(tofubeats)

成田ハネダ×tofubeats

ーー成田さんとtofubeatsさんは、ふだんはどんな交流があるんですか?

成田ハネダ(以下、成田):同じレコード会社なので、会えば挨拶するくらいですね(笑)。

tofubeats:ワーナーミュージックのなかでもお話しする機会が多い方とそうでない方がいるんですが、パスピエのみなさんは喋られる方々なので。あとはパスピエの企画(『印象D』/2015年)に呼んでもらったり、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のバックヤードで一緒にごはんを食べてもらったり。僕はフェスでも一人なので、けっこう孤独なんですよ。そのときに助けてくれるのがパスピエのみなさんっていう。

成田:いやいや(笑)。tofuくんのことはもちろん以前から知っていて、“カルチャーを踏襲している音楽”という印象があったんですよね。80年代の音楽、ニューウェイブも通ってるだろうし、そういう時代感をブラッシュアップして提示しているというか。あと、いろんな音楽を網羅してるだろうし。

tofubeats :いえ、ヘビィメタルとかは聴いてないんで。

成田:そうか(笑)。

tofubeats じつはニューウェイブもぜんぜん詳しくないんですよ。聴けばカッコいいなと思うんですけどね。成ハネさんとの共通点で言えば、シンセサイザーかなと思っていて。8ビートのシンプルなロックバンドはあまり聴けないんですけど、パスピエはリズムもおもしろいし、シンセも印象的なので。

ーー成田さんがシンセをフィーチャーした音楽に興味を持ったきっかけは、やはり80’sの音楽なんですか?

成田:そうですね。YMOもそうだし、そこから日本のニューウェイブも聴くようになって。

tofubeats:僕もYMOは好きです、人並みに。<Salsoul Records>とか<Motown>よりも、80年代以降のディスコやダンスミュージックはずっと聴いてましたね。打ち込みが入ってきて、編集されるようになってからの音楽というのかな。だからシンセも好きなんだと思います。

ーーなるほど。パスピエのニューアルバム『more humor』は、トラックメイク的な手法も取り入れられていて……。

tofubeats:そうですよね。僕も聴かせていただきましたけど、何曲かビックリした曲があったんですよ。ローファイなイントロから始まって、すぐにバンドの音になるように編集されていたり、「バンドの人は普通、こんなことやらないよな」って。ライブで演奏することを考えないで制作する方向に舵を切ったのかなと。

成田:ライブ音源を差別化するという意識はありました。曲を作ってる段階では、バンドのこともあまり考えてなかったんですよ。いままでは「こういう感じのギターを入れてほしい」みたいな感じでギターのフレーズを入れたりしてたんですけど、今回はシンセ、ドラム、仮歌だけのトラックである程度完成させて、それをバンドでどうリアレンジするか? というやり方だったので。

ーーそういう方法を採用したのはどうしてなんですか?

成田:10周年のタイミングだったんですけど、何か他のことでトピックを作りたいと思ったんですよね。僕らができる表現はやはり音楽だし、「音楽のスタイルが変わった」ということを提示したいなと。

tofubeats:そうなんですね。

成田:tofuくんはソロですけど、フィーチャリングアーティストを呼ぶ時期もあったし、一人で作る時期もあるじゃないですか。曲を聴くとタームによって色が違うのがわかるというか。バンドの場合は、「自分たちだけでどれだけ変化できるか?」ということですよね。よっぽど振り切った感じにしないと、変わったことが伝わらないような気もするし。

tofubeats:僕はわりと気楽ですね、そこは。「今日は弾き語りをやります」と言っても大丈夫だと思うんで(笑)。

ーー昨年リリースのアルバム『RUN』は基本的にゲストを呼ばず、tofuさん一人で制作されました。

tofubeats:今のモードがそうなんですよね。僕の場合は逆に「ギターを入れたい」というときに困るんですよ。自分の実力に縛られるというか。やれることが増えれば、それだけ音楽の幅も広がるんですけどね。バンドの場合は「メンバーの力をどう扱うか?」という感じなんですか?

成田:そうですね。今回の制作のときは、だいぶ悩んでたみたいですけど。けっこう時間がかかった曲もありますね。

tofubeats:メンバー全員で集まってアレンジするんですか? それとも音源を持ち帰ったり……。

成田:どっちもありますけど、ドラムが抜けてからは(楽曲制作の際に)メンバー同士でやりとりすることが多くなりましたね。実際に集まることも前体制の時より増えて。(メンバーの脱退を受けて)補わなくちゃいけないっていうのもあるだろうし。

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