パスピエ、新旧楽曲で表現した9年間の軌跡と新たな始まり 初の日比谷野外音楽堂ワンマン公演

パスピエ、初の日比谷野音公演レポ

 パスピエが10月6日、東京・日比谷野外音楽堂で初の野外ワンマンライブ『パスピエ 野音ワンマンライブ “印象H”』を開催した。2017年5月にドラマーのやおたくやが脱退。サポートドラマーを迎えてライブを行い、『OTONARIさん』(2017年10月)、『ネオンと虎』(2018年4月)という2枚のミニアルバムを発表するなど、活動を継続してきた。そして、この日のライブで成田ハネダ(Key)、大胡田なつき(Vo)、三澤勝洸(Gt)、露崎義邦(Ba)は、これまでの9年間の軌跡を総括しつつ、“4人体制のパスピエ”の明確なビジョンを見せてくれた。

大胡田なつき

 ライブは3rdフルアルバム『娑婆ラバ』(2015年9月)の収録曲「素顔」からスタート。さらに「ヨアケマエ」(6thシングル/2016年4月)、「贅沢ないいわけ」(アルバム『娑婆ラバ』収録)、「永すぎた春」(7thシングル/2016年7月)とメジャーデビュー以降の代表曲を続けた後、「チャイナタウン」を披露。初の全国流通盤『わたし開花したわ』(2011年11月)に収録されている「チャイナタウン」は、初期のパスピエを象徴する楽曲。ライブのハイライトを演出することが多かったこの曲をセットリストの前半に置けること自体が、現在のパスピエの充実ぶりを示していると言えるだろう。

露崎義邦

 ライブ前半、もっとも印象に残ったのは最新作『ネオンと虎』のタイトルトラック「ネオンと虎」だった。この曲の背景にあるのは、1980年代の音楽だ。ニューウェイブ、シンセポップ、テクノなどのエッセンスを取り入れ、現代的なポップチューンへと昇華した楽曲を、優れた演奏技術によって肉体的に表現する。人工的なデジタル感としなやかで生々しいバンドサウンドを共存させた「ネオンと虎」は、パスピエのベーシックなスタイルにつながっていると言っていい。楽曲の雰囲気を増幅させる、赤と青のコントラストを活かしたLEDライトの照明演出も秀逸だった。

三澤勝洸

 メンバー4人の個性を活かしたステージングも、この日のライブの大きなポイントだった。ドラマティックな成田のピアノから始まった「花」では、エモーショナルなバンドサウンドとともに大胡田が感情豊かなボーカルを響かせる。過ぎ行く季節のなかで、散りゆく定めを受け入れながら、それでも美しい色を咲かせようとする花をモチーフにしたこの曲からは、シンガーとしての彼女の成長ぶりがはっきりと伝わってきた。ライブ全編を通し、バンドを引っ張っていく存在感の強さも印象的だった。

 またインディーズ時代の代表曲のひとつ「脳内戦争」では成田がショルダーキーボードを持ち、ステージ中央で派手なソロを披露(この演出は2015年の日本武道館公演以来だった)。「フィーバー」「マッカメッカ」といったアッパーチューンでは、ギタリストの三澤、ベーシストの露崎が華のあるステージングで観客を沸かせる。それぞれの見せ場は確実に増えているし、バンド全体のパフォーマンスも明らかに向上している。4人体制に移行し、メンバーそれぞれが自らの役割に自覚的になったことが、ライブそのものの進化につながっているのだろう。『ネオンと虎』ツアーの全公演にも参加したサポートドラマー・佐藤謙介が現在のパスピエに欠かせない存在であることも記しておきたい。

成田ハネダ

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