Base Ball Bear、最新作『C3』で提示するバンドの特別さ/異端さ 『C』シリーズを振り返りながら分析
『C2』ツアー直前に湯浅が突然の脱退。その後は鍵盤やホーンの導入、サポートギタリストの登用など活動形態を模索する第2章が訪れる。しかし2018年からは純粋な3ピースバンドとしての演奏を追求し始める。2019年に自主レーベル<DGP RECORDS>を設立し、スタッフ含めて新体制で完成させたのが最新作『C3』だ。
新たな活動初期とも呼べる現在の局面において、Base Ball Bearは『C』以前にも似たバンド活動への初期衝動を抱えているのだろう。そんな“音を鳴らす楽しさ”を結成から18年間で培った骨太なサウンドで具現化することで、フレッシュさと円熟味を兼ね備えた本作に結実させている。『C2』でのリズム重視の楽曲制作は、本作ではベースとドラムのフレーズからメロディを作り出すスタイルへと発展した。これが第3章を迎えた新たなBase Bear Bearの音だ。
『C2』での批評的な視点は「試される」や「PARK」で健在だが、本作で歌詞表現はさらに進化する。「EIGHT BEAT詩」は〈スーパーカー〉や〈changes〉など、Base Bear Bearを語る上で欠かせない固有名詞や楽曲名がラップに織り込まれたヒストリーソングであり、タフな精神が息づく異質なリリックに仕上がっている。「いまは僕の目を見て」「Cross Words」といった清らかな歌が光る楽曲では、青春的な場面を切り取ったり感情を俯瞰で捉えたりはせず、対象を想う心をそのまま投影したかのような言葉を綴ることに成功した。
終曲「風来」ではツアーと制作の日々で芽生えた旅情と生きる実感を高らかに歌う。「EIGHT BEAT詩」はもちろん、ライブ観を綴った「L.I.L」からも伝わる通り、今のBase Bear Bearにとってその歩みやスタンスを楽曲に刻むことは自然なことだ。『C3』において小出はBase Bear Bearそのものを“語るべき存在”と認識し、バンドの特別さ/異端さをシーンへと改めて提案してみせた。しかし、これは旅の通過点。獲得と変化を繰り返し、Base Bear Bearはこれからもその成果を届け続けてくれるはずだ。
■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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