ORANGE RANGE「Enjoy!」はバンドの歴史が詰まった一曲 変わらぬ活動へのスピリット

ORANGE RANGE「Enjoy!」評

 11月20日、ORANGE RANGEの配信シングル『Enjoy!』がリリースされた。表題曲「Enjoy!」は、今年夏に行なわれたコンセプトツアー『RWD←SCREAM019』のアンコールで披露された(参考)。新曲だったが、キャッチーでノリのいいサウンドとすぐにでも一緒に歌えるフレンドリーな大合唱パートもあって、ライブで大きく盛り上がった1曲だ。曲中のひときわ大きなシンガロングパートは、このツアーで観客とともに収録されたもの。その高揚感も曲を明るくしている。

 「Enjoy!」は彼らの地元、沖縄県内で放送中のオリオン初のチューハイ「WATTA」のCMソングとして書き下ろされ、〈お疲れ様です! クタクタだけど頑張ったね〉と、仕事終わりや日常をみんなでねぎらい、ともに盃を交わし楽しむような曲になっている。同時に“Enjoy”や“楽しむ”といったエモーションは、ORANGE RANGEが奏でる音楽の大事な要素であるのは間違いない。このORANGE RANGEの哲学を「Enjoy!」ではシンプルなロックチューンで、またキャッチーだが奥深い解釈ができるような歌詞で綴っている。

 ポイントになるのは、〈決戦はエビデー 自分のペースでさぁ行こう〉や〈なんくる ケ・セラ・セラ〉といったフレーズだろうか。裏打ちのビートやギターリフにのせてリズミカルに歌われる、いかにもORANGE RANGEらしいユーモラスな言い回しではあるけれど、これらフレーズを端的に言い換えるなら、自分次第で日々はいかようにもなる、自分次第で未来は変えられるということになる。沖縄の方言の中でもとりわけキャッチーな“なんくるないさ”は、柔らかな発語感からのんびりとした楽観的な印象がある言葉だが、本来は努力や正直な積み重ねがあるからこそなるようになるんだという、前向きさを裏打ちする実直な行動が含まれた言葉である。なるようになるという意味合いの“ケ・セラ・セラ”もまた然り。〈Let’s Enjoy!〉と陽気に呼びかける曲だが、そこには、何をどうEnjoyするかという問いかけも含まれているのだろう。〈夢の中に飛び込め〉〈行動が何より大事〉というアクションを呼びかける、能動的な1曲だ。

 「Enjoy!」が『RWD←SCREAM019』のツアーでいち早く披露されたことも意義深い。この「RWD←SCREAM」は過去を振り返ることで現在の立ち位置を再確認し、自分の未来につなげようというメッセージを込めたコンセプトツアーで、この夏の開催で5回目を迎えた。今回は2008年リリースの5thアルバム『PANIC FANCY』に焦点を当てたツアーだったが、このライブのMCでは「過去の作品が軸のツアーではあるけれど、後ろ向きでなく、人生を振り返ってみて自分がその当時と変化したこと、進化したことを見つけて、明日のヒントにしてほしい」ということが何度も語られた。また過去作品を改めて披露するツアーができるのは、自分たちが長くバンドを続けてきた証でもあり、曲を受け取ってこうしてライブに来てくれる人がいるからだという言葉もあった。積み重ねてきたひと続きの人生について思いを馳せながら、視線は未来へと向けたこのツアーで新曲「Enjoy!」を演奏することは大事なポイントでもあったと思うし、会場で聴いた観客もORANGE RANGEの姿勢を強く示す1曲として受け取ったはずだ。

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