Perfumeの登場、BABYMETAL世界的なヒット……「楽曲派」アイドル誕生から現在に至るまで

7.細分化されていくジャンル~フォーマット化していくアイドル

 「コアな音楽でも何でもあり」になった状況下で現在も進行形で進んでいるのが音楽ジャンルのさらなる細分化の動き。

 「テクノ」「ロック」だけでは最早ざっくりとしすぎていて他のグループとの音楽的な差別化が困難になり、そしてコアな音楽性でもハマれば受けるということが証明されたなか、さらに細かい音楽ジャンルによってグループの特徴付けを行うようになっていきます。

 サクライケンタによるポストロック的かつ現代音楽にも通じる独特の音像を持つMaison book girl、ポストロックバンド・ハイスイノナサの照井順政をサウンドプロデューサーに迎え、マスロック的な変拍子も特徴のsora tob sakana、日本有数の現役プログレッシブロックバンド金属恵比須と対バンを行い、フランスのMagmaの楽曲を公認でカバーするxoxo(Kiss&Hug) EXTREME、エレクトロニックハードコア的なサウンドとオートチューンを使ったボーカルが特徴的なPassCode、オルタナティブやシューゲイザー等のノイジーなギターバンド的な音を志向するヤなことそっとミュート、ロカビリーヤサイコビリー的な音を中心に展開するめろん畑 a go goなど、「ロック」を細分化する動きは数多く挙げることができます。

 ダンス系では所謂「テクノポップ」ではない、現代ダンスミュージックのサイケデリックトランス寄りのトラックで歌うMIGMA SHELTER、また、ソウル/ファンク系をベースにした本格的な楽曲で活動しているフィロソフィーのダンス等、これまでアイドルがあまり踏み込んでこなかったジャンルにも新たなアイドルが生まれてきています。

 これらの動きは、それだけ細かいジャンルであってもある程度以上の支持が集められると運営が判断した結果でもあり、それだけアイドル楽曲が純粋に「音楽」として聴かれることができるということでもあります。そして一部のアイドルでは「アイドルにどんなジャンルを歌わせるか」と言うより「ある音楽ジャンルを表現するためにアイドルという形式を用いる」という方向性での活動も見られるようになっています。

 「楽曲派」の拡大によって「アイドル」という言葉はポップミュージックをその外面で種類分けするための言葉ではなく、「その音楽をどう表現するか」のためのスタイルのひとつになった、ということなのかもしれません。

 「楽曲派」が拡大し細分化したその先にあったのは、あらゆる種類の音楽がアイドルとシームレスに繋がる世界でした。知っているはずの音楽ジャンルも、「アイドル」というフィルターを通ることで今まで聴いたことのない音になるのかもしれません。この先もまた新しい音楽が「アイドル」として流れ出すことを、楽しみにしたいと思います。

■O.D.A.
「WASTE OF POPS 80s-90s」「CDレコード販売・レンタル店 開店閉店メモ」運営。
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