姫乃たまが大木亜希子に聞く、アイドルの“セカンドキャリア”の築き方「いくつになっても再生可能」

姫乃たまが大木亜希子に聞く、アイドルの“セカンドキャリア”の築き方「いくつになっても再生可能」

 卒業したら「消えた」と言われるアイドルたち。しかし彼女たちは生きています。芸能界に残った人も、ほかの道を選んだ人も、その人だけの今日を生きているのです。

 アイドル戦国時代も懐かしい日々になったいま、世の中には過去最大人数の“元アイドル”たちが生活しています。『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)を出版した大木亜希子さんも、かつてSDN48のメンバーとして活動したひとり。アイドルを辞めても続いていく人生について聞くべく、10年間の地下アイドル生活に幕を下ろしたばかりの姫乃たまが対談してきました。(姫乃たま)

“アラサー”で社会に放り出された元アイドル

姫乃たま(以下、姫乃):先日はすみません。お忙しいのにリスケさせてしまって。ライターとしてセカンドキャリアを歩んでいる元アイドルの方ってなかなか会う機会がないので、いろいろ相談したいと思っていたのですが、取材日の直前にばったり倒れてしまいました……。

大木亜希子(以下、大木):大丈夫、そういう時期もあります! 今日は対談なのでいろいろお話しできたら。

姫乃:ありがとうございます。地下アイドルを始めた10代の頃と違って、20代後半になると心身共に勢いだけでは乗り切れなくなりますね……。

大木:この本で取材した佐藤すみれさんは、23歳で小休止しているんです。10代の頃からハロプロ(ハロー!プロジェクト)を目指していて、モーニング娘。の最終オーディションに残ったけど残念ながら落選してしまい、AKB48に入ってSKE48に移動して……って激動の人生を歩んできたので。周囲からは「23歳なのに休んで平気?!」とよく言われたけど、そこで休んだから自分の好きな仕事を見つけられたって取材でおっしゃっていて。だから姫乃さんも少し休んで次の道を見つけてもいいのかなと思います。

姫乃:休みってものすごく重要ですよね。そ、し、て、うまく休めないんですよ!

大木:そう、休むってほんとに難しい! 私ももう一昨年になりますけど、会社員時代に無理して歩けなくなったことがあって。それでバランスを取れるようになっただけで、人っていつ壊れるかわからないなって思います。

姫乃:アイドル生活で珍しい体験をたくさんしても、卒業したら今度は社会に根ざさないといけないとか思ったりして、なんかもう大変ですよね。

大木:私はアイドルを卒業したのが25歳で、それから会社員になって、安定した給料が手に入るから次は素敵な男性と出会って結婚するってどんどん自分に課していって。次々と男性とご飯に行って、自分なりに必死に婚活してたんですけど、全然“自分”を生きられないんですよ。会話してても楽しくない。ってことは多分相手も楽しくなくて……。会社員時代の三年間は仕事の成績はそこそこよかったんですけど、もっと結果を出さなきゃって焦りと、周囲からこう思われてるんじゃないかって勝手に邪推して焦る気持ちと、婚活と、でアイドルを卒業したのに今度は日常の強迫観念にとらわれてしまって、いつも生き急いでたなって思います。

大木亜希子

姫乃:私も自覚はなかったのですが、地下アイドル時代はどうして生き急いでいるのか聞かれることが多かったです。実際に何度か病気で倒れてしまったり。同じように生き急いでいる人がアイドル業界には多い気がします。なんか人生が早いんですよね。

アイドルの“敵”は誰か

姫乃:大木さんはもともと芸能界に興味があったんですか?

大木:15歳の時に父親が亡くなって、高校に入るタイミングで自分も家計を助けたいと思って事務所に入ったのが最初のきっかけです。もちろんミーハー心もありました。

姫乃:いまはすごく落ち着いた雰囲気ですが、本の序章に自分のほうが可愛いと思っているメンバーに追い越されたというような記述があって、大木さんにもそんな時期もあったんだなあって微笑ましくなりました。

大木:SDNの選抜発表ってテレビクルーが必ず入っていて、みんながざっくばらんに座ってる中で劇場支配人が選抜メンバーを発表するんですよ。

姫乃:うおお、映像で見たことあるやつだ。

大木:支配人が「芹那」「野呂佳代」「大堀恵」って、呼ばれたらパッと立つみたいな。そこまでは私にとって一期上の先輩の方々ですし、培ってきた年数も実力も人気も、圧倒的に違います。でも2期で入ってきたいつも仲良いメンバーが名前を呼ばれてパッと立つんですよ。「おめでとうー!」って言うんですけど、あれ? って。「この気持ちは何だろう(「春に」)」by谷川俊太郎みたいな。

ふたり:この気持ちは何だろう〜♩

姫乃:辛すぎて歌ってしまった……。

大木:それが絶対に忘れられない記憶としてあるので、本に残さなきゃと思って、序章に包み隠さず書きました。自分を高いところに置いていたら、8人の女性の本音も書けないと思ったので。

姫乃:過去の大木さんも含めて、8人ともすごく応援したくなるし、応援されている気持ちになりました。最初は頑張れーって思いながら読んでるんですけど、いやいや私が頑張れよ! って。

大木:そう思ってもらえるのが一番嬉しいです! この子は私自身だって思ってもらえるのが。特に誰にグッときましたか? 人によって違うんですよ。

姫乃:圧倒的に小栗絵里加さんですね! 心身共にうまく休めなくて身動き取れなくなってしまったエピソードに共感しました。まさにいまの私……。あと彼女だけ元AKBカフェっ娘で、48グループには入ってないじゃないですか。そこに大きな差があると思って。グループの中でメンバー同士ライバル心を燃やすのって、本当に病んでしまうケースも多いと思うんですけど、切磋琢磨する機会にもできるじゃないですか。でも1人で“アイドル界”っていう漠然とした枠の中で戦っていると、いつの間にか誰と、何と戦ってるのかわからなくなっちゃうことってあるんですよね。

大木:事務所に入っててもセルフプロデュースはマネージャーに頼らず自分自身でも考えなければなりませんし、こればっかりは芸能界の特殊なところですよね。私もSNSに投稿しながら、誰が見てるんだろうって思ってたことがあります。

姫乃:応援してる人も頑張ってるアイドルには水を差せないから、いくらでも無理できちゃうんですよね。とは言え48グループは人数が多いので、事務所に所属していてもスタッフさんから手をかけてもらえない状況ってきっとありますよね。

大木:そうかもしれませんね。常にスタッフさんの目に自分が入ってるかなって思うんです。目に入れてもらうために積極的に声をかけたり。会話のフックのためにこのスタッフさんはこれを聞いたら喜びそうだとか、人を観察する目がすごく身についちゃって、そういう意味でもライターの土壌ができていった気がしますね。媚び売るっていうのともまた違うんですけど。

ふたり:うーーーん(なぜか同時に唸る)。

姫乃:そう、違いますよね。そもそも媚びてるなって思われた時点でダメですもんね。

大木:そう、お世辞が通用しないんですよね。メンバーも褒められ慣れてるから、上っ面の言葉じゃ絶対ダメ。本音でいかに女性を喜ばせられるか。そのために真実の言葉を探すのが、いま考えるとライターの糧になっていたかもしれません。

姫乃:学校みたいに「大木さん可愛いよー!」「そんなことないよ、たまちゃんの方が〜」みたいなやりとりしてる時間ないですもんね。

大木:仲は良いんだけど、生半可な言葉じゃ通じないんですよね。いまは姫乃さんと本音で話せていると思うんですけど。

姫乃:ウーーッ! すいません、なんか体がねじれちゃいました。

大木:どう思いますか、同性同士が本音を話す難しさって。

姫乃:体がねじれるくらいには難しいですね。いまは本音で話している自覚があります。うーん、私はフリーランスでソロの地下アイドルをやっていたので、周囲もソロで活動している女の子が多いんですけど、みんなとも本音で話していると思います。ただ、馴れ合ったら終わりというか。彼女達を信頼しているし、困った時も相談するんですけど、最終的に1人で戦える状態に全員がしておかないと、誰かが弱った時に守りに出られないので。

大木:侍みたいなスタンスですね。私たちずっと人と競争して生きてきたじゃないですか。そういう意味においてはエリートでもあるわけで、我々は振り切ろうと思えばどこにでも行けると思うんです。

姫乃:どこにでも行けるように、いま自分がどこで誰と戦っているのか客観視しておくのが大事ですよね。

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