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乃木坂46 高山一実、作家としての武器は“意地悪な視点”と“笑い”にあり 長編小説『トラペジウム』評

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 乃木坂46の読書好きメンバーたちのなかで高山は、乃木坂活字部部長の役割である。彼女は好きな小説家として湊かなえをあげている。『告白』、『少女』、『白ゆき姫殺人事件』などで知られる湊は、人の醜い部分を描いて嫌な気分にさせるミステリー、通称「イヤミス」の女王といわれた。「イヤミス」には嫌な気分だけでなく、隠されていた部分が暴露される痛快さもあり、その種のテイストが『トラペジウム』にも感じられる。

 しかし、「イヤミス」についてよくいわれる後味の悪さは、『トラペジウム』にはない。人が殺されるミステリーではなく、少女の成長を語る青春小説だからではあるだろう。計算高い主人公が小賢しく可愛げがないようでいて、あまりにも一つの目標に一所懸命で、純粋で憎めないということもある。加えて、高山特有のユーモラスなノリがある。

 グループに加える少女をスカウトしようと他校へ行く。そこで出くわした小柄な生徒をみて「顔面が昔の榊原郁恵にそっくりだ」と思う。縦巻ロールヘアに大きなリボンのテニス部員美少女を見て「……お蝶夫人?」と昭和のマンガのキャラクター名をつぶやく。で、冴えない男子には「漂う童貞感」というワードが浮かぶわけだ。

 高山は活字部部長ではあるが、おとなしい文学少女という風に落ち着いているわけではいない。乃木坂ではバラエティ担当的なメンバーの1人であり、グループの冠番組『乃木坂工事中』などでは、むしろバタバタした印象のリアクションで笑いをとっている。その種の反射神経が、小説の文章にもかいまみられる。ちょっと意地悪な人間観察をする文学少女的な目線と、人や出来事に感じるままリアクションするバラエティ的なノリが重なって、彼女の文体は作られているのだ。この意地悪な視点と笑いの両面性は、これから文章を書き続けるうえで有効な武器になると思う。

 二作目を楽しみにしているし、『トラペジウム』がいずれ文庫化される際には、単行本で語られなかったエピソードなどスピンオフ短編の執筆も期待したい。

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。

      

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