『宝塚歌劇』楽曲の魅力を語ってみる “芝居”と“ショー”それぞれの演目が生み出す音楽体験
決して難しい教条主義的な存在ではない『宝塚歌劇』
2018年時点で、104年もの歴史をもつ『宝塚歌劇』は「お芝居」「ショー」含め、オリジナル楽曲だけでも膨大に擁していて、その歴史はあまりにも厚い。ある一つの公演を取っても、その演目の歴史をふまえているかいないかで、楽しみ方が変わってしまう側面があることは否定できない。長い期間ファンであることが己の喜びを涵養する。それは『宝塚歌劇』ファンに年配者が多い理由の一つだろう。ただし小・中学生の時点でこの世界観にどっぷりはまりこむ子どもも多数派ではないが年々一定数発生している。『宝塚歌劇』が決して難しい教条主義的な存在ではない、良質なエンターテインメントであることの証左である。
もう一点。「宝塚大劇場」と「東京宝塚劇場」での演目は、「オケピ(オーケストラピット)」内で演奏される生オケに合わせて「お芝居」も「ショー」も進行する。
指揮者がいて、本当にその場で演奏しているので、もともとの音楽好きならばその点だけでも驚き、あまりのタイミングの正確さにも驚嘆させられるだろう。その他にも、個別の演目の楽曲の魅力についても語りたいのはやまやまなのだが、紙幅も尽きたのでそこはまた別の機会に。
<脚注>
※1)贔屓
オタク用語でいうところの「推し」のこと。宝塚ファンが特定のタカラジェンヌのことを指してそう呼ぶ。
※2)生徒
宝塚歌劇団で団員は女優という呼び方はされず、退団するまで「生徒」と呼ばれる。宝塚歌劇団の一員となるために必ず卒業しなければいけない「宝塚音楽学校」に入学したばかりの生徒は「予科」生、2年目の生徒は「本科」生と呼ばれ、そのへんまでは部外者にもわかるのだが、晴れて入団した1年目の生徒から「研究科1年(研1)」〜以降在団年数の分だけ数字が増えていくという風にキャリアを数えられるということはあまり知られていない。また、入団年度が同じ生徒同士は「同期」と呼ばれ、例えば2018年入団の生徒は104期生であるというように、年度と期の数字はつねにイコールで結ばれている。
※3)55分間
「宝塚歌劇」の本公演は、基本的に「90分のお芝居、30分の休憩、60分のショー」で成り立っており、1回劇場に入ると最低3時間はそこで過ごすことになる。これは芝居やミュージカルに慣れた身にも若干長く感じられるボリュームなのだが、すぐれたショーほど60分間(構成上は55分)を体感5分程度しかなく感じられるものであるため、狐につままれたよう。
■秋鹿ひろ海(あいか・ひろみ)
ライター研20(弱)但しエンタメ分野は予科。かつ宝塚ファン研2の超下級生。