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『宝塚歌劇』楽曲の魅力を語ってみる “芝居”と“ショー”それぞれの演目が生み出す音楽体験

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星組宝塚大劇場公演 タカラヅカ・ワンダーステージ『Killer Rouge』

 『宝塚歌劇』の音楽をなにか知っているだろうか。

 おそらく『宝塚歌劇』というものに対しもともと興味がないか、「どうやらそういうものがあるらしい」くらいの知見である多くの人にとって、それは少し、古めかしさや、仰々しさや、「男役」なるものに対する不自然さといったイメージの額縁の向こうにある世界なのではないかと推察する。

 そんな額縁のなかの音についてのみ取り出して語るのはとても難しく、ある意味ナンセンスなことのようにも思えるが、その魅力について語ってみるという蛮行を試みてみたい。というのも、『宝塚歌劇』における楽曲とは「お芝居」の演目のそれと、「ショー」の演目のそれとで、だいぶ性格が異なるものの、人の心の琴線を震わせてやまない魅力に満ちているからだ。

記憶が公演や場面に紐付く音楽体験

 「お芝居」の楽曲の多くは、(海外ミュージカルの潤色作品などではない限り)座付き作曲家によるオリジナルであり、新作演目であれば当然「誰も聴いたことがない」ところから出発する。しかしその耳慣れなかった曲が、兵庫県宝塚市にある「宝塚大劇場」と日比谷の「東京宝塚劇場」で行われる本公演、その約3カ月の間にファンに浸透し、その音源を買い求めたい気持ちにさせる。

 一概には言えないかもしれないが、多くの一般的な楽曲は個人的な感情や記憶を惹起するところ、『宝塚歌劇』の「お芝居」ものの場合、そういった記憶の紐付けは「あの公演の、あの場面(シーン)」とのみ強固になされる。iPhoneのiTunesアプリで、通勤電車内で聴いていたとすれば、脳内で再現された舞台の、「オペラグラス越しに見たあの日の贔屓(※1)のあの表情」が蘇るしくみだ。よって個人的体験なり記憶なりはどこかへ行ってしまう。

雪組公演『ファントム』初日舞台映像(ロング)

脳内で処理しきれないほどの情報が繰り出される「ショー」

 一方、「ショー」の楽曲はもっと自由だ。メインテーマこそオリジナルであることが多いものの、ショーの演出家によって演目ごとにだいぶ性格が異なる。一筋縄ではない。

 シーンによって、それこそジャニーズの曲やら童謡やらNHK「みんなのうた」の曲やらアニソンやら懐メロやら西城秀樹やらK-POPやら過去の宝塚演目の名曲やらシャンソンやらが入り混じっているのだが、そこに歌う生徒(※2)の個性、衣装、化粧、かつらとその装飾、ダンス、舞台機構、時に寸劇、演出その他といった『宝塚歌劇』的な要素がかけあわされ、独特な音空間が創り出されていく。

 55分間(※3)の「ショー」を指してよく「体感5分」と言わしめるジャーゴン(専門用語)が宝塚ファンの間ではまかり通っているものだが、めくるめくスピードで繰り出される舞台上の要素を脳内で情報を処理しきれないのがその理由だろう。客席に座ってただ観ているだけなのに強烈に疲れるのだが、それはある種サウナに似て、観劇後の人体の精神の血行を活性化させる。

星組公演『ANOTHER WORLD』『Killer Rouge(キラー ルージュ)』初日舞台映像(ロング)

      

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