ジョナス・ブルー「Rise」はなぜ日本でヒット? その背景を考察してみた

J・ブルー「Rise」はなぜ日本でヒット?

 そうした要素に加えて、彼が近年来日公演を積極的に行ない、クラブの現場でも人気を広げていったことも大きいだろう。2017年にはシングル「Mama"(featuring William Singe)」をヒットさせると、2017年10月には初来日して渋谷のCLUB CAMELOTでパフォーマンス。彼の登場前からジョナスがプレイするフロアを含む3フロアがすべてが満員状態になる盛況となった。その後はサブリナ・カーペンターとのコラボ曲「Alien」などをヒットさせ、2018年4月には、新木場のagehaで早くも2度目の来日公演を敢行。ここでもフロアが満員となり、各シングル曲のプレイ時には観客から大合唱が生まれるなど、日本での楽曲レベルでの認知も印象付けた。そうした来日公演を経て、いよいよ夏を目前に控える5月にリリースされたのが、この「Rise ft. Jack & Jack」だ。

 楽曲を聴いて感じるのは、今回の「Rise」が過去の楽曲以上に、ユースカルチャーならではの奔放なエネルギーをいっぱいに詰め込んだ眩い「サマー・アンセム」になっていること。海やビーチを思わせる清涼感たっぷりのピアノに加えて、ここではイントロから心奪われるフルートなども取り入れられ、彼の代名詞である夏っぽさが倍増している。ユニゾンやコーラスなどを駆使して楽曲を彩るJack & Jackのボーカルとジョナス・ブルーらしいトラックとが絶妙に絡み合う、キャリア屈指のキャッチーな楽曲だ。

 そして何より特筆すべきは、同曲のアコースティックVer.「Rise(Acoustic)」にも顕著だった、クラブ・シーンのプロダクションを取り去っても歌モノとしての高い魅力が感じられるソングライティング。これまでの彼の魅力をさらにアップデートした、会心の1曲に仕上がっている。それが自分のテイストを可視化して、最適解を教えてくれるストリーミングサービスを通して多くの人々に広がったことと、2017年のSpotify Japanで再生数年間2位を記録した ZEDD「STAY feat. Alessia Cara」のように「Rise」の哀愁を感じさせるメロディーラインがダンスミュージックの垣根を超えて、日本人に受け入れられやすいメロディーだったということもヒットの大きな要因ではあったのではないだろか。

 2018年に入っても、ドレイクの「One Dance」などから広がったダンスホールの再評価などを通して、夏っぽさを感じさせる音は引き続き世界の音楽シーンを席巻している。直近ではジャスティン・ティンバーレイクがサプライズリリースした新曲「SoulMate」も、「Summer starts now」というセリフを経てトロピカルハウスやダンスホールの影響をうっすらと感じさせる楽曲に仕上がっていたのも記憶に新しい。そうした意味でも「Rise ft. Jack & Jack」は、これからの季節、ますます注目を集めるかもしれない。本格的な夏が到来することに加えて、9月には「Ultara Japan」で今年2度目の来日公演も決定。彼の快進撃はまだまだ続きそうだ。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

■発売情報&関連リンク
ジョナス・ブルー新曲「ライズ feat. ジャック & ジャック」発売中

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