米津玄師、MWAM、SWAY、delofamilia、チャランポ……洋楽シーンともリンクした新作

 “内向き”“ガラパゴス”と評されることも多い日本の音楽シーンだが、その中には海外のポップマーケットとナチュラルに同期している作品も少しずつ増えている。そこで今回は、国内のリスナーに強く訴求しつつ、同時代の洋楽ともリンクした新作を紹介したいと思う。

米津玄師『BOOTLEG』

 「orion」(TVアニメ『3月のライオン』(NHK総合)第2クールエンディングテーマ)、「ピースサイン」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』(日本テレビ系)オープニングテーマ)、DAOKOとのコラボ曲「打上花火」(映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』主題歌)……前作『Bremen』(2015年10月)以降、映像作品のタイアップ楽曲やコラボレーションに取り組んできた米津玄師。その結果、彼の音楽は外部に向けて大きく解放されることになった。そのことを端的に示しているのが今作『BOOTLEG』の「灰色と青(+菅田将輝)」。フォーク、ギターロック、エレクトロニカが共存するトラックのなかで<どれだけ背丈が変わろうとも/変わらない何かがありますように>というラインを提示するこの曲からは、音楽の力でジャンル、時代、年齢を超えようとしている米津の姿勢が伝わってくる。海外のヒップホップ、EDM、ネオソウルを取り込みながら、J-POPを次のフェーズに押し上げるようなサウンドメイクも印象的。本作は2017年の日本のシーンを象徴する1枚であると同時に、世界のポップマーケットで十分に戦えるクオリティを備えていると断言したい。

米津玄師 MV「 灰色と青( +菅田将暉 )」
MAN WITH A MISSION『My Hero/Find You』(通常盤)

 2017年9月から10月にかけて北米ツアーを行い、現在はさいたまスーパーアリーナ公演を含む国内ツアーを開催中。海外と日本の区別なく、当たり前のように世界中でツアーを続けているMAN WITH A MISSION(以下:マンウィズ)のニューシングル『My Hero/Find You』は初の両A面。「My Hero」のスタートは勇壮なオーケストラサウンド。直後にアグレッシブ&ラウドなサウンドが鳴り響き、クラシックとヘビィロックが刺激的に絡み合う。ワールドワイドな活動を続けるマンウィズの音楽がさらにスケールアップしていることを告げる楽曲と言えるだろう。一方の「Find You」は骨太のバンドグルーヴを軸にしたミディアムチューン。歌詞はすべて日本で、特に<世界が消えても/また見つけに行くから>というフレーズには強く心を揺さぶられる。シンプルで率直な言葉に普遍性を持たせることができるのも、現在のマンウィズの凄さだと思う。

MAN WITH A MISSION「My Hero」 TVアニメ「いぬやしき」スペシャルコラボPV
SWAY『MANZANA』(通常盤)

 DOBERMAN INFINITYのMCとして存在感を示してきたSWAYがヒップホップ・アーティストとしてメジャーデビュー。名門レーベル<Def Jam Recordings>からのリリースとなる『MANZANA』表題曲は、トラップとEDMを融合させたトラック、ラテンフレーバーを感じさせるフロウ、<未来に手を伸ばそうよ><甘い夢をもう一口かじってみようよ>という快楽と背徳が混ざり合うリリックがひとつになったハイブリッドなヒップホップナンバーに仕上がっている。収録曲は全4曲。制作はDarren "Baby Dee Beats" Smith、SUNNY BOY、SALU、SHOKICHIなどが手かげ、SWAYは「Acting Myself」のリリックに参加。セルフプロデュースにこだわることなく、身近な仲間にプロダクションを任せることで、自分自身のポテンシャルを引き上げようとする戦略も興味深い。

SWAY - MANZANA

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