コーネリアス、ニューアルバム制作も佳境? 小山田圭吾が明かす、USツアーの手応えと今後の動き
去る8月、コーネリアスがアメリカ・ツアー『CORNELIUS PERFORMS FANTASMA』を行った。サード・アルバム『FANTASMA』(1997年)のリマスター・バージョンがアメリカでヴァイナル盤で再発されるのに伴い、アメリカ側からのオファーで実現したものだ。北米6カ所6公演と小規模なツアーだった。
Aug 04 Fox Theater Oakland, CA
Aug 06 Orpheum Theater Los Angeles, CA
Aug 08 Rialto Theater Tucson, AZ
Aug 10 Gothic Theater Englewood, CO
Aug 12 Eaux Claires Festival (August 12-13) Eau Claire, WI
Aug 13 Park West Chicago, IL
コーネリアスとしてのライブは、日本/海外を問わず8年ぶりだった。
このツアーのゲネプロの模様は本サイトでリポートした。(参考:新生コーネリアスの公開ゲネプロを見たーー大野由美子の加入でパフォーマンスはどう変化?)。今回はツアーを終え、現在コーネリアスの新作の制作に入っている小山田圭吾にツアーの感想と総括、そして新作の制作状況について訊いた。(小野島大)
「なんとなくゆるく自分を追い込んでいこうかなと」
ーー今回のツアーはどんな経緯で実現したんでしょうか。
小山田:『ファンタズマ』のCDは当時(1997年)アメリカでも出てたんだけど、今度アナログで再発することになって、ツアーやんないの、みたいな話がむこうのブッキング・エージェントに来てたのね。むこうのマネージメントからも、やってって言われて。ずいぶん長いこと(アメリカに)行ってないし、ちょうど僕もそろそろコーネリアスをやりたいなと思ってたタイミングだったのね。
ーーあ、なるほど。
小山田:ただライブはずいぶん長いことやってなかったし、メンバーがちょっと変わったりしたので(清水ひろたか→大野由美子に交代)、またいちから練習するの大変だな、とか(笑)。まあいろいろそういうのもありつつ。それでボン・イヴェールが地元でフェスをやっていて(ウィスコンシンで開催されるEaux Claires Festival)、そこからも『ファンタズマ』のショーをやってくれって話が来たの。とりあえずスケジュールを見たら、その時期は空いてて。METAFIVEのサマソニは前から決まってたので東海岸までは行けないけど、8月の前半は空いてたから、西部から中部ぐらいまで行こうってことになって。
ーーボン・イヴェールのフェスの公式サイトに「CORNELIUS PERFORMING “FANTASMA”」という情報が出たのが今年の2月ぐらいで。その時は他に何も情報がなくていきなり出たから、一部のファンの間で騒然となりました。
小山田:(笑)。フェスに出るのはわりと前から決まってたからね。でもツアーの情報を発表したのはもう少し後だったから。みんなびっくりしただろうね(笑)。
ーーではむこうからのオファーとはいえ、タイミングとしてはちょうど良かったということですね、活動再開のきっかけとして。
小山田:うん、まあね。今思えば。あははは! そろそろやりたいなって希望はあったけど、作品出してからかなと思ってたから。やり出すと結構長くなるし、準備も必要だから、ゆっくりスタートしたいなと思ってて。それがそのタイミングでいろいろ偶然が重なって、やってみようかなと。
ーーオファーがあったのはいつ頃なんですか。
小山田:今年の頭ぐらい。METAFIVEのライブをやってるぐらいのタイミングかな(2016年1月)。どうしようかとちょっと悩んだけど、でもそんなこと言ってるといつまでもやんないからさ(笑)。
ーー〆切りを設定されないとやらない性格。
小山田:そうそうそうそう。なんとなくゆるく自分を追い込んでいこうかなと思って。
ーーで、やることが決まって。先ほども話に出ましたが、今回メンバー(ベース)がバッファロー・ドーターの大野由美子さんに代わっています。
小山田:これはね、まあいろいろあって(笑)。最近は大野さんといろんなところで一緒にやることが多くて。昔からよく知ってるし、ものすごくいいなあと思ってて。声をかけてみたんです。
ーー最近でいうとYOKO ONO PLASTIC ONO BANDとか、salyu x salyuとか。
小山田:アート・リンゼイでも一緒にやったしね。それこそ『ファンタズマ』の頃から近いところにいたし、海外でも一緒にやったことあるし。子供も同じ歳でね(笑)。すごく付き合い古いし、深いんですよ。なのでそろそろ由美子さんに登場してもらいたいと思って。今回がちょうどいいタイミングかなと。
ーー大野さんは一緒に演奏するプレイヤーとしてはどんな感じなんですか。
小山田:いやあ…凄いよね。高性能。なんでもできる。
ーーご本人と接してるとぽわんとした感じで、スペックの高い切れ者ってイメージはあまりないですけど。
小山田:ああ、キャラクターはね(笑)。でもピシッとしてる時は姐さん感バリバリ出してるよ。
ーーへえ。
小山田:ふふふ(笑)。たぶんムーグ(正式名称はモーグ)のプレイヤーってことだと世界一だと思うんだよね、あの人。あんなに使いこなしてる人見たことないもん。
ーーリハーサルはけっこう長期間に及んだらしいですね。
小山田:うん、曲多かったし、全部大野さん初めてだったし、8年ぶりだったし、難しい曲多いし…とはいえ10日やったぐらいかな。昔は1カ月ぐらい練習してたから。『SENSUOUS』の時とかね。全然覚えられなくて。でも大野さんは10日間で全部覚えるんだよね。しかもこっちの要求も多いわけよ。ムーグだけじゃなくベースもたくさんあるし、コーラスもかなりいろんなパートがあるし、それを同時に全部やれって、普通に考えたらムチャブリだと思うんだけど(笑)。
ーー前任の清水さんが抜けた穴を埋めるだけじゃなくプラスアルファを期待した。
小山田:そう。安定感とかね。
ーーゲネプロを見た限りでは、アレンジも大きく変わっているわけではないし、新曲もまだない。8年前のライブの再現、というニュアンスが強い気がしましたが、やっている側としては何か新しい試みは?
小山田:いやいや、全然。それはないかな。まだ一発目だし、全部アレンジ変えてっていうよりも、一回前のアレンジで大野さんに参加してもらったって感じだから。だから大きく変えてってことはない。ただ大野さんが入ったことで変わったところはある。コーラスもそうだし、ベース、ムーグもね。
ーー前よりもバンド感が増したという印象もありましたけど。
小山田:うーん、でも…あそこ(ゲネプロの会場になった横浜のライヴハウス)、会場がめちゃくちゃ狭かったじゃない? だから映像とかあまり見えなかったし、密度が高かったからそう見えたところもあったと思う。大きいところで見ると、また違った見え方するんじゃないかな。
ーーリハの時に大野さんは何か言ってました?
小山田:難しい難しいって(笑)。
ーーあれだけたくさん練習したのに、ライブ6回じゃもったないって言ってました。
小山田:うんうん。ツアーやってて最後の方はちょっと寂しくなった。もうちょっとやりたかったなと。
ーーちょうど馴染んだころに終わった感じ。
小山田:そんな感じだね。もうちょっとやったら、もっとどんどんできるし。ただまあこれで終わりっていうよりも、次のツアーを踏まえてってことだから。