コーネリアス、ニューアルバム制作も佳境? 小山田圭吾が明かす、USツアーの手応えと今後の動き
「うっかりしてるとほんと、8年とかすぐたっちゃうから(笑)」
ーーつまり次のニュー・アルバムを引っさげてのツアーの前哨戦という意味もあったと。その話はあとでお聞きするとして、今回のアメリカ・ツアーはいかがでした?
小山田:すごい楽しかった!お客さんも盛り上がってたよ。あまり(コーネリアスのことを)知らない人もいたけど、でもけっこう新しいファン、10代20代の子もいっぱい来てて、すごい年配のおじいちゃんもいて。めっちゃ幅広いんですよ。日本だとありえない。会場の雰囲気とか。
ーーじゃあ不在の間も着々とコーネリアスの名前が浸透して、ファンを増やしていた。
小山田:どうなんだろうね(笑)。
ーー会場はどれぐらいの大きさ?
小山田:けっこう大きかったよね。サンフランシスコが(キャパ)2800ぐらい。すごく古いシーティングのホール。1920年代ぐらいからやってるような。以前出たことのある人の名がずらっと書いてあってね。そこは以前(オノ)ヨーコさんで一回やったことがあるんだけど。だから日本のスタンディングのライブハウスとは全然違う感覚だよね。見やすいし、音響も悪くない。作りも雰囲気があるし。日本ではああいう歴史のある古いホールってありえないよね。日本って古いものを壊すじゃん。むこうはとっておくんだよね。
ーー日本は地震が多いし、基本的に木造家屋だから、建物は壊れるし燃えるもので、建て替えることに抵抗がないんじゃないですかね。
小山田:ああ、それは大きいかもね。
ーー8年ぶりにアメリカでやってみて、気づいたことは?
小山田:ずっと日本ばかりでやってたんで、忘れてましたね、向こうの感覚を。
ーー何が違うんですか。
小山田:なんだろうな…もっと自由だよね。
ーー何が自由?
小山田:…全体的にね(笑)。なんて言ったらいいんだろう…全部違いますよね。お客さんも幅広いし、反応も画一的じゃないし、みんな好き勝手やってるし。
ーー日本だとこう、すごく真剣に、集中して見てて…。
小山田:うんうん。世の中の雰囲気もそんな感じというか。日本でずっとやってるとこれが普通だと思っちゃうけど、向こうでやると、こういう世界もあるんだなって実感するよね。
ーーどっちがやってて楽しいんですか。
小山田:日本でだけやるよりは、いろんなところでやれた方が楽しいよね。
ーーLA公演ではベックも飛び入り参加してテルミンを演奏したようですね。
小山田:そうそう。別にオファーもしてなくて。直前になって来るっていうんで、テルミンやるって訊いたらやるっていうから。
ーー親しい間柄なんですか。
小山田:なんだかんだ結構長いよね。今年彼がフジロックで来た時、僕は行けなかったんだけど、終わったあと一緒にご飯食べたのね。来月アメリカに行くって言ったら、じゃあみんなで見に行くからって。そうしたら彼のバンドのジェイソン・フォークナーと一緒に来てくれた。
ーーベックはテルミン終わったあともステージ残ってフラダンスしてましたね。
小山田:そうそう(笑)。
ーーインスタグラムに記念写真をアップしてたし。ベックはコーネリアスのことが大好きなんですね。
小山田:うーん、なんか何回も見に来てくれてるね。最初の『ファンタズマ』のツアーでアメリカ行った時に見に来てくれたんだよね。リミックスもやったし。
ーー今回のライブを見て何か言ってました?
小山田:「超久しぶりに見たけど、『ファンタズマ』の曲とか全然今でも新しい」って言ってくれた。歳近いんだよね。ベックは僕の一個下で。ジェイソンも古くからの友だちで、同世代で、けっこう見てきたものも近いんだよね。ジェイソンもオタクで、彼はLAなんだけどイギリスのニュー・ウェーブとか好きで、でも周りにそういうオタクがいないみたいで、僕はそういうの結構詳しいから(笑)。仲良くなって同世代話とかよくしてるの。
ーーベックもジェイソンも同世代で、海を越えてもそういう同世代感覚はある。
小山田:うん、あるね。そういうの。
ーー一方で全然年上の世代のジャクソン・ブラウンも来てたらしいですね。
小山田:来てたね!(笑)。大野さんの友だちなんだけど、コーネリアスのことめっちゃ褒めてくれた。グッズ全買いしてて(笑)。CDも全部買ってくれて。たぶんああいうの、あまり見たことないんじゃないかな。すごくびっくりしてた。「どうやってんの?」って。
ーーなるほど。ボン・イヴェールのフェスはどんな感じだったんですか。
小山田:山の中のフェスで、1万人〜2万人ぐらいいたのかな。たぶんお客さんは僕らのことほとんど知らなかったと思うけど、日本人とかほとんど見なかったし。でもいいフェスだったよ。
ーーほかに印象に残ったところは?
小山田:コロラドも良かった。チボ・マットの(本田)ゆかさんと、ヨーコさんの娘さんのキョーコさんが来てくれて。
ーーえ、「Don’t Worry Kyoko」(ヨーコ・オノ1971年の曲)のキョーコさん?
小山田:そうそう。ドントウォーリーキョーコが一家で来てくれて、すごく喜んでくれたので良かった。
ーーなるほど。久々に海外でツアーをやって、コーネリアスのバンドとしてのカンを取り戻したというのもあるだろうし…。
小山田:うんうん。
ーー来たるべき新作アルバムに向けての地ならしでもあったし、大野さんを新たに迎えての新生コーネリアスをうまく立ち上げることができた。いろんな意義があったと思います。
小山田:そうだね。うん。ちょいちょいやんないとなあ、と思った。うっかりしてるとほんと、8年とかすぐたっちゃうから(笑)。
ーーほんとに。
小山田:だからやれるうちにやっといた方がいいなと。うん。だからこのタイミングでライブができたのは良かったと思います。