柴 那典「フェス文化論」第8回(今年も自腹!)
RIJフェス、セカオワが大トリを務めた意味とは? カギは「世代交代」と「テーマパーク化」
国内最大級の夏フェス「ROCK IN JAPAN FES. 2014」(以下RIJ)が、8月2日~3日、9~10日の計4日間、茨城県ひたちなか市・国営ひたち海浜公園にて開催された。
15周年を迎え、初の4日間開催が実現した今年のRIJは、チケットも全日ソールドアウト。昨年の17万7000人を大きく上回る24万人の動員を記録した。昨年の「SUMMER SONIC 2013」が東京・大阪あわせて23万人、今年7月25日から27日にかけて行われた「FUJI ROCK FESTIVAL'14」が前夜祭を含めて10万人の動員数だったことを考えると、今年のRIJは名実ともに日本最大の野外フェスとして、さらなる巨大な成功をおさめた形だ。
4日間の大トリをつとめたのは、同フェスに3年ぶりの登場となったSEKAI NO OWARI。メジャーデビューから3年で大舞台に立った彼らは、レーザーなど様々な演出を駆使し、大きな飛躍を果たしたバンドの勢いを実感させるステージを見せてくれた。
ちなみに、今年ヘッドライナーをつとめた4組の中でも、過去にヘッドライナーの経験がなく、唯一の抜擢となったのがSEKAI NO OWARIである(11年ぶりの復活となったKICK THE CAN CREWは、過去にKREVAがソロでヘッドライナーを経験)。そのことは、二つの意味で今のRIJの傾向を象徴する大きな意味を持っていると言える。
一つは、フェスに世代交代の大きな波が訪れている、ということ。SEKAI NO OWARIのRIJ初出演は2010年。当時はまだ「世界の終わり」というアーティスト名表記で、主に新人バンドが出演するWING TENTの初日のトップバッターだった。翌年の2011年には2番目の大きさのステージであるLAKE STAGEのトリへとジャンプアップ。そこから3回目の出演で、一気にメインステージのトリを飾ったことになる。
RIJには出演者が「フェスの場で勝ち上がっていく」風景が可視化されるゲーミフィケーション的な構造があるということは、この連載の中でも繰り返し語ってきたことだ。その枠組みに当てはめて語るならば、彼らは2010年以降に初出演した中で、最速のスピードでフェスという場を駆け上がったバンドということになる。
そして、バンドシーンの新世代の波はさらに続いている。特に大きいのは、昨年から今年にかけてデビューしたロックバンド達の人気と勢いだ。筆頭格は、やはり去年のWING TENTからLAKE STAGEへと大きなジャンプアップを果たしたKANA-BOON。今年4月にメジャーデビューを果たしRIJ初登場となったゲスの極み乙女。も、数千人規模のフィールドを満員にする熱演を見せていた。おそらくこの二組は、バンドシーンだけでなくJ-POPのフィールドでも広く人気を獲得し、将来のヘッドライナー候補となっていくだろう。他にも、グッドモーニングアメリカ、キュウソネコカミなど、多数の新世代バンドが入場規制の盛り上がりを記録していた。
会場を訪れたお客さんの年齢層も、おそらく2010年代になってからこのフェスに初めて来たであろう10代から20代前半の若い層が中心。もちろんユニコーンやエレファントカシマシ、ソウル・フラワー・ユニオンやシアター・ブルックなどキャリアを重ねたベテラン勢もラインナップには多く登場していたが、会場の風景は、お客さんの世代交代とシーンの趨勢の変化を強く印象付けた。