go!go!vanillas、武道館のキャパを超えた求心力 “バニラズ8”でロックの快楽へと導いた最新アリーナツアー

go!go!vanillas ライブ写真(撮影=renzo)
(撮影=西槇太一)

 つべこべ言わずに最短距離でロックの快楽にダイブさせてやるーー強弁こそしないものの、この日のgo!go!vanillasの求心力は武道館のキャパシティを超えていた。確かに3度目となるこのステージにはコロナ禍で本来の50%のキャパで実施した1度目の『ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020』とも、フルハウスで実現した2度目の1DAY公演『My Favorite Things』とも違い、2DAYSを実現する歓喜に裏打ちされてはいるものの、バンドストーリーの曲折には触れず、ひたすら今現在に集中する2時間強のライブを形成していた。 

 3度目の武道館公演であると同時に今回はニューアルバム『Lab.』を軸にしたツアーである。ライブハウス、ホール、アリーナのバリエーションで構成された全16会場21公演という自身最大規模の全国ツアーだ。そのプロセスにある武道館で何を見せるか? のひとつが“バニラズ8”と称する、ニューアルバムをともに制作したサポートメンバーの参加によるアンサンブルの充実だろう。そのことでR&B寄りの楽曲もファストなナンバーもUKロック由来のR&Rも確実な底上げを見せていた。

 オープニングはステージセンターに設えられたミラーボールと左右のビジョンに映し出されたミラーボールのグラフィックがElectric Light Orchestraの「Last Train to London」に乗って光の粒を撒き散らす、往年のディスコ調。続いてアルバム通り『Lab.』のSEが流れ、やおらメンバー全員が悠々と登場すると得も言えぬ期待感が漂う。緊張よりも思わず口角が上がってしまう感じだ。さらにアルバム通り「HIBITANTAN」でスタートし、いきなり牧 達弥(Vo/Gt)は上手のスタンド近くまで歩きロックスター的な存在感を発散する。井上惇志(Key/from showmore)とTakumadrops(Key)のピアノリフが映えるライブアレンジが分離のいいライブPAで体の隅々まで行き渡る。続くホンキートンクなピアノの「青いの。」へのつなぎも抜群。長谷川プリティ敬祐(Ba)はユーティリティプレイヤーだと思うが、この曲でのランニングベースの安定感には改めて瞠目。「デッドマンズチェイス」ではボーカルを順番に回す賑やかさに加え、Takumadropsはステージ前に出るわ、井上はショルダーキーで暴れるわで、ステージ上の全員が主役の“バニラズ8”を体現。新旧のレパートリーの流れの良さは続く「Super Star Child」で明らかになった。加えて、ステージ上のメンバーを捉えるカメラワーク、今見たい場面のチョイスやざらついた画像が秀逸で、会場のどこにも感情のラグがない。牧と柳沢進太郎(Gt)が交互に歌う「LIFE IS BEAUTIFUL」、間奏での二人のギターソロの掛け合いが王道の見せ場を作る「クライベイビー」まで、気づけばずっと笑っていたんじゃないだろうか。

go!go!vanillas ライブ写真(撮影=renzo)
牧 達弥(撮影=西槇太一)
go!go!vanillas ライブ写真
柳沢進太郎(撮影=西槇太一)
go!go!vanillas ライブ写真(撮影=renzo)
長谷川プリティ敬祐(撮影=西槇太一)
go!go!vanillas ライブ写真(撮影=renzo)
ジェットセイヤ(撮影=西槇太一)

 牧が「俺のマブです」と、サポートメンバーを紹介すると全員短いソロ回しで音の自己紹介。そのファンクセッションから「クロスロオオオード」へ。山田丈造(Tp)、曽我部泰紀(Sax)2本のみだがホーンの威力は絶大で、土埃が舞いそうなアメリカンロック調のオリジナルにさらにファンキーな色を足していた。悪魔と魂をトレードしないバニラズ流現代の“クロスロード”から初期からの代表曲「マジック」につなぐアイデアにもグッときた。

go!go!vanillas ライブ写真(撮影=renzo)
(撮影=西槇太一)

 バンドの原点を今のアンサンブルで聴かせたあとは、グッとシックな「SHAKE」のピアノのイントロが。この曲を大阪で初披露した際にオーディエンスが灯したスマートフォンの光の海を「今日も見せてくれませんか?」と牧が呼びかけると、一斉に幻想的な空間が広がる。スタイリッシュなこの曲もツアーを経てコール&レスポンスが起きるレパートリーに変化したこともバンドにとっては大きな手応えだろう。そしてジョー・ダートばりの長谷川のベースプレイはさらに磨きがかかっていた。R&Bやジャズファンクの余韻を曽我部のサックスソロが引き継ぎ、Takumadropsとのコンビネーションで展開するセクションは本格的なもので、「SHAKE」のアウトロと「Persona」のイントロを兼ねる役割も。ステージ上の円環状のライトがテンポアップとともに回り、緊迫感を高める演出もハマる。そして柳沢作詞曲の「Penetration」では、牧がクリーントーンのオブリガートやソロでセンスを開陳。リードボーカリストとリードギタリストのスイッチが高いレベルで可能なことも、サラッと表現してくれた。マイナーキーの大人っぽいナンバーが続くセクションにジェットセイヤ(Dr)のポストパンクなドラムが響く「バイバイカラー」が新鮮なフックを作った。

go!go!vanillas ライブ写真(撮影=西槇太一)
(撮影=renzo)
go!go!vanillas ライブ写真(撮影=西槇太一)
(撮影=renzo)

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