RIJフェス、セカオワが大トリを務めた意味とは? カギは「世代交代」と「テーマパーク化」

 そしてもう一つ。SEKAI NO OWARIが大トリをつとめたことは、RIJがいわば“テーマパーク的な”フェスティバルとして成熟していった15年の歴史の歩みの象徴と見ることもできる。

 RIJの運営側がこれまで15年にわたって繰り返してきたのは、フェス空間の快適性を高めるための様々なチャレンジだった。会場に設置された大量の仮設トイレを筆頭に、混雑を軽減する入退場時や会場内の動線、バスや駐車場など交通機関の充実、暑さ対策のミストなど、様々なインフラが整備されてきた。そうやってホスピタリティを高めてきた成果が、リピーター客の多さに結実してきたわけである。

 そして15年の中では、出演陣の幅も広くなってきた。ロックバンドだけでなく、J-POPのメインストリームで活躍しテレビでもお馴染みの人気アーティストやシンガーが多数出演するようになった。昨年にはでんぱ組.incなど多くの女性アイドルグループの出演が話題を呼んだが、今年もDJ BOOTHからBUZZ STAGEに名を改めた屋内ステージに多数のグループが登場。また、メインステージにはゴールデンボンバーが初登場、3年連続の出演となるきゃりーぱみゅぱみゅはメインステージを沸かせ、ファンキー加藤、加藤ミリヤ、前田敦子、中川翔子などもオーディエンスを盛り上げた。

 「夏フェスが花火大会や海水浴に並ぶ夏のレジャーの定番になった」ということは、ここ数年よく言われることだが、その中でも、RIJが実現してきたのは、ディズニーランドのようにホスピタリティが充実し家族連れでも参加しやすい「テーマパーク型」レジャーとしてのフェスと言えるだろう。それは、自然の中で音楽を楽しむフジロックが「アウトドア型」のレジャー、東京と大阪で開催されるサマーソニックが「都市型」のレジャーであるのと対照的と言っていい。また、今年は運営側による「サイリウム・ペンライトなどの発光物使用、過度なパフォーマンスや応援行為は禁止いたします」という規制の掲示がネットやアイドルファンを中心に大きな波紋を巻き起こしたが、これも、「誰もが安心して快適に楽しめる」最大公約数的な場を目指した主催者の方針の一つだと捉えることができる。

 筆者も実際にチケットを購入し8月9日、10日と足を運んだのだが、最も印象的だったのは、父親や母親に抱きかかえられてSEKAI NO OWARIのステージを夢中になって眺めている小学生の男の子や女の子たちの姿だった。おそらく日本のロックフェスの中でも、最も沢山の子供たちがステージを楽しんでいた瞬間だっただろう(フジロックでも家族連れは沢山いるのだが、ステージに夢中になっているのはむしろ父親や母親のほうで、子供たちはキッズランドで遊んでいることが多い)。

 メジャーデビュー以降、ファンタジー路線に転じて中高生など若い層に大きく支持を広げてきたSEKAI NO OWARI。この日は「幻の命」など初期の楽曲も多く披露していたが、やはり大きな盛り上がりとなっていたのは「RPG」や「スノーマジックファンタジー」など最近の楽曲だった。総製作費5億円をかけ3日間で6万人を動員した野外ワンマン「炎と森のカーニバル」を成功させるなど“テーマパーク的なバンド”として大きくブレイクを果たしてきた彼らが日本最大のフェスとなったRIJでヘッドライナーをつとめたことは、実はかなり大きな意味を持つ出来事だったのではないだろうか。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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