『対岸の家事』“詩穂”多部未華子にとって“紫陽花”が持つ特別な意味 存在感を強める織田梨沙

思えば、登場人物の中で、珍しく自分一人で抱え込んでしまわずしなやかなのが詩穂だが、やはり彼女には母親亡き後、ヤングケアラーのように父親に意図せず人生を乗っ取られかけた経験があるからだろう。

しかし、それだけではなく、詩穂にも屋上の柵を超えかけた過去があったのだ。第1話でワーママの礼子(江口のりこ)が屋上に吸い寄せられるように向かった姿と、赤ん坊の娘を抱っこして屋上の柵から身を乗り出そうとするかつての詩穂の姿が重なる。
当時、そんな詩穂を思い止まらせ救ってくれたのが、坂上の家の前に咲いていた紫陽花だったのだ。そこに手を伸ばす詩穂を見かけた坂上が彼女に声を掛ける。
「日の当たらないところでじっと誰かのために家事をする。主婦は今も独りぼっちなのね」
「あなたが寂しかった日々が役に立つ日がくる」
坂上の全てを包み込んでくれるかのような声がけに、詩穂はすっかり安心しきったのか泣きじゃくっていた。思いっきり泣けていた。

確かに詩穂にとっての寂しかった日々が礼子の異変に気づかせ、“あと1滴”水滴が落ちたら溢れ出てしまっていたであろう心のコップからの洪水をせき止められていた。そして、今話坂上と詩穂の立場が逆転する瞬間までもたらした。

「もういなくなりたかった」とこぼす坂上に寄り添いながら、日陰の存在で独りぼっちでも、そんな存在同士が集まれば静かで綺麗な花を咲かせることができる。きっと詩穂は“あの日の私”のことも抱きしめながら改めて感謝したのだろう。あの日の坂上の言葉通り、詩穂は今「家族のために家事をしながら、家族を応援している」「私は幸せだ。私の家事で応援したい人がいる、その気持ちを受け取ってくれる人がいる」と心の底から言えている。

さて、しかしながら詩穂のお節介を悪意や脅威と捉えたのか、何やら怪しいシングルマザー(織田梨沙)が、引き続きポストに嫌がらせの封書を投稿し存在感を強めている。さらにはもっとも専業主婦とは縁遠かっただろう礼子が、夫の転勤に伴い引っ越しして専業主婦になるようだ。この選択に詩穂はどんなリアクションをするのだろうか。
朱野帰子による小説『対岸の家事』を原作としたヒューマンドラマ。専業主婦の主人公・詩穂が、生き方も考え方も正反対な「対岸にいる人たち」とぶつかり合いながら、自分の人生を見つめ直していく模様を描く。
■放送情報
火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ、一ノ瀬ワタル、島袋寛子、田辺桃子、松本怜生、川西賢志郎、永井花奈、寿昌磨、吉玉帆花、五十嵐美桜、中井友望、萩原護、西野凪沙
原作:朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)
脚本:青塚美穂、大塚祐希、開真理
プロデューサー:倉貫健二郎、阿部愛沙美
演出:竹村謙太郎、坂上卓哉、林雅貴
編成:吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
©朱野帰子/講談社
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