『ばけばけ』錦織をなぜ“ナレ死”に? 制作陣が明かす、吉沢亮の驚異的役作りと撮了の裏側

髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
第23週に入り、松江に帰ったヘブン(トミー・バストウ)が久しぶりに錦織(吉沢亮)と再会。その痩せこけた姿と弱々しい声に、視聴者にも衝撃が走った。

制作統括の橋爪國臣は「キャスティングの時から『錦織は最後にこのような形で亡くなります』と、吉沢さんにはお伝えしていて。『それまでのシーンとの間に、最低1カ月は撮影期間を空けてほしい』という条件をいただいていました」と、吉沢がクランクイン当初から最期に向けた役作りをしていたことを明かす。
実際、第19週から第23週の撮影までには約1カ月の期間が設けられ、「こちらが心配するくらいに痩せていましたね」と橋爪。「それまでにも病気が進行している設定なので、徐々に痩せてはいたんですが、その1ヶ月で13キロほど落としたと。もちろん、トレーナーもつけて安全の範囲内だとは思いますが、久々にお会いしたら『この人、本当に死ぬんじゃないか』と思えるくらいのいで立ちで。声もかすれているし、ご本人も『辛い』と言いながら撮影していました。それでも目の奥には輝きがあって、鬼気迫る撮影でしたね」と振り返る。
「本当に役に入り込む方だなと思いました。死にゆく人の気持ちが伝わってくるし、体は衰えてきているけれど、精神はより研ぎ澄まされていて。最後の執念というか、彼自身の“何か成し遂げたいこと”が目だけで語られているというんでしょうか。あれだけ体が弱っているのに、目だけは輝いていて、鋭い眼光がある。そこに彼の思いがすべて詰まっていて、さすがだなと思いました」

吉沢のクランクアップは、橋の上でのロケシーン。橋爪は「本当にいい芝居をしていました。気合いも入っていたし、みんなで見惚れていましたね。まあまあ長い芝居なので時間をかけて撮りましたが、すごくいいラストだったと思います。一番気持ちのいいシーンがラストというか。撮影が終わるとすぐに役が抜けるので、吉沢さんには体に優しいものを食べてほしいと、みんなで『雑炊だ、雑炊だ』と盛り上がっていました」と現場の様子を語る。
「僕からは『本当によかったです、ありがとうございました』と普通にお話をしました。普段からよく話していましたし、今さら感謝の気持ちを伝えるような気も起きなくて。吉沢さんは次にミュージカルを控えていたので、みんなで『今度は太らないといけないから大変だね』と筋肉量の話をしたりしていましたね。ご本人もサラッとした方なので、いつも通り『お疲れさまでしたー』って(笑)。みんなで明るく楽しく見送りました」
錦織の死は、彼がこの世を去ったことを蛇と蛙(阿佐ヶ谷姉妹)が伝える、いわゆる“ナレ死”という形で描かれた。ヘブンがそれをどう受け止めたのか、といった描写も一切なく、錦織の机に置かれた本のページが風にめくられ、ヘブンが彼に宛てた言葉だけが映し出された。

そんな最期について橋爪は、「もちろんヘブンも悲しんだでしょうが、別にお涙ちょうだいをしたいわけではなくて。悲しいのは当たり前ですけど、きっと2人に流れるものって、そういうことではないんですよね。ただただ仲がいい親友ではなく、もっと文学的につながった、親友を超えた何か別なもの。だからこそ、ああいう描き方なのだと思っています。“親友が死んで悲しい”というドラマではなく、彼自身が人生で成し遂げたかったものは何なのか、どういう生き方をしたかったのか、それを受け取った側はどうなのか、という心の真剣なやり取りを描きたかった」と説明した。
なお、錦織が最後に作家としてのヘブンを焚きつける展開は、完全ドラマオリジナル。橋爪は「史実でも、ハーンが松江を去る時に(錦織のモデルである)西田千太郎は見送りに行っていないんです。その後、千太郎は熊本にも行っていますが、そこでもなぜか2人は会っていない。たまたま時間が合わなかったのか、あえて避けたのかはわかりませんが、そんな史実からヒントを得て、『会わなかった理由にもしも裏があったら、こういうことなのかもしれない』という発想で描きました」と話した。
吉沢の役者魂をまじまじと見せつけられた第23週。その余韻とともに、物語はいよいよラストへと向かっていく。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















