吉沢亮が『ばけばけ』に残した最期の笑顔 2度目の“錦織の週”も朝ドラ史に残る熱演に

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第23週「ゴブサタ、ニシコオリサン。」は、第19週「ワカレル、シマス。」に続く、2度目の“錦織の週”。トキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)の間に勘太という新たな命が生まれゆく一方で、錦織(吉沢亮)は最期の時間を過ごしていくこととなる。
“錦織の週”であり、“吉沢亮の週”。第19週、吐血し余命わずかであることを悟った錦織の横顔を映した切なくも美しいラスト35秒には圧倒されたが、第23週もそれを凌駕するほどの熱演だった。視聴者を驚愕させた役作りのための13キロ減量。それは闘病生活を送る錦織の見た目はもちろん、演じる吉沢自身のメンタルもいい方向に追い込むことに成功していたのではないかと、松江大橋でヘブンと対峙するシーンを見て想像した。
『ばけばけ』錦織をなぜ“ナレ死”に? 制作陣が明かす、吉沢亮の驚異的役作りと撮了の裏側
朝ドラ『ばけばけ』第23週の制作秘話。吉沢亮演じる親友・錦織の最期に向けた13キロ減量の壮絶な役作りをプロデューサーが明かす。史…
錦織の不気味とも思える気迫。それはまるでヘブンが見ている幻想かのように――。美しい朝靄を見ても何も感じられなかったヘブンに、「作家としてのあなたは死んだのです」と核心を突く一言を投げかける。熊本での著作を読んでいた錦織はそのどれもが『日本滞在記』のような輝きを感じられなかった。フィリピン行きも断念し、このまま日本人になればヘブンは何も書けなくなる。無表情に、時に語気を強め迫る錦織に、ヘブンはうろたえながらも、やがて怒りをあらわにしながら、日本人として、雨清水八雲として必ず書いてみせると宣言する。

発破をかけるとも言うが、厳しい言葉は相手を奮起させることもある。松江から熊本に戻った後も一心不乱に書き続けたヘブンは、桜が舞い、ウグイスが鳴く春の日に新たな著書を書き上げた。錦織がヘブンに迫ったあの日、錦織はトキにだけは本心を明かしていた。「たきつけたんだ。リテラリーアシスタントとしての最後の仕事だ。あの人は……本当に世話が焼ける」とつぶやく、その声は松江大橋での時とは違ってか細い。ヘブンの教師としての初登校の日も、同じ花田旅館のふすま、“天岩戸”を開けた場所だった。そんなことを懐かしみながら、錦織のこけた頬が緩む。「シャラップ。静かにしないと怒られるぞ」と、あの頃のように無邪気にトキを注意して咳き込む錦織。その手のひらは、赤く染まっていた。

錦織の本心をヘブンは理解していた。ヘブンの新著『東の国へ』の扉には、英文で「出雲時代の懐かしい思い出に。錦織友一へ」と書かれている。それはヘブンからの感謝と信頼の証。ページをめくり「フフフ」と思わず笑みがこぼれる、それが錦織としての最期の姿となった。その後の、雪が降りしきる、窓の開け放たれた錦織の部屋からは、春から冬まで半年近くの余白に思いを馳せつつも、錦織がリテラリーアシスタントとして、そして一番の親友としてヘブンとの思い出とともに旅立っていったことを想像させる。

『ばけばけ』もいよいよ残り2週。3月13日の『あさイチ』「プレミアムトーク」には髙石あかりが登場した。放送の最後に、視聴者から送られたメッセージの中には「怪談の朗読の仕方」に関する質問。髙石は稽古での基礎もありつつ、一旦それを忘れて自分の感情を大事にしながら、「トキがどれだけ楽しいかっていうのを表現できればいいかなと思っていました」と答えていた。第24週「カイダン、カク、シマス。」は、舞台を東京・大久保へと移し、ついにヘブンの怪談執筆が始まる。第1話冒頭のシーンに帰着する、トキとして、髙石としての原点に立ち返る週だ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK























