吉沢亮、『国宝』受賞で再注目されるストイックな俳優像 『ばけばけ』錦織に宿った魂の芝居

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』に再登場した吉沢亮は、ヘブン(トミー・バストウ)の唯一無二の友人として生活の手助けをして、トキ(髙石あかり)とともにコミカルな会話を繰り広げた錦織の姿ではなかった。ふっくらとした顔つきも病に侵されて痩せこけており、観ているこちらも心配になってしまうほどだった。

役作りのために13キロの減量を行ったという吉沢のストイックな姿勢は一旦、脇に置いておく。本当に見るべきものは、錦織の生き様としてすべて映像に映し出されていたからだ。生気を失ったような乾いた表情も、陰る瞳に滲ませる一抹の寂しさも、吉沢がこれまで錦織という人物をチャーミングに演じてきたからこそ生まれる心苦しさだった。ひとつの場面に滲ませる感情表現と熱量を伴ったこの芝居が、吉沢の真骨頂といえるだろう。

第23週「ゴブサタ、ニシコオリサン。」の第115話は、ヘブンを思う錦織の気持ちが満ち満ちた回だった。「雨清水八雲」という日本名を授かったヘブンが、松江の橋から望める朝靄を前にしても感情が動かず、うろたえる姿を目の前にして、錦織は冷静に彼の作家としての状態を言い当てる。その言葉と眼差しは想像以上にひんやりと冷たかった。

しかし、ヘブンが薄々感じていた不安や、見て見ぬふりをしていた違和感をズバズバと指摘する錦織の言動には、徐々に彼を思うがゆえの愛が滲み出していく。実際、錦織の淡々とした言動はヘブンの執筆活動を焚きつけるためのものであり、リテラリーアシスタントとしての最後の役目でもあった。吉沢はこれまで演じてきた錦織という人物の人生を背負いながら、ヘブンに対する並々ならぬ感情をあの一幕に閉じ込めたのだ。最後にヘブンから送られた『東の国から』の献辞を愛おしそうに見つめる錦織を目の当たりにしたとき、最初にトキと出会ったときのおかしみのある会話や、授業中にヘブンから英語で愚痴を言われたときのなんとも言えない表情が脳裏に浮かんだ。まさに吉沢が誠意を持って向き合った錦織の最後の灯火が、儚くも美しく観ている人の心に刻まれた瞬間だった。





















