朝ドラになぜ“働かない父”が登場するのか 『ブギウギ』脚本・櫻井剛が描く心情の揺らぎ

朝ドラになぜ“働かない父”が登場するのか

 かつて、働かない父というキャラクターは、ヒロインが奮起し自立するための装置のようなところがあった。だが、彼らにも言い分を作り記号化を避けることで、物語に深みが出る。おりしも、震災以降、大きな喪失体験をもった日本人が増えていることも、要因かもしれない。あるいは、近年、ハラスメント行為には厳しい目が向けられているため、単なる横暴な人物を描くことに配慮が成されているということもあるだろう。時代の変化とともに人物描写にも変化があることは興味深い。とはいえ、気になるところもある。

 ただ、飲んだくれて、下宿の前でだらしなく寝ているとか、朝もなかなか起きないとかいう描写は、まだまだ記号的であり、ほかの表現の模索がないものかと感じる。これは断じて“飲んだくれ父ちゃん禁止”“ダメ父禁止”と、大日本国防婦人会や警察のように頭ごなしの否定ではない。お決まりのものではなく、さまざまな表現を期待するということである。

 楽団のやっていることを批判する多くの投書を前に、辛島(安井順平)は「音楽を楽しみたい人たちと、ただしたい人たちとの板挟みだよ。誰のために何をすればいいのかわからなくなる」という場面は印象的だった。「ただしたい」気持ちも受け止めたいけれど、それがほんとうに「ただしい」のかは誰も決めることはできない。だからこそ、ひとり、ひとり、自分の信じたものをやり続けるしかない。羽鳥(草彅剛)も、茨田りつ子(菊地凛子)も、たとえそしられようと、自分の信じる歌をやり続ける。派手な服装が「私の戦闘服」と言い切る茨田はカッコよかった。彼女のモデル・淡谷のり子が実際に言った言葉だそうで、まさに事実は小説より奇なり、である。

 落ち込んでいたスズ子も、茨田のように個人経営の、「福来スズ子とその楽団」を結成しようと立ち上がる。希望に満ちた週の終わりであったが、第10週の予告では、まだまだスズ子に試練が降りかかることを示唆している。三尺四方の囲い以上に、スズ子の身も心も縛るような出来事の数々。そこから脱却することが、スズ子のこれからに課せられているのだろう。すべてを縛るものから翔び立つとき、タイトルバックのような、ぱーっと明るくごきげんで解放的な世界が待っているのだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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