『永楽帝』の壮大な映像美、『夢華録』のロマンス時代劇　WOWOWで中国ドラマに夢中

　自ら作品を選んで観る時代になって久しいことを改めて感じる2023年。「次はどのドラマにハマろうか……」と、リストを眺めている人も少なくないのではないか。

　そこでオススメなのが、壮大な世界観で紡がれる歴史もの。現代とは異なる価値観や文化、複雑に入り組んだ関係図に少々ハードルの高さを感じるかもしれないが、私たち視聴者を引き込んでくれる魅力的なキャストが勢揃いしている。

　そして、気づけば遠く感じられた過去の世界を身近な人間ドラマとして親しむことができ、歴史の一部を覗き見できるような知的好奇心を満たしてくれる魅力も。それが、4000年とも5000年とも言われる長い歴史を誇る中国ドラマとなれば、一度紐解けば次々と興味の幅が広がっていくはずだ。

　「そこまで言うのなら、次は中国の歴史ドラマに挑戦してみようか」となったあなたに、この1月からWOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信開始となった、人気中国ドラマ2作品をご紹介したい。

壮大な映像美と微笑ましい人間味に夢中『永楽帝～大明天下の輝き～』

　まず1作品目は、2021年に中国のゴールデンタイムで放送され、視聴率20日連続1位となった話題作『永楽帝～大明天下の輝き～』。そのスケールの大きさは「さすが中国」と唸らずにはいられない。

　中国大河ドラマの巨匠、ガオ・シーシー監督によってカメラに収められた風景は、テレビドラマのレベルを遥かに超えるもの。数え切れないほどの騎兵がぶつかり合う戦のシーンに圧倒されたかと思えば、夕日が陣営に差し込む場面ではあまりの雄大さに思わず息を呑む。
加えて、宮中のきらびやかな衣装や調度品の数々も見応えたっぷり。豪華絢爛な建造物に集う人々の数にも驚かされる。その細部にまでこだわりを感じられる作り込みこそ、物語に深みと説得力を持たせ、没入感を生み出す。

　紡がれるストーリーは、明の最盛期を築いたと言われている第3代皇帝・永楽帝の生涯ということもあり、“大国を統べるということはこういうことだ”とでもいわんばかりの迫力だ。それだけ重厚感のある作りの歴史絵巻ということもあり、登場人物も多い。それぞれ関係性によって呼び名も変化するため、状況を把握するまで少し混乱してしまうかもしれない。しかし、それでも見続けたくなる理由が、このドラマで描かれる人間味の部分にある。
特に印象的なのが、序盤で描かれる青年時代の永楽帝・朱棣（しゅてい）のわんぱくぶり。親に決められた結婚から逃れるために皇室から抜け出し、軍に侵入してしまうほど。その軍を率いる大将軍は、婚約者の父親というから面白い。一人の兵士として扱われることを望んだ朱棣に、さっそく尻叩きのお仕置きが待っているなんていう展開も。

　しかし、身分を隠して民と共に過ごす日々は決して道楽ではなかった。実際に戦の最前線に立って仲間を失う痛みを経験したことで、人としての器が大きく育っていく。その成長していく姿に胸が熱くなるのだ。

　心配する者、味方となって共に歩む者、利用しようと近づく者……彼の周囲には様々な人間が集まってくる。その数々の出会いを経て、決していい子とは言えなかった青年が、どんな立派な皇帝になっていくのか。全45話をじっくりと見届けたい。