『デアデビル:ボーン・アゲイン』予告編を徹底解説 ブルズアイ復活、MCUとのつながりも

こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画およびジャンル映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします!
今日は先日解禁となったディズニープラスのマーベル新ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』の最新予告編解説です。
この予告編を楽しみにしていたファンは多いことでしょう。ではなぜここまで本作は注目されているのか? 今回は予告編解説の前にデアデビルというヒーローの変遷についてざっと振り返り、後半は予告編でいくつか気になるところを挙げていきたいと思います。
デアデビルとは?
まずデアデビルは、赤いコスチュームにその身を包んだヒーローです。一見赤いブラックパンサーっぽいですが、耳の突起部分は野獣の耳ではなく悪魔の角をイメージ。名前のデビル(悪魔)に由来します。しかしデアデビルにはもともと「命知らず」という意味があり、その身を危険にさらしながらも活躍するヒーローです。悪魔にちなんだと書きましたが、魔力とかオカルト的な能力は持っていません。ある一点を除いてはスーパーパワー的なものはなく、鍛えられた肉体と身に付けた戦闘術で戦います。そして彼が活躍するのはニューヨーク、とくにヘルズ・キッチンとよばれるところで、悪党たちから街の人々を守る、ストリートベースのクライムファイター(犯罪者と戦うヒーロー)です。
デアデビルの正体はマット・マードックという弁護士。彼は幼少の頃、放射性物質を目に浴び失明しますが、その時に超感覚(レーダーセンス)を身に付けます。視覚以外の感覚がすべて研ぎ澄まされ、かつ音で(音の反響で)まわりの状況をすべて把握できるのです。またすごいバランス感覚も持っています。こうした超感覚が唯一スーパーパワーっぽいですね。
コミックの登場は1964年でした。マーベルで多くのヒーローを生み出したスタン・リー氏によれば、ハンディキャップを持つ人間をヒーローに、という試みもあったそうです。ファンタスティック・フォーのリード・リチャーズのR、ハルクのブルース・バナーのB、スパイダーマンのピーター・パーカーのP、X-MENのサイクロップスことスコット・サマーズのSと、マーベルの一つの伝統(?)でもあるダブルイニシャルネーミングでマット・マードックのMです。
なお赤いコスチュームと書きましたが、コミックに登場した時は黄色いコスチュームでした。主な宿敵はニューヨークの犯罪界のボス、ウィルソン・フィスクことキングピン。このボスはもともとスパイダーマンのコミックのヴィラン(アニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』にも登場)でしたが、今ではデアデビルの好敵手というイメージの方が強いかな。
デアデビルが人気を博したのが1980年からのシリーズで、よりハードでシリアスな物語展開となりました。この時のデアデビルを担当していたのがフランク・ミラー。そう、後に『バットマン:ダークナイト・リターンズ』『300〈スリーハンドレッド〉』『シン・シティ』を発表する鬼才です。
デアデビルは何度か映像化されました。1990年に、TVドラマ版『超人ハルク』の延長路線でパイロット版が製作(日本では『超人ハルク 敵か? 味方か? テアデビル』というタイトルでDVDリリース。なぜか誤植で“デ”ではなく‟テ“アビルになっています)。
2003年には20世紀フォックスで映画化。この時主人公を演じたのがベン・アフレック、恋人にしてアサシンのエレクトラを演じたのがジェニファー・ガーナー(後に『エレクトラ』単体のスピンオフも作られる)。『デッドプール&ウルヴァリン』に登場したジェニファー・ガーナーのエレクトラおよびデアデビルについてのネタは、この20世紀フォックス版に由来します。そして20世紀フォックスからマーベルに映像化の権利が一旦戻り(註:これについては、後のディズニーの20世紀フォックス買収に伴うからではなく、単純に当時の20世紀フォックスがデアデビルの権利をマーベルに戻したのです)、マーベルが新たに着手したのがドラマ版『デアデビル』です。2015年から、Netflixで配信されました。マット・マードックをチャーリー・コックスが演じ、ウィルソン・フィスク/キングピン役にヴィンセント・ドノフリオが起用されています。
で、ここが大きなポイントなんですが、この2015年というのは、すでにマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が起動に乗っていたが、ディズニープラスはまだ立ち上がっていないのです。で、このNetflix版=ドラマ版は、一応世界観的にMCUと(ゆるく)つながっていますが、製作自体はMCU側とは違うチームが作っていたので、トーン&マナーも違い、内容的にもつながるということはほとんどなかった。つまり、このドラマ版のキャラが映画の方に出るとかそういう試みはあまりなされていなかったのです。後にMCUチームがディズニープラス版のマーベルドラマを手掛けた時は、ドラマ『ワンダヴィジョン』が映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』にダイレクトにつながっているみたいな展開になりましたが、ドラマ版『デアデビル』や同じ路線・座組のドラマ『ジェシカ・ジョーンズ』『ルーク・ケイジ』『アイアン・フィスト』『パニッシャー』『ザ・ディフェンダーズ』はMCUとは距離を置いていたのです。そして2018年に『デアデビル』がシーズン3をもって終了、2021年の『ワンダヴィジョン』からディズニープラス×MCUのドラマが始まります。
事実上、マーベルのドラマ展開はここで一旦リセットされたわけです。となるとファンの心配は、新しいデアデビルのドラマなり映画が始まり、「チャーリー・コックスの『デアデビル』シリーズもなかったことにされてしまうのでは?」ということでした。しかしマーベル側は今までの『デアデビル』シリーズが支持を得ていることを十分に認め、チャーリー・コックス演じるマット・マードックを映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、ドラマ『『シー・ハルク:ザ・アトーニー』『エコー』に登場させ(後者には変身姿の“デアデビル”としても登場)、ヴィンセント・ドノフリオ演じるウィルソン・フィスク/キングピンをドラマ『ホークアイ』『エコー』に出演させました。
つまり、これによりチャーリー・コックス版マット・マードックがこれからのMCUに登場することが約束されました。そしてさらに嬉しいのは、新ドラマシリーズ『デアデビル:ボーン・アゲイン』が製作されることが発表されたわけです。筆者は、2020年のサンディエゴ・コミコンのMCUのパネルに参加した際、このことが大きく発表され、会場が大いに沸いたことを記憶しています。だから多くのファンにとって今回の予告編は待ちに待ったものでした。しかし、これでも一つ懸念がありました。主要出演者は今までの『デアデビル』と同じとはいえ、今までの設定や世界観を刷新した、新しいシリーズ(事実上のリメイク、リブート)なのか、それとも従来の、あのシリアス路線の『デアデビル』シリーズを継ぐもの(事実上のシーズン4)なのか? ファンとしては後者を期待したいところ。そして今回の予告を観る限り、後者だったようです。