土村芳「今の自分ができることを存分に」 『二十四の瞳』での子供たちからの学び

土村芳「今の自分ができることを存分に」

 これまで何度も映像化されている壺井栄の小説『二十四の瞳』。土村芳が主演を務め、吉田康弘が脚本・演出を手がける8月8日放送の特集ドラマ『二十四の瞳』(NHK BSプレミアム、BS 4K)は、11回目の映像化となる。

 昭和3年、瀬戸内海の島。岬にある分校に赴任したのは、女学校を出たばかりの土村演じる大石久子だ。キラキラ輝く瞳の12人の1年生は皆、明るく朗らかな久子にすぐに懐いた。自転車に洋服姿でさっそうと登校する久子は、保守的な村人たちからは敬遠されるが、子どもたちはいつも久子の味方であり心の支えであった。

 歴代、何人もの女優たちが演じてきた大役へのプレッシャーや共演した子役たちから受けた刺激について、久子を演じた土村芳に聞いた。

子どもたちへの感情を大切に

――『二十四の瞳』はこれまで何度も映像化されている作品ですが、撮影前の気持ちはいかがでしたか?

土村芳(以下、土村):これだけ長い間ずっと描かれ続けているので、本当にたくさんの人たちに愛され続けてきた作品なんだなとすごく感じました。そんな作品で私が大石久子先生役をやらせていただくというのはすごく驚きましたし、プレッシャーはものすごくありました。

――これまで映像化されている作品の中で参考にした部分はありましたか?

土村:錚々たる方々の作品を拝見して、「自分はどうする?」と思ったときに、出口のない思考回路にズブズブはまっていったんです。でもだいたい頭で考えすぎると良いことなくて(笑)。考え過ぎて、またよくない方に行ってるなーと思っているときに、ちょうど子どもたちと事前にリハーサルできる日があったんです。初めて子どもたちと会ったその瞬間から、みんながかわいくて。リハーサルをしていてもすごく楽しかったですし、鬼ごっこをしたり、歌の練習をしながら電車ごっこをしたり……。その経験で実際に子どもたちに対して湧き上がってきた愛おしさや、そのときに触れ合って出てきた感情を信じれば、私なりの大石先生になっていくんじゃないかなと思って、その気持ちを大事にしようと思って演じました。

――考えすぎていたことは、子どもたちと会ったことで吹っ切れたと。

土村:そうですね。プレッシャーは常にどこかには存在しているんですけど、子どもたちが自分の拠り所になってくれたことがすごく大きかったです。

――教室で大石先生に名前を呼ばれた子どもたちの目が本当にキラキラしていました。

土村:子どもたちがすごく重要な作品なので、子どもたちと私との関係性を監督が大事にしてくださりました。言葉を多くやり取りせずとも、こちらのリズムや気持ちを汲んでくださる監督だったので、現場でもそんなに言葉がいらなかったというか。撮影の最中はいっぱいいっぱいだったんですけど、終わってみると助かっていた部分がたくさんあったなと思います。

――多くの子役と共演する上で、演技についてどんなコミュニケーションを取りましたか?

土村:お芝居はみんなもう天才的でした。全員がとっても自然で。すごいなっていう言葉しか出てこないんですけど、私が小さい頃だったら絶対こんなんじゃないなって(笑)。小豆島での撮影は、1月だったのですごく寒かったですし、撮影シーンによっては薄い着物だったり、ふんどしの子とか、裸足の子もいて。なのに誰一人現場で弱音を吐く子がいなくて、子どもたちのそのエネルギッシュさに元気をもらっていました。

――5月に公開された『劇場版 おいしい給食 卒業』をはじめ本作でも子役との共演が続いていますが、彼ら彼女らから受ける刺激はありますか?

土村:すごくあると思います。ハッとさせられることも多くて。『二十四の瞳』では、現場に対する姿勢は私も学ぶことがありましたし、「こんなにみんな頑張ってるんだから私もちゃんとしないとな」ってすごく思いましたね。私としてであったり、大石先生としてであったり、どちらの面でもすごくいい刺激をもらっていたと思います。

――何度かあった合唱のシーンがすごく微笑ましかったのですが、どのように撮影したのでしょう?

土村:オルガンは練習させてもらえたので、実際に弾いて、みんなでせーので歌うんですが、もうみんなの声に負けちゃいますね(笑)。それぐらい元気いっぱいですし、子どもの歌声ってすごくいいなと。物語としても、歌の要素はすごく大事になってくるので、子どもたちの魅力や島の景色など、いろんなものと歌が溶け合って、すごくいい情景になっていると思います。

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