土村芳「今の自分ができることを存分に」 『二十四の瞳』での子供たちからの学び

土村芳「今の自分ができることを存分に」

教師として、母親としての向き合い方

――本作を含め、これまでにも『この世界の片隅に』(TBS系)や『べっぴんさん』(NHK総合)など、戦時中を舞台にした作品に出演する際に役作りで意識していることはありますか?

土村:そのときの時代背景は勉強させてもらうんですけど、あくまでも知識の一つでしかなくて、役と向き合う時間の方が圧倒的に長いです。“こういう時代背景があったから、こうなっている”という設定はあるんですが、その上で、大石先生が教師として、母親として向き合っている対象の方に重きを置くようにしているというか。母親としての子どもとの向き合い方は、先生としての子どもとの向き合い方ともちょっと違ったりするので。

――今作では、母親としてと先生としての向き合い方の違いをどう意識されましたか?

土村:先生としては、やっぱり生徒に対して立ち入れない部分があって。例えばコトヤンやマッちゃん、フジちゃんとかみんなそうなんですけど、それぞれの家庭の事情に干渉することはできない。けど、生徒として学校に来てくれたときには、大石先生として、子どもたちに自由に遊んで、学んで、楽しく過ごしてもらおうという思いがあるんじゃないかなって。そこはたぶん母親と先生とでは違うのかなと思いました。

――たしかにマッちゃんのシーンでは心配しているけど、踏み込めない大石先生の姿が辛そうに見えました。

土村:あそこは切なかったですね。

出会う人によって学べること、気づけることは違う

――本格的に演技を始めててから10年以上経ちますが、長くやられてきた今、考えることはありますか?

土村:10年……そっかぁ(笑)。こういう作品もあれば、ポップな作品もあったり、決め込むこともなく自由にいろんなキャラクターを演じさせていだたけていて、すごくありがたいなと思います。朝ドラや今回のように、長い年代を演じさせていただけることもすごく恵まれているなと思いますし、監督や共演者の方をはじめ、すごく素敵な方々と出会えていて、また会いたいと思う方々ばかりです。

――朝ドラや『二十四の瞳』でのような、一人の人を長く演じることは、他の作品とはどう違うのでしょうか?

土村:撮影する期間的には変わらないんですけど、今回で言うと、小っちゃい子たち、中くらいの子たち、大人の子たちが、一気に成長していくんです。不思議なのが、演じている人は違うのに、最終的な大人の生徒の子に会うと、その生徒の小さい頃の姿が、ちゃんと浮かぶんです。ちゃんと一人の人間として通っているのが見えるというか。それぞれの代のその役の子たちの力だと思いますが、すごく不思議な感覚でもあり、大石先生と同じようにその感慨深さはすごく感じることができて、これはこういう作品ならではだし、この役を演じさせていただいている私の特権なのかなと思います。

――表現者として、今後こういうことをやっていきたいと考えていることありますか?

土村:今まであまり具体的に言ってきたことがないんですが、今回は30代だからこそ、若いときから年を重ねる役をできたのかもしれないなと思っていて。これから年齢を重ねて40代、50代になったときに、たぶん、その年になったからこそできる役もすごく増えていくと思うんです。そういう可能性がすごく広がっている反面、そうなるからこそできなくなっていく役もたぶん出てくるんだろうなって。なので、今できること、今しかできないことには挑戦していきたいですし、探していけたらいいなと思っています。年齢とその可能性の広がりを見つけていけたら。今はとりあえず、「30代の今の自分ができることを存分にやっていきたい!」っていう感じですね(笑)。

――20代の頃と比べても、新しいことをやれているようですね。

土村:そうですね。明らかに年齢を重ねてきて、できることはたぶんあると思っていますし、これから先もきっとあるはずと思っているので……(笑)。そこは自分自身にも期待しつつ、可能性を広げていきたいです。

――作品作りの上で一番幸せだなと感じることはなんでしょう?

土村:やっぱり、いろんな方たちと出会えることですね。監督やスタッフさん、共演者の方との出会いがまず一番大きいです。自分が学べること、気づけることも、出会う人によってたぶん違いますし、そういうこと全部を糧にしていきたいなと思っています。あとは完成してお届けできたときの喜びはありますね。

――『二十四の瞳』の放送に向けて、最後に一言お願いいたします。

土村:大石先生から生徒へ、親から子へ、そして子どもたちが親や先生に対して抱く思いとか、誰かが誰かを思う気持ちに関しては、時代関係なく今にも通じる部分があるんだなと思いました。今回は大石先生として、子どもたちに対する思いを役を通して感じることができましたし、作品のテーマになっている「絆」は、今でも共感できることなんじゃないかなって。この作品は、すごく通じるものが多いからこそ、愛され続けているんだと思います。そのときの出来事としてだけではなく、今の時代に刺さるものを私もすごく感じるので、ぜひ見ていただけたら嬉しいです。

■放送情報
特集ドラマ 『二十四の瞳』
NHK BSプレミアム/NHK BS4Kにて、8月8日(月)21:00〜22:29放送
原作:壺井栄『二十四の瞳』
脚本・演出:吉田康弘
音楽:富貴晴美
出演:土村芳、中島歩、麻生祐未、國村隼、宇野祥平、濱田マリ、近藤公園、赤間麻里子、水澤紳吾、今井悠貴、川島鈴遥、加藤小夏、仁村紗和、森田想、川添野愛、高瀬あい、草野大成、白鳥玉季、番家天嵩、浅田芭路、志水心音ほか
制作統括:原克子(松竹)、樋渡典英(NHKエンタープライズ)、岡本幸江(NHK)
写真提供=NHK

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