『吉祥寺ルーザーズ』6人が理解し合うかけがえのない仲間に 増田貴久たちがくれた癒やし
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東京・吉祥寺の謎めいたシェアハウスに暮らす、人生の負け組6人の日々を描いた『吉祥寺ルーザーズ』(テレビ東京系)が最終回を迎えた。最初は、互いに警戒しあい、一触即発な雰囲気だった6人。それがいつの間にか、年齢も性別も越え、これまでの過去の出来事も全てひっくるめて理解し合うかけがえのない仲間となっていた。
“開かずの部屋”だったアボカドの部屋を開け、6人のシェアハウスのオーナーが池上(國村隼)と判明した頃、何食わぬ顔で池上が帰ってきた。本人はシェアハウスのたった一つのルールである日曜日の食事に間に合うように帰ってきたつもりだったらしいが、日付を勘違いしたらしい。いつもならちょっと天然な池上の行動にクスっとできるのだが、今回は緊迫した状況だ。それどころではない。
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桜(田中みな実)たちに事実を問われた池上は、自身が6度の結婚をしていたこと、このシェアハウスは最初の妻との間にできた娘のものであることを明かした。果物の絵で部屋を分けたのも、池上がそれぞれの妻から言われた捨てセリフを回想しての結果らしい。2番目の妻には「用なし!」と言われたから「洋梨の部屋」ができ、3番目の妻にはりんごを投げつけられたことを思い出し、「りんごの部屋」ができ……などなど。なんとも悲しい由来である。池上は自他共に認める“ダメ男”だったのだった。
衝撃の事実はこれだけではない。なんとこのシェアハウスを貸してくれていた池上の娘が、事情があり、この家に戻ってきたいというのだ。それはつまり、池上を含む6人への退去命令。6人は渋々受け入れるしかない状況に、それぞれの荷造りを始める。
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身の回りのものを整理していると、自分自身のことも整理したくなるのだろうか。聡(増田貴久)は自身が教師を辞めるきっかけとなった生徒・リコ(岩本蓮加)へ自分から連絡する。桜は離婚調停中の夫・町田(坂本昌行)と食事に出かけた。何気ない場面だが、それぞれが苦手としていた相手に自分から行動を起こしたのは初めてだ。それをすんなりとできるくらい、聡や桜は自らの失敗を受け入れているということなのだろう。
印象的だったのは、町田の言葉だ。結婚生活の中で、完璧を目指していたがうまくできない桜はいつも不機嫌だった。なにかと怒る桜の様子を町田はずっと「ピーって音がする」と思っていたらしい。それをシェアハウスの住人たちは、ケトルになぞらえて「ケトってる」と笑っていた。桜はそれを「バカにしているのよ」とため息をついたが、町田は「いや、僕より君のことをちゃんと見てるんだよ、あの人たちは」と言ったのだ。いろいろな固定観念を抜きにして、桜自身を見てくれていたシェアハウスの住人たち。それがどれほど温かいことか、桜ももうわかっている。