『ちむどんどん』黒島結菜の涙の名演 「大嫌いな自分も大事な自分」優子の言葉が響く

『ちむどんどん』黒島結菜の涙の名演

 『ちむどんどん』(NHK総合)第15話で何度も出てくるワードが「女らしさ」だ。

 暢子(黒島結菜)は、比嘉家にとっても大事な就職先だった眞境名商事の決まりかけていた内定を自分から蹴ることとなる。(若い頃の)母・優子(仲間由紀恵)と似てカッとしやすい暢子の怒りの理由は、「女のくせに」と蔑んだ言葉を投げかけられたことに加え、男子とのかけっこ勝負に勝っても負けても「女のくせに/女だから」と結局は女ということで判断されていることも拍車をかけていた。

 その怒りはやがて山原村、沖縄(の在り方。きっとそこには東京への憧れもある)、自分が女だということに向けて「全部大嫌い!」という直接的な言葉となって吐き捨てられる。だが、暢子の心にある“もやもやー”の根源にあるのは、自分への劣等感だった。賢秀(竜星涼)は別として……小学校の教員として教壇に立つ良子(川口春奈)に、歌をこよなく愛する歌子(上白石萌歌)。

 一向に心を燃やせるものを見つけられない、自分のやりたいことが分からない暢子は、思い悩んでいた。いち視聴者としては、暢子には決定的に好きなものがあり、ただ逡巡しているようにも思えてしまうが、それは彼女にとっては日常の中にある当たり前のものとして映っているのかもしれない。つまりは、暢子が囚われているのは自分らしさ。そのことに気づくのは、第4週以降ということになるのだろう。

 そんな悩める暢子を黒島結菜は大粒の涙を流し演じる。明るくポジティブな暢子が母の前だけで見せた泣き顔。そんな暢子を優子が後ろからそっと抱き寄せる。亡き父・賢三(大森南朋)が言っていた「暢子は暢子のままで上等」と、「大嫌いな自分も大事な自分だからね。いつかきっとこの村に生まれてよかったって、女に生まれてよかったって思える日が来ると思うよ」という言葉を添えて。

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