『海街チャチャチャ』人気の理由は“架空の地方都市”? まるでオンライン旅行のような癒し
それから昨年、本国では大ヒットした『椿の花咲く頃』と同じく、“架空の地方都市”を舞台としているというところ。
もちろんそれ以前にも、地方を舞台にした韓国の恋愛ドラマはあった。筆者が観てきたラブコメでは重要なポイント、もしくはラストでチェジュ島に、というパターンが多かった。ホン姉妹による『メンドロンドット』は全編通じてチェジュ島が舞台だったし、「ああ、行ってみたい……」と思った『ショッピング王ルイ』の釜山は印象深い。
もともと韓国ドラマは、その舞台が観光スポットになるという観光客に向けての絶大な広告だった。個人的にも『シークレットガーデン』を観て国立現代美術館に行ったし、ドラマのロケ地を巡るツアーは、K-POPがこんなことになるはるか以前、韓流という言葉とくっついて凄まじい人気だった。
それからドラマの進行スピード。これは日本で人気である理由の一つだとも思うのだが、韓国のラブコメにしてはかなりゆっくりなのだ。これでもかと目まぐるしく秘密や過去が次々に明らかになり、ギンギンになってついていくような展開ではなく、穏やかながらもポイントはしっかり抑えたストーリーになっている。
穏やかな海辺の町の波の音、風の匂い、地元の名物料理も映像で体験できるドラマは、まるでオンライン旅行。派手な展開をあえて回避しているのかというほどに、観ているだけで癒される。
ドラマの舞台をいつ、どこに設定するかというのは大きなポイントだと思う。時代劇、現代、近未来などの時代設定。ガッツリしたファンタジー、SF、ゴーストものが多い韓国ラブコメで、それを避けた上で、でもきちんとリアルは今ちょっと辛い。そんなとき、癒しのフレイバーとして架空の地方都市、というのはすごくよく考えられたジャンルなのではないだろうか。
コロナ禍ではソウルより撮影がしやすいのもあるだろうし、韓国の王道と新しさをうまく組み合わすことのできる発明なのでは、と思ったりする。
■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『海街チャチャチャ』
Netflixにて独占配信中、毎週土曜・日曜に新着エピソード配信
脚本:シン・ハウン
演出:ユ・ジェウォン
出演者:シン・ミナ、キム・ソンホ
写真はtvN公式サイトより