『イカゲーム』シーズン2はなぜ賛否両論に? 豪華キャスト陣の功罪と新設定を考える

『イカゲーム』シーズン2はなぜ賛否両論に?

 全世界でシンドローム級の人気を獲得したNetflixシリーズ『イカゲーム』が、シーズン2として3年ぶりに帰ってきた。だが、日本をはじめ世界90カ国以上で1位を獲得したものの、その内容については賛否両論のようだ。

 それはなぜなのか? できるだけネタバレなしに、シーズン2で変更されたことや新たに加えられたことに着目し、韓国エンタメファン的に考察してみたい。

 まず、視聴してすぐに気づく変更点は、イ・ジョンジェ演じる主人公ソン・ギフンの性格だろう。シーズン1では、妻に捨てられ老いた母に養われる借金だらけの情けない男だった。主人公なので途中で死なないことはわかっているのだが、そんな“情”しか持ち合わせていないような男が生死をかけたゲームに挑み、ぎりぎりのところでアイデアをふり絞って生き残る姿に胸が熱くなった。

 ところがシーズン2では、それが復讐のために立ち上がる男として描かれていていく。あれほどの殺人ゲームが目の前で行われれば人格が変わるのも当然ともいえるが、罪悪感と恨みを抱いているとはいえ、再びあの残酷な世界に迷いなく飛び込もうとする設定はいかがなものか。一度中断後に再度挑戦せざるを得ない状況にもっていったシーズン1の展開に比べ、繊細さと説得力に欠けている。

 一方で、ソン・ギフンが復讐のために、人々を先導しゲームのシステムの崩壊者となっていく部分は、ドラマに大きな躍動感を与えていた。韓国エンタメファンにとっては、これまで見たことがなかった“情けないイ・ジョンジェ”が見られるシーズン1のソン・ギフンは捨てがたいキャラだったが、新たな物語を繰り広げるためにはキャラの改変をする必要があったのかもしれない。

 また、今回大きく注目されたのが、数多くの主演級俳優の投入である。

 シリーズ1は、イ・ジョンジェ以外、誰もが知る主演級俳優の出演はなかった(シーズン1の成功により、大きく羽ばたいた俳優は数知れず。また、イ・ビョンホンはシークレットな役柄だったので省く)。

 今回は、前回から出演のウィ・ハジュンのほか、イム・シワン、カン・ハヌル、イ・ジヌク、パク・ギュヨン、パク・ソンフン、ヤン・ドングン、チェ・スンヒョン(BIGBANGの元メンバーのT.O.P)など、錚々たるメンツが顔を並べる。視聴し始めてパク・ヒスンが出演していることにも驚いた。こうした有名俳優が大勢投入されたことで、物語が大味になってしまうのではないかと、始まる前は懸念されていた。

 確かに、それにより緊張感が薄れたことは否めない。これだけの有名な俳優が演じているなら、それほど早くゲームを去ってしまうことはないだろうと、どうしても思えてしまうからだ。

 ただ、下世話ではあるが、ひとつの画面に韓国を代表する主演級俳優がずらりと並んでいることに感激した韓国エンタメファンは多かったはず。筆者は、名作ドラマ『ミセン』で共演したイム・シワンとカン・ハヌルが、劇中で会話するシーンに思わず震えた。

 これほどのメンツが揃えられたのは、シーズン1大ヒットの恩恵だろう。ドラマの評価とは関係ないことかもしれないが、俳優のマッチングを見る楽しみはドラマ鑑賞の醍醐味のひとつである。

 ちなみに、個人的に注目した俳優は、2024年は『涙の女王』の悪役で印象を残したパク・ソンフンである。同作とはまったく違う軍人出身のトランスジェンダーのヒョンジュ役を演じていて、立ち居振る舞いなど素晴らしいハマりぶりを見せる。『涙の女王』と同じ時期に撮影していたというから驚きだ。

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