パク・ソジュンはなぜ日本の視聴者の心を掴んだ? 『梨泰院クラス』など代表作から分析
昨年より続く「STAY HOME, STAY SAFE」により、すっかり家の中で動画配信サービスでの映画やドラマ鑑賞が趣味になったという人も多いのではないだろうか。なかでも人気を集めているのが韓国ドラマだ。
韓国は「パルリッパルリ ※“早く早く”の意味)の国」という声があるように、韓国ドラマもテンポの良さが大きな魅力。“ご都合主義”と言われてしまいそうなドラマチックな偶然の連続も、初回からトップスピードで駆け抜けていく韓国ドラマでは、むしろ「そうこなくっちゃ!」と言いたくなる気持ちよさがある。
また、ストレートな物言いをするキャラクターが多いのも、韓国ドラマらしさ。登場人物の感情の動きがわかりやすく、複雑に見える相関図もすぐに頭に入ってくる。また、心の内まで丁寧に描かれるがゆえに、憎まれ役にも関わらず愛さずにはいられないなんていう名物キャラクターが生まれるのも、韓国ドラマあるあるだ。
一方で、それほど人間味のある役柄を魅力的に演じるというのも、俳優陣に課される難しい部分。あまりにも感情が早く動きすぎても見ている側としては興冷めしかねない。そんな絶妙なさじ加減を巧みに演じている、今もっとも勢いのある俳優といえばパク・ソジュンではないだろうか。
8月、ドラマが好きな10〜60代の405名を対象に行われた「日本でリメイクしてほしい韓国ドラマは?」Webアンケート(動画配信の横断検索サービス「1Screen」調べ)によると、1位『キム秘書はいったい、なぜ?』(2018年)、2位『梨泰院クラス』(2020年)と、パク・ソジュン主演のドラマがトップを独占。ちなみに、現在放送中の火9ドラマ『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジ系)のオリジナル版も2015年にパク・ソジュンが主演したものだ。本国韓国ではもちろんのこと、日本視聴者の心を掴んだパク・ソジュンの魅力とは何か。先の3作品を中心に紐解いてみたい。
説得力のある完璧からの絶妙な“崩し”
『キム秘書はいったい、なぜ?』でパク・ソジュンが演じたのは、大企業の副会長イ・ヨンジュン。容姿端麗&頭脳明晰と非の打ち所がない完璧人間だ。そんなヨンジュンに負けず劣らずな秘書キム・ミソと共に順調な日々を過ごしていた。だが、そのミソが急に秘書を辞めて「自分の人生を生きたい」と言い出したから大混乱。「キム秘書はいったい、なぜ?」と困りながらも、あの手この手で彼女の気持ちを探り、引き留めようと画策していく。
まず、完璧人間を説得力を持って演じられるというのが、パク・ソジュンの得意とするところ。体幹の強さを感じる姿勢は堂々とした出で立ちには欠かせないもの。またキリッとした鋭い眼光は、仕事に対して妥協のない信念を醸し出す。落ち着いた低い声には威厳さえ漂う。黙っているだけでも、人を牽引する側の思慮深さと知性が感じられるのだ。
だからこそ、そんなヨンジュンが真顔でナルシスト発言をする場面は思わずクスッとしてしまう。本人は大真面目「こんなにも完璧な男性なのに、なぜ?」と言いたくなるような、そのちょっぴり残念なところが愛しく思えてくるのだ。完璧である頼りがいと、どこか抜けている人間らしさの割合が少し崩れるだけで、とたんに「やばいやつ」となってしまいそうなキャラクターだが、そのギャップとも言える崩し加減を見事に演じることができるのもパク・ソジュンならでは。