2024年の年間ベスト企画
長内那由多の「2024年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 リミテッドシリーズに傑作が揃う
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2024年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、海外ドラマの場合は、2024年に日本で放送・配信された作品(シーズン2なども含む)の中から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクト。第17回の選者は、“インデペンデント演劇人”の長内那由多。(編集部)
1. 『THE PENGUINーザ・ペンギンー』(U-NEXT)
2. 『ディスクレーマー 夏の沈黙』(AppleTV+)
3. 『窓際のスパイ』シーズン4(AppleTV+)
4. 『SHOGUN 将軍』(ディズニープラス)
5. 『リプリー』(Netflix)
6.『エクスパッツ ~異国でのリアルな日常~』(Prime Video)
7.『シンパサイザー』(U-NEXT)
8. 『シュガー』(AppleTV+)
9. 『私のトナカイちゃん』(Netflix)
10. 『One Day/ワン・デイ』(Netflix)
過酷な1年だった。2023年の米俳優組合、脚本家組合によるストライキの影響はテレビシリーズにも及び、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』など人気連続シリーズが精度を落とし、見るべきは1シーズン完結のリミテッドシリーズに多かった。
10. 『One Day/ワン・デイ』
2011年にアン・ハサウェイ主演で映画化されたデイヴィッド・ニコルズの小説には、テレビシリーズの形式こそが相応しかった。19年間に及ぶ男女の7月15日だけを描く物語が、1話30分全14話というフォーマットで輝く。あなたが長年の大恋愛を経験していなくても、人生とはかけがえのない他者の存在によってあるのだと気付かされることだろう。
9. 『私のトナカイちゃん』
売れないお笑い芸人がストーカーにつけ狙われる……。脚本・主演リチャード・ガッドの実体験からなる本作は、今年最も緻密な構成で世界中の視聴者をビンジさせた。大手芸能事務所での性加害が明らかとなった本邦でももっと話題になるべき作品。
8. 『シュガー』
“LAを舞台に私立探偵が失踪事件を調査する”というプロットだけで嬉しくなってしまう人は、後は何も知らずに見るように。2024年、キャリアの新たな頂点に立ったコリン・ファレルは、映画(とTVドラマ)をこよなく愛する人情派探偵シュガーをとびきりチャーミングに演じた。最終回を迎える頃には、世界を見るあなたの“目”が変わっているかもしれない。
7. 『シンパサイザー』
ピークTVが終わっても、テレビシリーズは映画作家にとって重要なプラットフォームの1つだ。韓国の名匠パク・チャヌクはいよいよ流麗を極め、ここではベトナム戦争後、アメリカに潜伏した二重スパイを引き裂く。アジア人蔑視の邪悪な白人男性を1人4役で演じるロバート・ダウニーJr.(エグゼクティブプロデューサーも務める)の天才に、オスカー像の受け取り方でケチを付けた人々は平伏してほしい。
6. 『エクスパッツ ~異国でのリアルな日常~』
精力的という言葉はニコール・キッドマンのためにある(2024年は映画3本、TVドラマ3本に出演)。エグゼクティブプロデューサーを兼任する本作に『フェアウェル』の俊英ルル・ワンを招き、全編香港ロケに挑んだ。幼い息子の失踪に打ちひしがれる物語は、1時間40分に及ぶ第6話でロバート・アルトマンを思わせる巨大群像劇に到達。香港の異邦人を通し孤独を謳った詩的な作品。