米アニー賞受賞 細田守監督作『未来のミライ』が海外で高い評価を勝ち得る理由

『未来のミライ』なぜ海外で評価されるのか

 第91回アカデミー賞長編アニメーション部門に、細田守監督作『未来のミライ』がノミネートされた。同賞にスタジオジブリ以外の作品がノミネートされるのは初めてのことで、受賞にも期待がかかる。

 さらに、アニメ界のアカデミー賞といわれる第46回アニー賞授賞式が2月2日(現地時間)、米ロサンゼルス名門大学UCLAのロイス・ホールで開催され、本作が長編インディペンデントアニメ部門作品賞を受賞した。長編インディペンデントアニメ部門作品賞の獲得は、日本人監督初の快挙となる。

 しかしながら、本作が日本において大きな評価を受けたかというと疑問符が浮かぶ。本作の最終興行収入は28.8億円。前作『バケモノの子』が58.5億円、前々作『おおかみこどもの雨と雪』が42.6億円と、細田守監督は長編デビュー以来右肩上がりに売り上げを積み上げてきたが、ここでガクッと落としたこととなる。『未来のミライ』は細田監督自身のプライベートフィルム的な側面もあり、本作を巡る評価は二分している。

 だが海外の評価はこのほどではない。大手レビューサイトRotten Tomatoesでは、批評家の評価は92%フレッシュ、オーディエンススコアも90%フレッシュと軒並み上々である(2月4日現在)。またアカデミー賞の他に、前述のようにアニー賞を受賞し、ゴールデングローブ賞、放送映画批評家協会賞などにノミネートされ、2018年の日本アニメーション映画の中で一線を画した目立ちぶりだ。

 日本で大きく評価分けた理由として第一に考えられるのが、本作をストレートな冒険活劇ファミリー映画と期待して劇場に足を運んだ観客が多かったことだろう。『バケモノの子』『サマーウォーズ』と言った過去作から想像させる「大人も子どもも楽しめる作品」や「夏休みのファミリー映画」といったイメージとかけ離れて、本作は細田守監督の作家性を前面に押し出した内容となっている。そのため、ストレートな冒険というよりか、まるで子どもが昼寝の最中に見る夢のような、不思議な時間を切り取ったアート映画を見ているかのような気分にさせてしまったのだ。

 この点に関しては、海外メディアもきちんと指摘している。Los Angeles Timesは、「日本アニメ―ション映画の巨匠、細田守の新しい家族映画が公開された。しかし本作はあなたが想像するようなものではないかもしれない。彼の映画は万人向けに見えるが、実のところそうではない。“家族”という集団は彼の作家性の中心にあるように見えて、その実かけ離れているとも言える」と分析。この問題点は、間違いなく海を越えて共有されている。

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