劇中歌から紐解く『グレイテスト・ショーマン』 なぜ時代背景に合わないポップスを使用した?

3月28日の金曜ロードショー(日本テレビ系)にて、映画『グレイテスト・ショーマン』が地上波初放送される。『レ・ミゼラブル』をはじめとして、日本にミュージカル旋風を巻き起こした映画はいくつかあり、ブロードウェイミュージカルが日本に上陸し公演を行うことも通例となっている今、満を持して本作の地上波放送が決定したことに喜ぶ人もいるだろう。

本作は、「地上でもっとも偉大なショーマン」と呼ばれた19世紀アメリカの実在の興行師P・T・バーナムの半生を描いたミュージカル映画だ。2018年に公開後、応援上映など観客参加型のイベントが開催され、各地でロングラン上映しリピート層を中心に大ヒット。観客の心を強く掴んでやまない劇中ナンバーを収録したサウンドトラックが全世界で600万枚を売り上げ、米ビルボード・アルバム・チャートで1位を獲得したほか、同年の世界で1番売れたCDアルバムになる(※)など、華やかな功績を残した作品である。
監督のマイケル・グレイシーは、音楽を担当したベンジ・パセック&ジャスティン・ポールにオーダーをした際、時代物の物語で現代音楽を流す上での確固たる信念があった。誰しもが心のどこかで葛藤を抱えているであろう現代人に届けんとしたそのクリエイションが人々の心を動かし、映画の大ヒットへと導いたのだ。
そこで今回は劇中に登場するいくつかのナンバーを例に挙げ、いかにその狙いが重要であったかを紐解いていきたいと思う。

19世紀の実話をベースにした映画に現代音楽(ポップ・ソング)をあてた理由について、パンフレットには以下のように書かれている。
「グレイシーは直感で、歌で時代設定との対比が可能なのではと思った。時代を遡るのではなく、登場人物たちや彼らが抱えるジレンマを今の時代のものに感じられるような歌が欲しいと考えた」
現代においてエモーショナルな感情が伝播していくためには「共感」が重要であると考え、グレイシー監督はより現代人が感情移入できるポップスを映画に据えたのだ。




















