米アニー賞受賞 細田守監督作『未来のミライ』が海外で高い評価を勝ち得る理由

『未来のミライ』なぜ海外で評価されるのか

 では、一体なにがここまで、評価を分けたのだろうか。海外で評価されている点を抜粋してみる。Hollywood Reporterは、「アニメの可愛さと注意深く観察されたリアリズムの間で優雅さを兼ね備えながら、特に大人と比較して重心が低いという事実をしっかりと理解し、犬や子どもの動きや揺れ方を洞察力をもって捉えている」と評している。つまり、日本アニメーションとしての繊細な視点と描写力の高さが評価されているということだ。

 確かに、本作の主人公・くんちゃんが階段を上下したり、自転車をこぎ、犬とじゃれあうといった子どもの目線から見た世界の描写には目を見張るものがあったように思う。

 また、本作が掲げるメッセージが、2018年の映画の潮流とリンクしていたのも1つのポイントかもしれない。The Wrap誌では、「家族の繋がりや親の不安、逃れることのできない過去の呪縛を共有する作品に代表される『万引き家族』『ROMA/ローマ』と、似通った関係性と詩的な野心を感じさせる」と評している。この2作も本作と同様にアカデミー賞にノミネートされており、特に『ROMA/ローマ』は作品賞が有力視されている。こういった他作品と共時性のある点も、プラスに働いたのだろうか。

 なお、『未来のミライ』の北米配給権を獲得したのは、米国に拠点を持つGKIDSという会社だ。2008年に設立されて以来、海外のアニメーション映画をアメリカ国内へ配給しており、これまで、アカデミー賞長編アニメーション部門に、『かぐや姫の物語』『思い出のマーニー』などといった作品のノミネートを送り出している。いくつもの映画祭を主催するなど、米国においても大きな存在感を発揮するGKIDSの配給作品であることも、『未来のミライ』が注目される1つの理由と言えるかもしれない。

 いずれにせよ、日本から生まれた作品が海を越えた舞台で羽ばたいていることはなんとも喜ばしい。2月24日(現地時間)に開催される授賞式を楽しみに待ちたい。

(文=安田周平)

参考

https://www.rottentomatoes.com/m/mirai/
https://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-mirai-review-20181129-story.html
https://www.thewrap.com/mirai-film-review-mamoru-hosoda-gkids/
https://www.hollywoodreporter.com/review/mirai-review-1114826

■発売情報
『未来のミライ』Blu-rayスペシャル・エディション
価格:¥7,800+税
封入特典:パンフレット縮刷ブックレット(32P)
『未来のミライ』ができるまで(32P)
青山浩行描き下ろし使用 三方背BOX

・収録特典内容
プロモーション映像集
イベント映像集(完成披露試写会/親子試写会/初日/大ヒット御礼)
『未来のミライ』inカンヌ国際映画祭
細田守監督インタビュー
キャストインタビュー集(上白石萌歌&黒木華/星野源/麻生久美子)
『未来のミライ』キャスト座談会
『未来のミライ』公開記念 細田守が描く新しき世界
細田守監督作品の舞台 富山県上市町を巡る
星野源が見たアニメ映画スタジオの秘密
タイアップ映像集
監督&キャストによる<未来の私>

『未来のミライ』スタンダード・エディション(Blu-ray/本編ディスク)
価格:¥4,800+税
封入特典: パンフレット縮刷ブックレット(16P)

『未来のミライ』スタンダード・エディション(DVD/本編ディスク)
価格:¥3,800+税
封入特典:パンフレット縮刷ブックレット(16P)

声の出演:上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治
監督・脚本・原作:細田守
作画監督:青山浩行、秦綾子
美術監督:大森崇、高松洋平
音楽:高木正勝
オープニングテーマ・エンディングテーマ:山下達郎
企画・制作:スタジオ地図
配給:東宝
(c)2018 スタジオ地図
公式サイト:http://mirai-no-mirai.jp/

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