芦田愛菜主演『薬屋のひとりごと』実写化は成功するのか? 池松壮亮、目黒蓮らの活躍光ったライトノベル実写化の歴史

『薬屋のひとりごと』実写化は成功する?

 日向夏のライトノベル『薬屋のひとりごと』が芦田愛菜の主演で実写ドラマ化される。演技力に定評のある役者だけに、小説から飛び出してきたような猫猫を見せてくれそうだ。コミカライズやアニメ化が盛んなライトノベルで実写化というのは決して主流ではないが、『薬屋』が評判になれば後に続く実写化作品も増えてきそうだ。

原作者・日向夏も太鼓判

 「猫猫役が芦田さんに決まったとき、『あっ、これは安心してお任せできる』と思い、実際お会いして『猫猫や!』となりました」―PrimeVideoのオリジナルドラマとして、2028年に『薬屋のひとりごと』が配信されることになって、原作者の日向夏が寄せたコメントは主役を務める芦田愛菜への賞賛にあふれていた。

 元より天才子役として注目を集めていた芦田だが、今は若き名優として様々な作品で多彩な役を演じて評判を得ている。鶴谷香央理の漫画を原作にした映画『メタモルフォーゼの縁側』(2022年)では、大ベテランの宮本信子を相手に漫画好きの女子高生を演じきり、細田守監督のアニメ映画『果てしなきスカーレット』(2025年)では、復讐に燃える王女のキャラクターに苦渋に満ちた声で命と心を吹き込んだ。そんな芦田が演じる以上、猫猫の役を間違うはずがないというのが目下の見立てだ。

 あとは、対になるイケメン宦官の壬氏を誰が演じるのか、中華風の宮廷であり花街といった舞台をどこまで実写として再現できるのかといったところが関心の的になる。

 2023年からスタートしたTVアニメ版『薬屋のひとりごと』では、こちらも超演技派の悠木碧が猫猫の声を担当し、しのとうこのイラストをベースにしたキャラクターたちのひとりひとりが、そこに生きているような感じで描かれ視聴者を魅了した。

 舞台や衣装も、絵だけにどこまでも細かく再現できた。実写ではこれがチープなものになるというのが以前の認識だったが、今はセットを組んでVFXを重ねることで、どのような時代のどのような場所でも本物そっくりに表現できる。原作者の日向も、撮影現場を見学して、「あまりに豪華なセットや衣装を見て、いったいいくらかかってるんだ、などと下世話なことばかり考えておりました」とコメントしている。

 演じる役者については、それぞれの個性が現れがちな実写化を不安視する声もあるが、ここはアニメを前提とせず、演じる役者たちの演じる力に目を向けるべきだろう。原作のライトノベルを読んで脚本家や演出家がどのようなキャラなのかを吟味し、役者たちがどのように演じるべきなのかを考えた結果がどうなるのかを今は待つしかない。

ライトノベル実写化の歴史

 そもそもライトノベルの実写化は、役者の力によってそれぞれの作品が持つ物語としての魅力や、込められている思いを引き出しているものが少なくない。たとえば、橋本紡のライトノベルが原作の映画『半分の月がのぼる空』(2010年)は、現在放送中の『豊臣兄弟!』で今までに無い豊臣秀吉を見せている実力派の池松壮亮が裕一という高校生を演じ、忽那汐里が演じた心臓の病気で入院している里香という少女とのラブストーリーを繰り広げた。2006年のアニメでは鈴村健一と高橋美佳子が演じたキャラと、ビジュアルも雰囲気も近いとは言いづらい。それでも、未来を諦めかけている少女を支えたいと思うようになる少年の気持ちを感じ取らせて、観客を涙させた。

 映画はさらに、2人が結婚して娘ができて幸せに暮らしていた時に起こる悲劇という、原作の先の展開を描いて更なる慟哭を誘った。ここで裕一を池松に代わって大泉洋が演じたことと、里香との間にできた娘を、これが映画初出演となる芦田が演じていたことが注目ポイントだ。大泉が、砲台山に建つ記念碑の下で泣くシーンは観る人の胸を打った。芦田はその無垢な存在感で、原作にもアニメにも出てこないキャラでありながら観る人の心を引きつけた。原作の拡張が映画としての完成度を高めた例だ。

 入間人間のライトノベルが原作の『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(2011年)は、心が壊れてしまっているまーちゃんを大政絢、まーちゃんを見守り続けるみーくんをこちらも実力派の染谷将太が演じた。染谷は、瀬田なつき監督のもと、物語の進行中に突然カメラ目線で「嘘だけど」とつぶやく怪演ぶりを見せ、原作が持つ不穏で虚無的な雰囲気を増幅させた。

 実力派で言えば、市原隼人も滝本竜彦原作の『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』(2008年)に出演。原作ではオタク気質の少年をヤンキー風に変えながら、夜ごとに現れるチェーンソー男と戦う少女を支える役を通して、人生に目標を取り戻していく若者の姿を見せてくれた。野村周平が主役を務めた河野裕原作の『サクラダリセット 前篇/後篇』(2017年)も、決して派手ではない異能力による戦いを、『半月』と同じ深川栄洋が淡々と描いて、入り組んだ展開を分からせてくれた。

ジャンルの向き不向きはあるのか?

 こう並べると、いわゆるライトノベルの代表として挙げられる異世界ファンタジーであったりSFであったりといった作品が少ないことに気付く。キャラクターの容姿が外国人に近い異世界転生ものや、『ソードアート・オンライン』なり『とある魔術の禁書目録』といったイラストからのキャラクターのイメージが強力な作品を、実写にした時に起こる違和感を拭いづらいからかもしれない。これは、漫画の実写化でも言われることだ。

 ライトノベルを変えたと言われる上遠野浩平の『ブギーポップは笑わない』は、吉野紗香が宮下藤花・ブギーポップを演じて『ブギーポップは笑わない Boogiepop and Others』(2000年)として実写映画化された。緒方剛志による原作イラストのキャラクターデザインが強く浸透していただけあって、ダークファンタジー風のデザインは先鋭的過ぎると見られ、狭い範囲の支持に止まった。似せすぎれば実写世界とのズレが気になり、それならと特撮に寄せれば違和感を言われる。キャラクター小説とも呼ばれ、イラストとセットで支持されるライトノベルならではの実写化における悩みだろう。

 いっそトム・クルーズが主演したハリウッド版『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のように、ループする時間という設定を残しつつ舞台や状況を変更し、キャラクターも属性を変えてしまえば、それもひとつの作品として評判にはなる。だからといって、谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』を外国に舞台を移して作れるとはとても思えない。それならと国内で同じ設定で実写化しようにも、原作から強烈でアニメによってインパクトが増したキャラクターたちを演じられる役者はそうはいない。

 ライトノベルでも、実写化に向いた作品とそうでない作品がある。そして、『薬屋のひとりごと』は、東洋的なキャラクターで中国や韓国を中心に実写映画やドラマも多く作られている宮廷ものということもあり、実写化されてもそれほど違和感を覚えない。配信ドラマという潤沢な予算と製作期間の上で、ベストなキャスティングによって作られることで、原作者も大いに期待する作品に仕上がっていく。そんなルートが見えている。

ライトノベルの実写化が盛り上がるか

 ライトノベルを少し大人寄りにしたキャラクター文芸では、中華風の宮廷が舞台のミステリーやファンタジーが続々と登場し、ひとつのジャンルを形成している。和風ファンタジーも人気で、その中から顎木あくみ原作の『わたしの幸せな結婚』(2023年)がSnow Manの目黒蓮主演で、今田美桜がヒロイン役を務めて実写映画化されて、TVアニメとほぼ併走しながら共にしっかりとした支持を集めた。先頃、永瀬廉と吉川愛主演で実写映画化されたクレハ原作の『鬼の花嫁』(2026年)も含め、身分違いの恋愛というファン層の多いジャンルや、アイドル的な人気のある役者で引きつけられるキャラクター配置の作品なら、アニメ化よりは実写化が選ばれそうだ。

 もう1作品挙げるなら、日日日の原作を『涼宮ハルヒの憂鬱』で演出を手がけた山本寛監督が実写映画化した『私の優しくない先輩』(2010年)が、当時まだ新鋭だった川島海荷をヒロインに迎え、はんにゃの金田哲やプロレスラーの高田延彦も出演してピーキーなやりとりを繰り広げる異色作として、注目しておきたい。『国宝』に携わって話題になったアニプレックスが実写作品を手がけた先駆けで、川島が広末涼子の「MajiでKoiする5秒前」を歌いながら歩き回る周囲に、出演者たちがだんだんと集まりラストは全員でダンスするワンカット撮影のエンディングは、映画史に刻んでおきたい凄さだ。

 キャストなり監督なり演出の力で、原作の持つ物語性やテーマ性を浮かび上がらせつつ、ひとつの作品として成り立たせる。そんなライトノベルの実写映画化が、今一度盛り上がってくることも期待したいところだ。

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