『ヤニねこ』『地元最高!』『みいちゃんと山田さん』……過激マンガのアニメ化が相次ぐワケ

コンプラ時代に異彩放つ過激アニメたち

 亜月ねねの手掛ける人気マンガ『みいちゃんと山田さん』がTVアニメ化されることに決定。ファンのあいだで大きな反響を呼ぶ一方、SNS上では「本当にアニメ化してもいい作品なのか」といった議論も飛び交っている。

 同作にかぎらず、このところ社会のディープな部分を題材とした過激なマンガが日の目を浴びており、奇妙なムーブメントを巻き起こしつつある印象だ。現在アニメが放送されている『ヤニねこ』のほか、先日アニメ化が発表された『地元最高!』や『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』をこうした流れに含めてもいいだろう。それぞれどういった描写のある作品なのか、ネタバレにならない範囲で紹介していきたい。

にゃんにゃんファクトリー『ヤニねこ(1)』(ヤンマガKCスペシャル)

 まず『ヤニねこ』は、昨今自主規制されがちな描写にフルスロットルで突っ込んだ作品と言える。同作の舞台となるのは、人間と獣人が共存している世界。主人公の佐藤ヤニ子(ヤニねこ)は怠惰な性格のヘビースモーカーで、同じアパートに住む獣人たちと騒がしい日常を送っている。

『ヤニねこ』予告編 | Netflix Japan

 ヤニ子は入浴中でも気にせずタバコを吸うほどなので、作品のほとんどに喫煙シーンが映り込んでいるのが同作の特徴。アニメではとくにタバコ周りの描写に力が入っており、“愛煙家あるある”を刺激する作品にもなっている。

 さらにお酒が大好きなアルねこや、他人に言えない過去を持つヤクねこといったキャラクターも登場。喫煙ネタにとどまらず、“触れづらい”描写のオンパレードになっている。国内外で喫煙描写が自主規制されることが当たり前になっていることを考えると、かなり挑戦的な作風だ。

 といっても露悪的な作風ではなく、獣人は作中世界で社会的なマイノリティに設定されており、“そのように生きるしかなかった”存在として描かれている。またアパートの大家を通して、慈愛のこもった目線を向けられるため、絶妙なバランス感覚の作品と言えるだろう。

 そうしたバランス感覚の賜物か、同作は多くの人に受け入れられている模様。『君の名は。』や『天気の子』などで知られるアニメ監督・新海誠も、自身のXにて「アニメ『ヤニねこ』、ものすごく面白いですね、、、」と絶賛のポストを投稿していた。


usagi『地元最高! (1)』(彩図社)

 また『地元最高!』はusagiがX(旧Twitter)で発表していたWebマンガで、彩図社にて単行本化されている。かわいらしい絵柄な上、女性キャラしか出てこないので、一見するとキラキラした“日常系マンガ”のようにも見えるが、そこで描かれるのはとんでもなく治安の悪い世界だ。

「地元最高! | Jimoto Saiko!」ティーザー予告編 | Netflix

 主人公の少女・シャネルたちが住む“地元”は、暴力や犯罪、ドラッグが横行している治安最悪の地区。またシャネル自身も漢字がまともに読めず、眠剤の飲み過ぎで記憶力が低下しているという設定となっている。彼女は友人のちひろと共に、反社会的な人物が跋扈する裏社会を生き抜いていく。

 裏社会の情報に詳しい草下シンヤが担当編集・監修を務めていることもあり、作中で描かれる反グレグループの活動にはリアリティが宿っている。

 今回のアニメ化はMAPPAが制作を担当し、Netflixが世界独占配信を行うとのこと。『全裸監督』や『地面師たち』、『九条の大罪』など、地上波では放送が難しそうなドラマを手掛けてきたNetflixならではの企画と言えるだろう。とはいえあまりにハードな内容なので、SNS上では「まさか『地元最高!』がアニメ化するなんて……」「これ本当にアニメ化できるのか?」と疑いを捨てきれない人も多いようだった。

 その一方でさまざまな業界に同作のファンがいるようで、アニメ化発表のポストには画家の奈良美智や文芸評論家の三宅香帆、ライターのマフィア梶田などの著名人が反応していた。

まるよのかもめ 『ドカ食いダイスキ! もちづきさん 1』(ヤングアニマルコミックス)

 そして『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』は、白泉社の『ヤングアニマルZERO』、『ヤングアニマルWeb』でまるよのかもめが連載している作品。21歳・営業事務の“もちづきさん”こと望月美琴がドカ食いをする姿をひたすらに描き続ける、という異色のグルメマンガだ。

 ほかの作品と比べて常識的に見えるかもしれないが、同作のグルメ描写は異常の一言。作中で描写されるのは、“絶対に真似してはいけない”食生活だ。

 もちづきさんはカロリーのオーバードーズで食後に“至る”ことを至上の喜びとしており、1話目から職場での暴飲暴食によって1日の総摂取カロリーが4,745kcalに到達したところが描かれる。これは一般的に推奨される1日のカロリーの値を大幅に飛び越えた数値だ。

 当然そんな生活が健康に良いわけもなく、もちづきさんの脳裏には「死の影」がちらつくことも。本人も自制しようという気が一応あるものの、食欲には抗えずに奇行を繰り返してしまう。

 アニメ化発表に際して、ファンたちは大きな盛り上がりを見せていたものの、ある意味危険な内容ではあるので、「専門家の監修を付けた方がいい」といった声も上がっているようだ。

亜月ねね『みいちゃんと山田さん(1)』(KCデラックス)

 最後は7月26日にアニメ化が発表された『みいちゃんと山田さん』。詳細はまだ明らかにされていないが、放送時期は2027年の予定となっている。

 物語は主人公の山田が、“みいちゃん”と呼ぶ女性の墓参りにやってくるところから始まる。みいちゃんは何者かによって殺されたようで、それ以降は山田が彼女と過ごした12カ月の思い出を振り返る形で物語が展開していく。

 2人の出会いは新宿・歌舞伎町のキャバクラ。新人としてやってきたみいちゃんは仕事を覚えられずに同じミスを何度も繰り返してしまう。彼女はほとんど学校に行ったことがないそうで、社会常識や善悪を判断する力も持たず、周囲に迷惑をかけたり、都合よく搾取されたりしながら生きている。

 とくに印象的なのは、みいちゃんと関わる人々の“本音”が容赦なく描写されていること。綺麗ごと抜きで過酷な現実を描く作風と言えるだろう。しかしアニメ化の発表直後から、SNS上では「障がいのある人への差別意識を助長するのではないか」と懸念する声が続出し、激しい議論へ。公式から「本作は、特定の障害や立場の方々を差別・蔑視する意図をもって制作されたものではございません」といった声明が発される異例の事態となった。

 なお公式の声明では専門家の監修を受け、慎重に制作を進めていくという方針が打ち出されていた。

 コンプラが厳しいと言われる時代に、次々アニメ化が発表されている過激系マンガ。それだけ刺激を求める視聴者が多いということなのかもしれないが、いずれもたんなる露悪ではなく、世相を反映している面もありそうだ。

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