なにわ男子・高橋恭平は最強のラブコメ映画ヒーローだ! 『山口くんはワルくない』で魅せた、自然光の中のきらめき

左耳のピアスばかり強調する意図
高橋恭平主演のラブコメ映画『山口くんはワルくない』は、概ね原作通りに事が運ぶ。斉木優による原作漫画冒頭、ヒロインである篠原皐が通学中の電車で痴漢に遭う。たまたま近くにいたクラスメイトの山口飛鳥が、すかさず痴漢男の手首を掴み、どぎつい関西弁で「何しとんねん」と威嚇する。
1コマ目が手首を掴んだ決定的瞬間。2コマ目に痴漢男をギロりと睨み付ける山口の顔の寄りがバストサイズで描かれている。その顔を見て何より目を引かれる、左耳のピアス……。電車内に限らず、その後の場面でも左耳のピアスが執拗にちらつくのだが、映画ではどうなっているだろうか?
映画冒頭の電車内では、高橋ひかる演じる皐が心の中で「助けて」と叫んだ瞬間、痴漢男を現行犯で押さえる山口(高橋恭平)の手が、画面の上から下降する。そのとき、上手に左耳のピアスが映るのがわかるが、画面のピントがボケているためはっきりとは見えない。
後続場面では、転校生である自分の名前を黒板にでかでか書いた山口が、クラスメイトの方へ振り返る(同じ)カットを何度も重ねた後、カメラはさりげない動きで一瞬、左耳のピアスに寄る。
原作も映画も左耳のピアスばかり強調するが、そこにはより魅力的な右耳のピアスに切り替えるための明確な意図がある。
右耳ピアスが最大効果を発揮するために原作を改編
高橋恭平が演じるタイトルロール、山口くんは、強面の見た目とドスの利いた口調から「ヤクザ」と呼ばれ、クラスメイトたちを震え上がらせていた。でも、初対面で痴漢男を撃退してもらった皐だけは、山口が心優しい人柄であることを知っている。そもそも根は真面目で、成績も群を抜いて優秀。スポーツも万能。実は優等生キャラなのだ。
後ろの席に座る皐は、そんな山口に興味津々でついつい凝視してしまう。昼休み、窓辺の席で英語の予習をする山口を見つめていると、彼女の視線に気づいた彼が振り返る。ヤバい、恫喝される。内心びくびくの皐だが、彼女の席までやってきた山口から「優等生ゆうたやろ」とジェントリーに言われ、ホッとする。
そうしてカメラは窓辺側に置かれ、皐の前に立つ山口の横顔を右側から捉える。画面上には右耳のピアスが映ることになる。きたきた、右耳ピアス。冒頭の電車内での左耳ピアスは(ピンぼけで)上手に映り込み、右耳ピアスは下手にはっきりと(ピントが合って)映る。
原作では再び、皐と山口が同じ車両に同乗する通学場面が描かれ、車内で目をつむっている彼を彼女が見つめる。映画はこの場面を改編し、下校中の広場に置き換える。花壇の前に座り、寝ている様子の山口に皐が近寄る。金髪が映える屋外ということもあり、右耳ピアスが本作中最もクリアに映る。そのきらめきといったら……。
最初は左耳ピアスをしつこく捉え、原作の場面を改編してタメを作った上で、右耳ピアスのきらめきが最大効果を発揮する。
高橋恭平は生粋の“自然光男子”
ピアスにはそれだけで見る者の心を吸い込む不思議な力がある。リング状であればその効果は絶大だが、山口が両耳につけているピアスは粒状である。それだけにその粒と粒、ただ一点に対して釘付けになる。
つまり、粒状ピアスは相手の注意を引き付ける、超シンプルなアイテムなわけで、映画内でそれをつけた高橋恭平は、最強のラブコメ映画ヒーローなのだといえる(そういえば、高橋は2023年放送のドラマ『マイホームヒーロー』(MBS・TBS)に出演していた)。
令和のラブコメ映画に相応しい存在感と強度を誇る、本作の高橋恭平がきらめく瞬間は、専ら画面上に自然光を取り込んだ場面で散見できる。たとえば、クラス対抗ダンス大会の立候補者を募る場面。窓辺の山口がすっと左手を上げる。その瞬間、窓の外から入り込む自然光が、高橋恭平を一挙に包み込み、彼が紛れもないスター俳優(であると同時になにわ男子に所属する、きらっきらのアイドル)であることを画面が一斉に主張し始める。
それもそのはず。本作の撮影は花村也寸志なのだ。花村といえば、山﨑賢人&横浜流星コンビを昼下がりの渋谷に降臨させた『オオカミ少女と黒王子』(2016)での長回しなど、ラブコメ映画に自然光を導入する魔術師。『山口くんはワルくない』でも、代名詞的な長回しが気を吐いている。ダンス練習後、校舎を出た皐と山口が下校するツーショットを下手から差し込む夕日を活用した長回しで撮り上げた。
画面が自然光を取り込んだ途端、高橋恭平は誰よりきらめく。古典的フランス映画にも比肩すべき傑作ラブコメ映画『ひるなかの流星』(2017)などの巨匠・新城毅彦監督による『なのに、千輝くんが甘すぎる。』(2023)では、陽光降り注ぐグラウンドや午後の日がたっぷり行き渡る図書館など、こちらもタイトルロールを演じる高橋恭平の魅力を自然光によって浮き上がらせた。
ラブコメ映画(令和でもキラキラ映画と呼びたい)における高橋恭平は、生粋の“自然光男子”なのだ。
■公開情報
『山口くんはワルくない』
6月5日(金)全国公開
出演: 高橋恭平、髙橋ひかる、岩瀬洋志、上坂樹里、上原あまね、森日菜美、丈太郎、大塚萌香、今堀奏、永岡蓮王(AmBitious)、山口森広、春海四方、ふせえり
原作:斉木優『山口くんはワルくない』(講談社『別冊フレンド』連載)
監督:守屋健太郎
音楽:遠藤浩二
主題歌:「ビーマイベイベー」なにわ男子(ストームレーベルズ)
配給:アスミック・エース
©2026『山口くんはワルくない』製作委員会 ©斉木 優
公式サイト:https://yamaguchikun.asmik-ace.co.jp
公式X(旧Twitter):@yamaguchikun_mv
公式Instagram:@yamaguchikun_mv
公式TikTok:@yamaguchikun_mv

























