【文芸書ランキング】柚月裕子の<佐方貞人>シリーズ最新作『誓いの証言』がランキング上位に

柚月裕子『誓いの証言』16年ぶりの弁護士編

 2026年3月第4週のオリコン文芸書ランキング(※1)は第1位が若林正恭の『青天』(文藝春秋)を獲得し、その他は本屋大賞ノミネート作品が複数ランクインするという状況が続いた結果となった。2026年の本屋大賞については4/9(木)に発表会が行われ、朝井リョウの『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP・日本経済新聞出版)が第1位を受賞した。本屋大賞発表後の売れ行きについては4/20付以降のランキングに反映されるだろうが、引き続き動向には注目しておきたい。

 そのような中で3月第4週のランキングで着目すべき作品は第3位の柚月裕子『誓いの証言』(KADOKAWA)だろう。『孤狼の血』(角川文庫)などで知られるミステリ作家・柚月裕子の代表作である<佐方貞人>シリーズの最新作であり、シリーズ第1作『最後の証人』以来、16年ぶりの長編作品となる。

 『最後の証人』で佐方は検事の職を辞して弁護士となった、いわゆる“ヤメ検”弁護士として読者の前に登場した。身なりには無頓着だが、「罪は真っ当に裁かれなければならない」という信念を持つ腕利きの弁護士である。人気を博した本作はその後、『検事の本懐』『検事の死命』『検事の信義』(いずれも角川文庫)という検事時代の佐方を描いた連作短編集が刊行された。

 シリーズ第5作となる『誓いの証言』は第1作以来の弁護士編で、不同意性交等罪で訴えられた大学時代の同期を救うために事件の調査を進める佐方が描かれる。不利な状況でも自らが掲げる信念のもとに真実を追い求める佐方の姿は、リーガル小説の主人公というより私立探偵小説のヒーローに近いものを感じさせる。

 先ほど「16年ぶりの長編作品」と書いたが、前作『検事の信義』の単行本刊行が2019年のことなので、長編短編問わずシリーズ作品の刊行についてもコロナ渦を跨いで久しぶりに刊行されたことになる。その間に柚月は2021年に『ミカエルの鼓動』(文藝春秋)で、2025年に『逃亡者は北へ向かう』(新潮社)でそれぞれ直木賞の候補になっている。特に後者の『逃亡者は北へ向かう』は東日本大震災を真正面から描く、鎮魂の思いが込められた犯罪小説で、作家としての新たな側面を読者に見せた一作でもあった。こうした活躍を経てからの人気シリーズ最新刊に、やはり読者が寄せる期待も大きかったのではないだろうか。

※1 https://www.oricon.co.jp/rank/oba/w/2026-04-06/

■書誌情報
『誓いの証言』
著者:柚月裕子
価格:2,090円
発売日:2026年3月26日
出版社:KADOKAWA

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