世界的ダンサー・TAKAHIROが明かす、人の背中を押すコミュニケーション術「レベル1の勇者をいかに強くなるように導けるか」

ダンサーTAKAHIRO、 前向き本を作ったワケ

 ニューヨークの名門劇場・アポロシアターのTVコンテストで史上初となる9大会連続優勝を達成し、マドンナのワールドツアーでは専属ダンサーを務めた、日本を代表するトップダンサー・TAKAHIRO(上野隆博)。近年では櫻坂46や中島健人の振付を手がけるほか、バラエティ番組『それSnow Manにやらせて下さい』のダンス企画では審査員としても出演。明るいキャラクターと的確なコメントが支持されており、多方面で活躍している。

「私なんて」と考えてしまうあなたも、 絶対に前向きになれる40の言葉  PHP研究所/著・TAKAHIRO(上野 隆博)

 『「私なんて」と考えてしまうあなたも、絶対に前向きになれる40の言葉』(PHP研究所)は、世界中のアーティストと向き合ってきたTAKAHIROの経験と知見が詰まった、“背中を押す言葉”をまとめた一冊だ。本書の制作背景とともに、多くのアーティストたちから信頼を寄せられる、その人柄とコミュニケーション術の秘密に迫った。

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世界中のアーティストとの制作経験が活きた「前向き本」

TAKAHIRO(上野隆博)

――まず本書を制作するに至った経緯から教えてください。

TAKAHIRO:もともとは、PHP研究所のビジネスマン向け雑誌で取材を受けたことがきっかけでした。そのインタビューでは、「出演しているテレビ番組を見ていると、ポジティブに言葉を受け取ってもらえるようにお話ししている印象がある」と言っていただいたことから、“言語化”をテーマにお話ししたのですが、その“言語化”に“ポジティブ”という要素をプラスすることで「読んだ人が一歩踏み出せる本ができるのではないか」と出版オファーをいただいたことが始まりでした。

TAKAHIRO(上野隆博)
――そのオファーを受けたとき、どのように感じましたか?

TAKAHIRO:最初はどうしようかと思いました。ただ僕はメモを取るのが好きで、自分の経験や気づきを振り返るために書きとめていたんです。また僕は制作をともにするアーティストの方々から相談を受けることが多くあり、「どのタイミングでどんな言葉をかけるべきか」という経験値のようなものが、この20年で蓄積されていました。相談の内容はさまざまですが、どんな一流のアーティストでも、最終的には「あと一歩が踏み出せないから背中を押してほしい」という結論に行きつくことが多いんです。

 その“最後のひと押し”が必要な瞬間って、誰にでもありますよね。「大丈夫だよ」とか「行ってらっしゃい」とか、一言を言ってもらえるだけで一歩踏み出すことができる。でも大人になると、そういう言葉をかけてもらう機会は自ずと少なくなってしまいます。

――確かに。

TAKAHIRO:だからこそ「行ってらっしゃい」と背中を押す一言を、アーティストだけでなく多くの方に届けることができるなら、自分の経験も役に立つのではと思って、「やります!」とオファーを受けました。

元気なときも辛いときも「『よし』と思ってもらえるような本になれば」

――本書では、読者の気持ちの状態に応じて、3つのレベルに分けて「前向きになれる言葉」が掲載されています。この構成には、どのような意図があったのでしょうか?

TAKAHIRO:これは僕自身の失敗談でもあるのですが、若い頃、舞台裏で出演者の方から「あと一歩が踏み出せない」という相談を受けたことがあったんです。僕は「じゃあ一緒に叫ぼう!」と提案して、いっしょに大声で叫びました。すると、その方は「スッキリした、行ってきます!」と元気になってくれました。

 別の機会に、また悩んでいる方から相談を受けたので「よーし、叫ぼう!」と提案したら「そんな元気ないです…」と返されてしまったんです。そこで気づいたのは、同じように見える状況でも、人によって気持ちは全く違う、ということ。そして同じ人であっても、今日と明日では心の持ちようが違うのだ、と。野菜や果物に「旬」があるように人の心にも、その瞬間に響く「旬の言葉」がある。この本は、読んだ方がどんな時でも「今の自分」にぴったりの言葉に出会えるような一冊になれたらと思い、3つのレベルに分けました。

――通読した後にも、ふとした時にパラパラとめくっていけばその時のコンディションに合った「前向きになれる言葉」と出会えるような本だと感じました。

TAKAHIRO:このようなポジティブになれる本を読もうとしている時って、必ずしも読んでいる人の全員が元気な状態ではないと思うんです。「ヒットポイントが0.2、マジックポイントも0.3しかないけど、それでも進まなきゃいけない…」──そんな時でも役立つ本でありたい。「もっといこうぜ!」という方の背中を強く押す本にもなり得るかもしれませんが、病院の待合室や学校の図書館に置かれていて、そこで手に取った方にも「よし」と思ってもらえるような本になればいいなと思いながら、この本を作っていました。

多くのアーティストから信頼されるコミュニケーション術に迫る

――本書は前向きな言葉だけでなく、さまざまなアーティストから信頼されているTAKAHIROさんの、コミュニケーションにおける考え方も綴られています。幅広い年代のアーティストと制作される中で、コミュニケーションにおいて大切にしている「軸」のようなものはありますか?

TAKAHIRO:もちろん相手によって使い分けはありますが、共通する考え方があります。それは“ロールプレイングゲーム”です。そして自分は「村人A」、目の前にいる相手こそが「勇者」、という考え方です。

ーー自分が「勇者」ではないんですね。

TAKAHIRO:そうです。ついつい自分が勇者、相手は村人Aだと思ってしまうのですが、違います。相手に何かを伝えるとき──特に「その人を輝かせたい!」という関係においては、自分は村人Aのように「おお。勇者よ、よく来たな!」と道筋を教える側なんです。

 会社においても自分が先輩だとすれば、新しく入ってきた後輩はまだレベル1ですが、これから活躍する勇者なんです。自分の役割は、そのレベル1の勇者をいかに強くなるように導けるか。そうやって考えると、言葉を発する前に「自分が言いたいこと」ではなく「今その人にとって必要な言葉か」ということを自分に問いかけるようになるんです。

ーーその考え方にはどのようにして至ったのでしょうか?

TAKAHIRO: かつて子ども向けのダンスレッスンで大きな失敗をしたことがきっかけの一つかもしれません。大学生の頃、初めて小学生クラスを任されたことがありました。僕はそれがすごく嬉しくて、当時かっこいいとされていた「エグい系」と呼ばれる激しいダンスを「これが今、一番かっこいいから!」と子どもたちに教えようとしました。

 ところがレッスンが進むにつれて子どもたちは泣き出し、立ち尽くし…、部屋から出て行く子もいました。当時の僕は「最先端の一番カッコいいダンスを教えているのに、どうして?」と困惑しました。そして、ようやく気づいたんです。その子どもたちがやりたかったのは、ランニングマンのようなテレビで見たことがあって「やってみたい」と思えるダンスだったんです。

――当時のTAKAHIROさんは良かれと思って、最先端のダンスを教えようとしたわけですよね。

TAKAHIRO:そうです。僕は「これが今いちばんかっこいい!」と思っていたけど、「自分にとっての良いもの」が、必ずしも「相手にとっての良いもの」ではありません。だから、まずは相手が「これいいな」と思ってもらえるところを見極める。そして今より「ほんの少しだけ背伸びをすれば届く場所」へと導く。例えるなら、頑張って手を伸ばしてやっと掴める位置にあるブドウの果実。それをキャッチしようと努めることで、少しずつ筋力がついていく。そのステップこそが、人が前進するために必要なプロセスなのだと学びました。

 つまり「俺はこれが良いと思う!」ではなくて「あなたがやるならこれが良いと思う!」であるべき。現代的な言い方をすれば、主語を「自分」ではなく「あなた」にして、考えてみることが大事なんです。

――TAKAHIROさんは本書でも、例え話を多用されています。また櫻坂46の3期生ドキュメンタリーでも、「自分の中で、短いものさしと長いものさしを持とう」といった、伝わりやすい例えで加入したばかりのメンバーを鼓舞されていました。ユニークでありながら分かりやすいのが印象的ですが、例え話で説明する時にはどんなことを意識していますか?

TAKAHIRO:例え話をする際、多くの人は第三者が過去に語っていた言葉を引用してしまいがちです。たとえば「かつてアリストテレスがこう言っていました…」というのは、「引用例え話」ですよね。そういった他所から持ってきた例え話だと、どうしても伝わりづらくなってしまいます。そうではなく僕は相手に理解してもらうために、自分の頭の中にある「絵画」から切り取って、今この瞬間に頭の中に浮かんでいる“絵”を、言葉で伝えようとしています。例えば「焼けたパンを想像してください。」と言われると、どんなパンを思い浮かべましたか?

――そうですね…。食パンを思い浮かべました。

TAKAHIRO:焼けた食パンだと、トースターで焼かれたパンをイメージしているかもしれませんよね。そこで、例えば「僕にとっての食パンって、片面だけ少し焦げていて、もう片面は生焼けなんです。それはなぜかというと僕にとっての食パンのイメージって…」と話していくことで、お互いに情景を共有しながら理解してもらえるんです。逆に「食パンって中世ヨーロッパにおいて…」と、どこかで聞いたような話から引用して説明しようとしても伝わりづらくなる。だから勇気を出して、できるだけ自分の中から切り取ったイメージを伝えることができれば、よりリアリティを持って伝えられると思います。

――ダンスの振付でも、そのような例え話をしながらお伝えしている印象があります。ディレクションする際にも、有効な伝達手段なんですか?

TAKAHIRO:そうです。例えば「手を前に出してください」という振付でも、そっと手を差し出す人もいれば、グッと拳を前に突き出す人もいて、人によっては動きは異なります。しかし、例えば「拳を握って、前の壁をぶち破る感じで!」と伝えるだけでも、動きは明確に伝わります。感情や五感でのイメージを共有するのも効果的です。人間は動きにおいても「意図」を大事にしていて、感情や感覚とともに伝えることで、細かなニュアンスが伝わりやすくなる。例えば「拳を突き出す」という動きも、「世の中の悔しさをぶつける感じで!」と伝えると、動きがめちゃくちゃ強くなるんです。

TAKAHIRO(上野隆博)
――音楽番組で平手友梨奈さんが「TAKAHIRO先生は自分にとって初めてのダンスの指導者。ダンスにおいて感情を大事にすることを教わったので、それが自分の基礎になっている」という旨の話をされていました。今の話からも、TAKAHIROさんが「感情」を大事にされていると感じました。

TAKAHIRO:大事です。言葉もダンスも「現象」ではありますが、人が最終的に受け取るのは「印象」。現象の積み重ねを通して、それがどのような感覚として伝わるのかが、実は一番大事。「あたたかい」「さびしい」「つらい」といった印象にどのようにアプローチするのか――同じ現象でも、ニュアンスを少し変えるだけで与えられる印象は大きく変わります。それこそが表現の魅力であり、その人だからこそ生み出せる「深み」だと思います。

「胸が熱くなりました」読者から届いた手紙

――発売から1ヶ月も経たないうちに重版が決定しましたが、反響はいかがですか?

TAKAHIRO:身近にいるアーティストの方々から、「ここが良かった」と具体的な感想をもらえたことが嬉しかったです。また学校の先生からお手紙をいただいたことも胸が熱くなりました。その手紙には、卒業していく生徒に贈る言葉として「この本の言葉を引用しました」と書かれていました。教育の現場で言葉を伝えられている方にも役立ててもらえたと実感できたのは、とても嬉しかったです。

TAKAHIRO(上野隆博)

――特にどのページの反応が多かったですか?

TAKAHIRO:それが本当にバラバラで、人によって刺さる言葉が全然違うんです。たとえばアーティストの方からは「君の代わりはいるよ」というページを読んで「楽になった、すごくスッキリした」という感想もいただきました。手紙をくださった学校の先生からは、「ネガティブな言葉とポジティブな言葉は等価交換ではない」という話が響いたと書かれていました。本にも書いたことなのですが、言葉にも“質量”があって、ネガティブな言葉一つは、ポジティブな言葉100個分くらいの重さを持つ。 「いいね」とたくさん褒められていても、同じ三文字の「うざい」という言葉一つで気持ちが重くなってしまうのは、決して心が弱いわけじゃない。「同じ言葉でも重さが違う」というのも、逆に言葉を三文字の羅列と捉えるだけで少し心が軽くなる。そういう考え方が響いた、と手紙には書かれていました。

『「私なんて」と考えてしまうあなたも、絶対に前向きになれる40の言葉』(PHP研究所)

 何より、こうして様々な反応があるということは、特定のページだけが良かったと言われないような、偏りのない本になっている。本が活きているようで、改めて本を作ることができて良かったなと感じています。

■書誌情報
『「私なんて」と考えてしまうあなたも、絶対に前向きになれる40の言葉』
著者:TAKAHIRO(上野 隆博)
価格:1,760円
出版社:PHP研究所
発売日:2026年2月27日

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