Hi-STANDARD「DEAR MY FRIEND」絵本の創作背景は? Daisuke Hongolian「このタッチはハイスタじゃなきゃ描けない」


Hi-STANDARD屈指の名曲「DEAR MY FRIEND」の歌詞を絵本にした『歌詞(うた)の本棚 DEAR MY FRIEND』(リットーミュージック)が、2026年2月14日の発売以降、大きな話題となりヒット中だ。
同作は、楽曲の歌詞に着目し、人気イラストレーターが自らのフィルターを通してビジュアル化する “歌詞(うた)の本棚"シリーズの一冊であり、国内外で100万枚超のヒットを記録したアルバム『MAKING THE ROAD』(1999年)のアートワークでも知られるDaisuke Hongolian氏が手がけている。
「DEAR MY FRIEND」の歌詞とリンクしながら、Hi-STANDARDのバンド・ヒストリーが描かれた同作は、リアルタイムで『MAKING THE ROAD』を聴いた世代はもちろん、現在のバンドシーンを追う若者世代にも共感を与える仕上がりだ。
イラストを手がけたDaisuke Hongolian氏に、同作の制作背景と、当時のHi-STANDARDとの思い出を振り返ってもらった。
このタッチはハイスタじゃなきゃ描けない

――Daisuke Hongolianさんは昨年、『Screaming Newborn Baby』にて久しぶりにHi-STANDARD(以下、ハイスタ)のアルバムアートワークを手がけました。それと同じ頃から、今回の「歌詞の本棚」でのハイスタ「DEAR MY FRIEND」絵本化のお話も進行していたかと思いますが、大きな関連性があるこの2つのプロジェクトはどのような過程を経て生まれたのでしょうか。
Daisuke Hongolian(以下、Hongolian):まず、絵本に関してはリットーミュージックさんから「ハイスタの曲を絵本にしたい」というお話をいただいて。僕自身、以前同じ「歌詞の本棚」でTHE BLUE HEARTS「情熱の薔薇」の絵本を描いていることから、お引き受けすることにしました。その後、ハイスタのメンバーにも確認を入れて、難波(章浩)さんからも「ちょっと怖いかもしれないけど、一旦自由にやってみよう」というお返事をいただいて、正式に描くことになりました。で、おっしゃるように『Screaming Newborn Baby』のアートワークに関しても同時進行で進めていて。どっちが先だったかの記憶は曖昧ですが、ほぼ同じタイミングに物事が決まって進んでいったように覚えています。
――「DEAR MY FRIEND」はハイスタの3rdアルバム『MAKING THE ROAD』(1999年)の収録曲。リリースからすでに27年近く経っているわけですが、当時この曲に対してどんな印象を持っていましたか?
Hongolian:すごくメロディアスでポップな曲調で、歌詞に関しては友達とか時間の流れとかを感じさせる、すごくいい曲だなと思っていて。単純にとても好きな一曲です。
――年齢を重ねると、歌詞の感じ方や印象が変わってくることもありますし、特にここ数年のハイスタのストーリーを踏まえることで歌詞の重みや意味合いも変化しているのかなと思います。
Hongolian:そうですね。今また改めて聴くと違いますよね。特に、ツネさん(恒岡章)が好きだった曲だと知ると、歌詞の意味合いも違って響きますし。僕自身もこの曲で絵本をお願いしたいというオファーをいただいたあとに、そういうお話を聞いたので、取り掛かる際により気合いが入りました。
――難波さんから「一旦自由にやってみよう」と言っていただいて、Hongolianさんの中ではこの絵本の中で展開するストーリーや世界観について、まず最初にどういうイメージがありましたか?
Hongolian:ハイスタの持つエネルギーや空気感は閉じ込めたいなと考えたくらいですかね。とりあえず難しいことは考えず、思ったままに取り組もうと思いました。
――それこそ、『MAKING THE ROAD』のアートワークで展開された世界観やタッチをもとに?
Hongolian:はい。実際、難波さんからも「『MAKING THE ROAD』の世界観に寄せてほしい」という意見をいただきましたし。このタッチの絵もしばらく描いていなかったので、最初は「そこまでやってしまって大丈夫かな?」と思ったりもしました。
――『MAKING THE ROAD』で見せたタッチのイラストは、ほかの場面で用いていても全然不思議じゃないのに、実はここ以外では見かけない特異なものです。
Hongolian:確かに、僕が手がけたほかのイラストともタッチが異なりますし、ほかのアーティストからのオファーでも「あのタッチでお願いしたい」という声はちょくちょくいただいていたんです。でも、このタッチはハイスタじゃなきゃ描けないものなので、ほかに存在しないわけです。
読者に余白を持たせたい

――なるほど。今回は「DEAR MY FRIEND」の歌詞を踏まえて、物語をご自身の中で作っていったわけですよね。
Hongolian:そうですね。そこも説明っぽくならないように、自分の中で解釈して描きました。じゃなかったら、難波さんにも通らなかったかなと思っていますし、ほかのメンバーからも「つまんね」って返されたんじゃないかなと。
――実際、ここまでツネさんを含むハイスタの3人(難波、横山健、恒岡)を軸にした物語にするんだと、僕も初めて読んだときに驚きを隠せませんでした。
Hongolian:メンバーに寄せるのか、架空の登場人物で物語を進めるのか……例えば、ロボットに置き換えて表現するのか、いろんな方向性があったんですけど、でもメンバーに寄せちゃったほうが今回は面白いんじゃないかという結論になって。そこからは昔のこともいろいろ思い出しながら、描くのは早かったですね。
――Hongolianさんにとっても近しい存在だからこそ、物語を作っていく中で、イラストを描いていく中で意識したり注意したりしたことってありましたか?
Hongolian:そこまで考えもしなかったかな。全部好きなように描けましたし、ダメだったら直せばいいかなっていうくらいで、あまり構えてはいなかったです。
――過去にもTHE BLUE HEARTS「情熱の薔薇」で絵本を描いていらっしゃいますが、歌詞の世界をイラスト化して物語を構築していくことで、特に大事にしていること、これは絶対に忘れちゃいけないっていうポイントはありましたか?
Hongolian:読んだことだけで完結させず、読者に余白を持たせたいなという思いが僕の中にあって。なので、結末に至るまでのいろんなバックグラウンドや要素をイラストに散りばめつつ、「寸止め」感みたいなことは意識したかもしれません。
――読んだ方々のイマジネーションを掻き立てることで、きっと1人ひとり思い浮かべるエンディングも違うかもしれませんし。そのヒントになるような要素を、随所に用意しておくことにとどめると。では、今回の「DEAR MY FRIEND」に関してはクライマックスの見せ方に関しても、いろいろと考えたのではないでしょうか。
Hongolian:「DEAR MY FRIEND」については、クライマックスをライブの風景にしたいなっていうイメージを漠然と持っていましたが、最終的にはメンバーと「絵本だったら、こういう流れで見せられたら面白いよね」って話し合って決まっていった感じです。
僕なりに感じることを赤裸々に描いた

――『MAKING THE ROAD』のときからも思っていたことですが、この色使いやイラストのタッチってちょっと独特ですよね。
Hongolian:確かにそうかもしれませんね。これはハイスタから感じる色をストレートに出した結果、トリコロール的な原色中心になったんですよね。あとは、あの当時僕が好きだった1990年代のグラフィティやストリートカルチャーを突っ込んだ結果ですね。
――それを現代にこういう形で復活させるところもすごく興味深いなと思って。
Hongolian:そこまで意識的ではなかったんですよ。僕の中では、あまり気負わずに勢いで描けるイラストがこういう感じなので。もっと言えば、これしかできないんですよ(笑)。ただ、当時は「本当にこれでいいのかな?」っていう不安もあったんですけど、それがハイスタのアルバムとともに世間に受け入れられたことで、自分の中では好きなタッチになりました。
――ちなみに、イラストはどんな具材を使って描いているんですか?
Hongolian:ラフに使っているのはパイロットのクロッキーで、6Bという木炭みたいな柔らかい鉛筆みたいもので描いてます。これがめちゃくちゃ良いんですけど、もう廃盤になっちゃってて……見つけたら、結局買っちゃうんですよね。
――そのクロッキーの6Bを使ったラフのイメージが、本チャンのイラストにも生かされていると。
Hongolian:そうです。『MAKING THE ROAD』のときもラフは手描きで、色付けはPCでしたから。手で作る工程も大事にしつつ、最後は一番しっくりくる方法としてパソコンで仕上げてます。
――90年代の時点で、色付けはパソコンを使っていたんですね。
Hongolian:Macが出回り始めた時期で、当時は専門学校に通いながらバイトして、やっと買えた感じでした。
――90年代をリアルタイムで通過した世代には懐かしさがあるのかもしれませんが、最近ハイスタを知った若い世代にとってはHongolianさんのこのタッチのイラストや、今回の絵本は新鮮に映るという声もよく耳にします。そういう意味では、このタッチにはエバーグリーンな魅力があるのかもしれませんね。
Hongolian:僕のもとにも若い世代からのリアクションは届いていますが、そういう好意的な感想はすごくありがたいですね。
――この絵本を描く際、物語に沿ってイラストを1枚1枚仕上げていったんでしょうか?
Hongolian:そうですね、意外と起承転結を汲んで仕上げていきました。やっぱり、1冊の絵本としてお話を成り立たないといけないですからね。でも、最初はいろんなピースが転がっている中で、そこまでハイスタ寄りの描き方をしていなかったこともあって「なんか違うね」という声もあったんですよ。そうしたら、難波さんから「ツネちゃんのことも含めて、グッとハイスタに寄せちゃおうか」と言っていただいて。そこからはより焦点が定まって、描くスピードも上がっていきました。
――いい意味で視野がぐっと狭まったことで、物語も明確になったと。
Hongolian:なので、あえて抑えていたことも出しちゃっていいんじゃないかってことで、僕なりに感じることを赤裸々に描いた結果、こうなりました。
とにかく時系列や時間軸だけは重要視した
――Hongolianさん的にお気に入りのページはありますか?
Hongolian:自分で描いているから全部お気に入りではあるんですけど(笑)、特に挙げるとしたらこのCDにも使っているイラストかな。
――僕個人としては、自販機の前でたむろしているイラストがお気に入りで。昔、横山健さんにインタビューした際に、リハーサルやライブ終わりにこういうことをしていたという話を聞いたことがあったので、そことリンクしたんですよ。
Hongolian:まさにそのイメージで、これはリハーサルスタジオの駐車場の裏側で、練習が終わったあとに一服しているイメージで描いたものです。

――それこそライブハウスの床が市松模様なのも、新宿LOFTや下北沢SHELTERを彷彿とさせますし。人によっては過去の記憶が鮮明によみがえってくるけど、そういう歴史を知らない若い世代が読んでもリアリティが伝わる。だけど、イラストのタッチによって絵本らしい夢物語的な世界観も伝わって、その絶妙なバランス感が読んでいてすごく心地良いんです。
Hongolian:そこは狙いどおりですね。
――では、逆に描くことにすごく苦労したイラストはありますか?
Hongolian:『MAKING THE ROAD』のジャケットをオマージュした、このイラストかな。元となるアートワークがあるぶん、新たに描き下ろす際にはどう見せることが正解なのか、ほかのイラストよりも気を遣ったかもしれません。でも、それくらいかな。特に「すごく苦労しました」という感覚は、あまりないかもしれません。
――イラストには歌詞も添えられています。「このフレーズだからこの絵」じゃないですけど、どうやってマッチングしていきましたか?
Hongolian:物語の時間軸に添いながら、歌詞と照らし合わせてマッチングしていきました。もちろん、「こういう絵が描きたい」という思いが先行して描いたものもあったので、「どのフレーズにどの絵が合うかな」とハメ込んでは入れ替えたりということも繰り返しつつでしたが。
――実際に絵本を読むと、それぞれのフレーズと絵が合致していたので、すべて当て込んで描いたのかなと思っていました。
Hongolian:そう感じてもらえたなら、狙いどおりに仕上がったんだなと思います。とにかく時系列や時間軸は大事にしていて、『AIR JAM』や『THE GIFT』(2017年)のツアーなど、その瞬間がちゃんと伝わるように描きました。でも、これって思い出を並べただけのものじゃないんですよね。ZAXさんが入って、新譜も出して、今もライブをやってる。まだ現在進行形のバンドなんで。その先に続いていく感じ、未来に向かっている流れも絵の中に入れたつもりです。

――中盤にある、メンバー3人の写真に涙が落ちる絵や、隣の海を見つめる2人のメンバーの背中の場面などは、歌詞も相まって胸に来るものがありました。
Hongolian:ちょっと触れにくい部分ではありましたし、正直迷いはあったんですが、「振り切っていいよ」っていうことだったので、思い切って描いてみました。
「DEAR MY FRIEND」から受け取った思いが人それぞれ違う
――実際に完成した絵本に対して、難波さんをはじめハイスタの皆さんはご覧になっているんでしょうか。
Hongolian:そうですね。難波さんは「みんな温かくなったね」って、すごく喜んでいました。
――絵本って本来、子供たちが読み終わったあとに優しい気持ちになれるものであってほしいものだと、大人目線で感じているので、難波さんの「温かくなったね」って言葉は言い得て妙ですね。
Hongolian:なので、僕もその言葉をいただいたときはすごく嬉しかったです。
――読者からの感想も、すでに目にしているのでしょうか。
Hongolian:SNSなどで拝見していて、僕とはまた違った捉え方をされている方もいらっしゃいました。それもさっきお話があった、「DEAR MY FRIEND」から受け取った思いが人それぞれ違うからなんでしょうね。そこに関しては面白いなと思ったり、感動したりもしました。
――そういう感想の中で、特に印象に残ったものを挙げるとすると?
Hongolian:身内だったり近しい人の死と重ねることで、一緒に過ごした時間や思い出を含めて「ともに生きていたんだ」と実感することができた、「DEAR MY FRIEND」を通してそういうことを教えてもらえたという声ですかね。重たいテーマではありますが、そういう話にちょっと胸が熱くなりました。

――今回の「歌詞の本棚」に限らず、Hongolianさんは絵本をいくつか手がけていらっしゃいますけど、絵本を描く際に大事にしていることって何かありますか?
Hongolian:「俺が描いた絵本なんだぜ」っていう我の部分は半分ぐらいに抑えるところですかね。自分が描いてはいるものの、原作や元となる歌詞があるので、自分ひとりのものではないというところは常に意識していることかもしれません。
――「情熱の薔薇」を手がけてからちょっと時間が経ち、「DEAR MY FRIEND」で改めて「歌詞の本棚」という企画に携わったわけですが、前回と比べてご自身で成長したところ、あるいは変わらないところを感じる瞬間はありましたか?
Hongolian:変わったところでいうと、以前よりももっと自由度が増えたところはあるかもしれないです。ちょっと余裕じゃないですけど、「もっとやっちゃってもいいのかな」と思えるくらいに肩の力が抜けたのかなっていう。そのへんは、キャリアを重ねてきたからこそかなと思います。逆に変わらないところに関しては、意外と最初のインスピレーションが通りやすいんだなということ。いろいろ煮詰まった中で考えたものよりも、最初にパッと思いついたラフな案のほうが採用されやすいのは、昔も今も変わりませんね。
■Daisuke Hongolian
グラフィック・デザイナー、イラストレーターとして、国内外のミュージシャンのアートワークを数多く手がけ、自らもBBQ CHICKENSのヴォーカルを務める。絵本作品として『アイスクリームが溶けてしまう前に』『はからはじまるカルシウムのはなし』(以上、福音館書店)、『プログラムすごろく アベベのぼうけん』シリーズ(小学館)があり、歌詞(うた)の本棚シリーズでは『情熱の薔薇』も担当。2025年には「5BOOKS STORES」を立ち上げ、オリジナルアートをポスターやZINEを中心に発信・販売を開始した。
@daisuke_hongolian
■関連情報
HONGOLIAN presents
"ZOOMSCAPE"
2026年4月3日(金)~4月30日(木) at アート喫茶フライ(中目黒・東京)
東京都目黒区東山1−3−6−2F
@art.kissa_fly
■書誌情報
『歌詞(うた)の本棚 DEAR MY FRIEND』
イラスト:Daisuke Hongolian
著者:Akihiro Namba、Ken Yokoyama
価格:2,200円
発売日:2026年2月14日
出版社:リットーミュージック
























