台湾ベストセラー作家・林小杯 × 一青窈『さようならの練習』対談「人生はさようならの連続だと思っている」


台湾のベストセラーを歌手・一青窈が翻訳した絵本『さようならの練習』(ポプラ社)の刊行記念イベントが、2月23日、誠品生活日本橋 イベントスペース「FORUM」で開催された。イベントには作者の林小杯、翻訳を手がけた一青窈が登壇し、制作・翻訳にまつわるトークのほか、日本語・中国語での読み聞かせやサイン会も行われた。
『さようならの練習』は、林の実体験である愛犬ビビとの2度の別れを通して、命と向き合う愛おしさと責任を、美しい絵と文章で前向きに描いた作品。2022年にドイツ「The White Ravens」に選出、2023年に台湾「台北国際ブックフェア大賞」を受賞するなど、台湾内外で高い評価を受けている。
この日が初対面だという林と一青。林は、今年2月に開催された「第34回台北国際ブックフェア」で、一青窈の姉で作家としても活動する一青妙と先に会っていたことを明かし、会場の笑いを誘った。

2023年に『HOME』(工学図書)で初めて絵本の翻訳を手がけ、本書が2作目の翻訳作品となる一青は、『さようならの練習』を読んだ感想について「音楽の歌詞みたいだと思いました。説明しないんです。同じ表現をサビのように繰り返し使っているところもあって、(井上)陽水さんの詞みたいに多くを語らない」と歌手としての視点から紐解く。そして、「感情としては、余白も含めてたくさんのものを与えてくれるので、“説明しすぎない”というのが今回の肝だと思い、そこはすごく戦いました」と、翻訳するうえで意識した点を語った。
特に作中のクライマックスにある「この眼を開かせてくれる」という一節では、表現が客観的になる中国語をどのように日本語に訳すかで悩んだという。それは一青窈の代表曲「ハナミズキ」の歌詞を書くのと似た感覚だったそうで、「“僕”であり“君”であり、常に一人称が変わっていく。“みんな”であり、“私たち”でありという変化がこの本でも起こっていて、面白いなと思いながら訳しました」と振り返った。林も「文章の表現はできるだけ控えめにして、余白の部分を読者に感じてほしい」と、執筆時に心がけたことを語った。
林は20年前に『さようならというテーマ』という絵本を出版したが、思ったように表現できなかったことを自覚し、そのテーマがずっと心残りになっていたという。その後、ビビとの別れを経験し、「“さようなら”というテーマを書くにはぴったりだと思い、もう一度そのテーマに向き合って書きたいという気持ちが強くありました」と創作のきっかけを明かした。過去のイベントで涙ながらに感想を語る読者の声を受け、「この本がみんなのそばにいて、そういった感情を慰めることができているのなら嬉しいです」と笑顔を見せた。
本作は全6章で構成されており、基本はモノクロだが、ビビと過ごした第2章は緑、そしてラストの第6章は4色で色鮮やかに描かれている。「ビビは亡くなりましたが、飼い主の女性は“さようなら”を受け止めた、ということを表現しました。カラフルになったのは、女性の気持ちが変わったことを表しています。女性は未来に向けて少し気持ちが明るくなり、過去の思い出と一緒に生きていける、ということを表現したかったんです」と林は最終章に込めた思いを語った。

イベントでは、林とビビの仲の良さが伝わる写真の数々も公開され、会場に集まった参加者からは細かな描写についての質問も寄せられた。読者の熱心な思いに感謝を示しながら、林は「私の伝えたいことはすべて作品の中にあります」と語り、「ビビと別れて10年以上が経ちましたが、今は猫を1匹飼っています。ビビと一緒に暮らしたことは、今の猫と暮らすための練習だったのかなと思っています」と、本作を通じての現在の前向きな心境を明かした。
「人生はさようならの連続だと思っている」と語る一青は、「言葉にするって、すごいエネルギーを使うことなんですよね。『ありがとう』も、『大好き』も、『さようなら』も。本当に言わなきゃいけないことがうまく言えないと思っている人が、この本を手に取ることで、ちゃんと伝えようと勇気を出せる、そんな一冊になってほしいです」と本書への思いを届けた。
■書誌情報
『さようならの練習』
著者:林小杯
翻訳:一青窈
価格:2,200円
発売日:2026年1月28日
出版社:ポプラ社

























