ダ・ヴィンチの暗号は宗教の起源を指している? 神話・鳥居・八咫烏を貫く岡本佳之『ダ・ヴィンチの暗号解体新書』

レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画に暗号が隠されている――このテーマはポップカルチャーの世界で繰り返し語られてきた。しかし岡本が本書で試みるのは、美術ミステリーの延長線ではない。ダ・ヴィンチ作品を入口に、キリスト教・仏教・日本神話を貫く“宗教の共通設計図”を読み解こうとする、スケールの大きな思想的プロジェクトである。今回、その謎に挑んだのは岡本佳之氏だ。
岡本佳之は、歴史と都市伝説の境界を横断する独自の考察で注目を集めてきた研究系YouTuberであり、『アマテラス解体新書』『皇室と王室の解体新書』などで知られる人気シリーズの著者でもある。YouTubeチャンネル【考え方の学校 Yoshi Sun TV】を主宰し、日本史・神話・世界宗教をグローバルな視点から再検証するスタイルで支持を集めてきた。ロンドン大学LSE卒というバックグラウンドを持ち、日本国内に閉じない世界規模の文献を横断しながら検証を重ねる姿勢は、動画でありながら論文に近い密度を持つとも評される。本書『ダ・ヴィンチの暗号解体新書』は、その知的営みを一冊に凝縮した集大成と言える。
■宗教の“共通設計図”として読み解くダ・ヴィンチ
本書の中心仮説は明快だ。宗教神話の背後には、星座という共通言語がある。聖書の物語、仏教の神話、日本神話の神々や象徴は、文化ごとに孤立したものではなく、天体観測という古代人の知覚から生まれた象徴体系として読み直せる――岡本はこの視点から、宗教を“信じる対象”から“読む対象”へと転換させる。
序盤では、イエス・キリストの存在をめぐる議論や聖書の象徴構造が整理され、読者は宗教史を俯瞰する新しい座標軸を与えられる。重要なのは、著者が宗教を否定しないことだ。むしろ神話を人類の知的遺産として扱い、その成立過程を読み解き、理解を深めるための本なのである。
膨大な文献から立証される岡本の考察は、本書では断片ではなく体系として再構築されている。読者は宗教史・神話学・天文学を横断する思考実験を、一冊の中で連続的に体験する教養の連鎖に読み手を没入させる。
そしてこの視点は、ダ・ヴィンチ作品の読解に奥行きを与える。『最後の晩餐』『岩窟の聖母』『モナリザ』に仕込まれた構図や配置が、宗教象徴を再編集した視覚的メッセージとして立ち上がる瞬間は圧巻だ。絵画が思想の地図として見えてくる体験は、本書最大の読みどころのひとつである。
■八咫烏・鳥居・王国神話がつなぐ世界宗教
本書で注目されるのは、終盤に展開される八咫烏の章だ。ここで岡本は、日本神話を世界神話のネットワークの中に再配置する。八咫烏という存在がなぜ“導き手”として描かれたのか。その象徴を読み解く過程で、日本文化の奥底に潜む世界史的な連続性が浮かび上がる。
鳥居の起源をめぐる考察も興味深い。神社の入り口に立つ鳥居を、世界宗教の門・柱・宇宙軸思想と比較することで、神域と現世を分ける構造物の普遍性が見えてくる。日常の景色が古代文明と接続されるこの瞬間の驚きは、本書ならではの知的快感だ。
さらに賀茂氏の系譜を手がかりに、仏教とキリスト教をつなぐ“ある国王の名”が提示される展開は、歴史好きにとって見逃せない読みどころである。日本古代史が孤立した物語ではなく、ユーラシア規模の宗教交流の一部として立ち上がるスケール感は、本書の魅力を象徴している。
八咫烏への考察は、カラスの起源となる王国の話題へと広がる。王権象徴としての鳥、星座神話、宗教的イメージが重なり、日本神話は世界神話の一部として再定義される。
『ダ・ヴィンチの暗号解体新書』は、陰謀論の刺激に依存した読み物ではない。宗教・神話・芸術・天文学を横断し、人類が共有してきた物語の構造を示す知的ガイドである。歴史を暴くのではなく、歴史を読むレンズを更新する一冊だ。
ページをめくるたび、「もしこれが本当だとしたら?」という想像力が加速する。鳥居を見たとき、神話を聞いたとき、ダ・ヴィンチの絵を思い出したとき――それらが世界規模の象徴ネットワークとして立ち上がる。本書は、その見え方を変えてしまう。
ダ・ヴィンチの暗号を解く旅は、人類の物語の起源をたどる旅でもある。宗教、神話、都市伝説、美術史、古代史に関心のあるすべての読者にとって、本書は刺激的な入口になるだろう。読み終えたあと、世界は少し広く、少し深く見える。その変化こそが、本書が与えてくれる意識の変化と歴史の謎を解くという不変の魅力に溢れた一冊だ。
■著者プロフィール
岡本佳之
YouTubeチャンネル【考え方の学校 Yoshi Sun TV】の主宰。歴史・都市伝説考察系YouTuber。 世界でもトップクラスの知が集まるロンドン大学LSE卒。日本だけでなく世界の文献を元にさまざまな謎を検証していくスタイル。特にグローバルな視座から解きほぐす「日本の歴史」に関する歴史考察はもはや論文。
■書誌情報
『ダ・ヴィンチの暗号解体新書』
著者:岡本佳之
発売日:2026年1月30日
ISBN:978-4-86257-772-6
価格: 1,800円+税
判型:A5判
発売:内外出版社


























