ビジネスパーソンが見習うべきはネコ! ベストセラー作家・菊原智明に聞く、頑張りすぎず結果を出す働き方

世の中は空前のネコブームである。書店にはネコ関連の本がたくさん並んでいるが、菊原智明氏の新刊『ニャンとかなるネコ流仕事術』(宝島社刊)も、ネコの写真が満載の一冊だ。菊原氏と言えば、ビジネス書などを中心に85冊もの書籍を刊行しているベストセラー作家だが、今回の本は“ネコを手本にした働き方”という異色の一冊となっている。
菊原氏が注目しているのは、ネコ特有の、追いかけず、媚びず、自然体のスタイルで行動する点である。組織内の人間関係やチームづくりを円滑に進めるうえで、ネコの習性から学び、ヒントにできることは多い。ネコ流仕事術はテレワーク全盛の時代や、若い世代の働き方にも接続できるという菊原氏に話を聞いた。
■がんばりすぎない働き方のすすめ
――ネコを軸にした“仕事術本”という、ありそうでなかった一冊です。ネコのかわいい写真もたっぷりとあって、見ているだけで癒されますね。コンセプトはどのように生まれたのでしょうか。着想の原点をお聞かせください。
菊原:何より私はネコが好きなのです。長く住んでいる群馬県にはネコがたくさんいますし、いつもネコに囲まれて生活してきました。そんな大好きなネコをもとに、何か本が出せないかなと思っていたら、アンガーマネジメントで知られる知人の安藤俊介さんを担当する宝島社の編集者を紹介してくれて、形になりました。
ネコの特徴は、日常的な行動に力が入っていないこと。背伸びすることもなく、自由に生きているのが魅力的です。さらに、観察眼がすごい。こっちの機嫌が悪いと寄ってこないし、今日はちょっと遊びたいなと思ったときは近くに寄ってくる。つまり、空気を読む力が高いのです。そういった習性からも、ビジネスパーソンにとっては学ぶことが多いと思います。
――菊原さんご自身のキャリアのなかで、“がんばりすぎ”に気づいたきっかけはありましたか。
菊原:私はコンサルや大学講師をしていますが、その前はハウスメーカーで営業をやっていました。営業は数字が出せれば楽しいのですが、出せないと非常に厳しい世界。当時は相当無理をしていたと思います。何しろ、朝から晩までテレアポ、さらには個人宅にアポなし訪問を夜遅くまでやっていましたから。
困ったことに私は、頑張れば頑張るほど成績が落ちる経験をしました。成績が悪い社員は研修センターで営業とお客さんに分かれてロールプレイングを行い、1週間叩き込まれるのですが、そこで得たことをお客さんに披露すると、もっと売れなかった。頑張ったのに売れないというジレンマに陥ったことは、今でもトラウマです。
もともと私は理系で、工学部の機械科で材料工学を専攻しました。インターンで一度工場に勤めましたが、検品などの作業はきつく、1時間が長く感じました。そんなとき、近くに住んでいる車の営業マンがよく家に帰ってきていたので、これならできると思い、住宅メーカーの営業に飛び込んだのです。ところが、先ほどお話ししたように、想像以上に厳しい世界でした。
――営業で苦戦するなかで、気づいたことも多かったのではないでしょうか。
菊原:営業を経験してわかったのは、人間はいろいろなところで無理をしているということ。私は会社の根性型のやり方とことごとく合わなかったし、営業ではハキハキしゃべったり、抑揚をつけて話すのも苦手。アポなし訪問もダメ。結局、文字で気持ちを伝える方法にたどり着きましたが、これは自分らしいやり方を発見した瞬間でした。
会社に入ると先輩の教えやマニュアルがたくさんありますが、それが合わない人もたくさんいます。ただ、自分に合うやり方を見つければ活路を見出せると思う。ネコのように力を抜いてでも、できることはある。自分らしいやり方を発見し、強化していけば、結果を出していけると思います。
■人間関係は適度な距離感が重要

菊原:プレイヤーでは活躍できるのに、マネジメントだとうまくいかない人がたくさんいます。営業系は特に顕著です。自分なら契約をとれるのに、部下を教えるのが下手というパターンですね。そういう人は部下に口を出し過ぎで、世話をしすぎているのです。部下が失敗をする前に、意見をしてしまうとでもいいましょうか。
そのときはいったん解決するかもしれないが、部下が育つかどうかという点では疑問です。部下も、困ったら上司が教えてくれると思ってしまうので、永遠に上司だけが動くことになってしまう。やがて、上司の机の上に決裁書類が山積みになりだし、部下は動かない。上司だけが重労働になり、最後は潰れて辞めてしまう。
上司には、部下をあえて失敗させて勉強させるというような、マネジメント力が必要です。ところが、真面目でできる人ほど、口出ししたくなるんですよ。ハウスメーカーの上司は商談にもついてきたし、家の上棟式にも顔を出していました。部下が3~4人なら何とか回せますが、10人だとパンクしてしまう。ネコのような絶妙な距離感は大事ですね。
――距離感を作ることで、かえって部下から信頼を得られると。
菊原:部下が自主的に企画提案書を作っているときに、出来てもいないのに否定的なことを言われたら、やる気がなくなってしまうものです。そんな経験を多くしていると、指示待ちになってしまう。私はプロ野球のソフトバンクホークスのファンなのですが、ダイエーホークス時代ベテラン投手であった工藤公康氏は、その後メジャーでも活躍することになるキャッチャーの城島健司氏を干渉しすぎずに育てたことで知られています。こういった程良い距離感が、マネージャーには大切です。
――本書『ニャンとかなるネコ流仕事術』では、努力を否定せず「自分の気分と環境を整え、成果に向かいやすい状態をつくる」ことなど、仕事の本質的なことが多く書かれています。
菊原:ネコは一日中寝ているわけではなく、テンションを上げる方法をよく知っています。人間も、誰かにやる気にさせてもらうのではなく、自分で自分を盛り上げる方法を見つけていくことが大事です。成功したら甘いものを食べるとか、家でちょっといいビールを飲むといった具合に、機嫌を自分でとっていくことができれば、仕事も好循環が生まれていきます。
自分のテリトリーのなかに安心できる空間をつくるのもいい。本来はネコに限らず、人間もそんな空間を持っているはずなのです。しかし、人々は仕事の忙しさでそういったことができずに、ストレスが溜まり、パフォーマンスが落ちるという悪循環に陥ってしまいます。ネコのようなリラックス法を思い起こして、意図的に実践するといいでしょう。
■ネコは切り替え方も休み方も上手い

菊原:若い世代だと、仕事がすべての中心だと思っている人は少なくなっているように感じます。最近は、営業の世界でも飲み会は少なくなっているという話も聞きます。私の営業時代では、しんどいときはお酒に逃げることが多々ありました。飲み会がどんなにつまらなくても、上司に誘われたら必ず参加していましたね。何軒もハシゴして、休日は接待ゴルフ。休日はほとんどなかったです。
今振り返ると無駄なことが多かったと思います。自分の好きな時間を過ごすほうがいいですよ。しっかりと休んで切り替えて仕事で結果を出す。そのほうがお互いにいいですよね。人間関係で無理をし過ぎると、いい方向にいきません。
――菊原さんご自身が、実生活で実践して効果を感じている“ネコの習慣”はありますか。
菊原:営業時代の後輩の事例を紹介します。後輩は営業成績が悪くても怒られない。しかも、飲み会にもほとんど参加しない。部署のなかでは営業部長が天下なのですが、後輩はすり寄って、さくっと気前のいいことを言う。忘年会では、後輩が真っ先に部長へお酌に行く。「部長のおかげで会社がありますよ」と、わかりやすいベタなことを言って、3分くらいで去る。そのあと、私たちが説教される。彼は、人間関係は最初にインパクトを与えたらいいとわかっている。3分でかなりのメリットがありますからタイパはかなりいいです。その後輩はその後独立して会社を立ち上げ、現在でも成長を続けています。
――ネコのように絶妙な距離感を保っているのですね。
菊原:若い人たちは、上司を味方にする方法を考えてみてもいいかもしれませんね。そのコツは、ネコのように上司のもとにたまにすり寄る程度の距離感で付き合うということです。これができれば飲み会にも行かなくていいし、無駄に怒られなくてもいい。自分が好きなようにできますし、完璧です。
――感情の波やモチベーション管理に悩むビジネスパーソンに向けて、今日から取り入れられるメソッドがあれば教えてください。
菊原:私は営業時代から20年以上続けていることがあります。それは、4つのマトリクスを書いたノートに日々の出来事を記すことです。重要度と緊急度で4つのマトリクスに分割すると、「重要でも緊急でもない」というコーナーができます。重要でも緊急でもないところに、いいことが起こったら書き留めておく。好きなスポーツチームが勝ったとか、出版した本が重版したといった嬉しいことがあれば書くのです。
いいことが起こったら、何でもいいので活字で何回も何回も書いて味わうと、気持ちがどんどんポジティブになります。プラスの要素を味わい尽くすのです。書くことで頭に残るし、気持ちも整理できますよ。なによりモチベーションが上がるんです。
■無理して調子が悪くなる人に読んでほしい
――本を出版して、読者からの反響はありましたか。
菊原:私が教えている大学の生徒で、いつもは陽キャの学生がいるのですが、ある日突然、調子が悪くなってしまったそうです。どうやら、陽キャの自分をずっと演じていたようなのです。そんなときに彼はこの本を読んで、「無理する必要はないんだ」と気づいたと話してくれました。若い人たちは、楽しそうに見えていろいろな悩みを抱えていると思います。無理をして明るい自分を演じて苦しんでいる方にこそ、読んでもらいたいですね。
――最後に、本書を手に取る読者へ向けて、「しんどい働き方から軽やかな働き方」へと移行するためのエールやメッセージをいただけますか。
菊原:がんばり方が間違っている人が多いのかもしれません。仕事は、しなやかに動くネコのイメージで取り組むほうが、うまくいくと思います。グッと力を入れすぎずに、滑らかに仕事をする。そうするだけで、疲れ方が全然違ってきます。私はゴルフが好きなのですが、力を抜くように打つことでスコアが上がりました。
実際にトップの成績を出す人と、普通の結果しか出せない人は、やっていることはほとんど差がないことが多いのです。ちょっとした意識の違いで成績が変わる世界です。力が入り過ぎだなと思っている人は、一度脱力してやってみるといいと思うし、新しい自分の発見があると思います。ぜひ今日からネコのような脱力スタイルで仕事もプライベートも楽しんでくださいね。





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