昭和100年、経済から振り返る激動の時代 『経済で読み解く昭和史』刊行へ

経済評論家が解説『経済で読み解く昭和史』

 岡田晃による『経済で読み解く昭和史』(PHP新書)が12月17日(水)に発売される。

 明年2026年は、昭和元(1926)年から満100年にあたる。インフレや関税合戦、大恐慌、世界大戦など、激動の連続だった昭和経済史は、先行きの読めない令和においても参考になる事例が多い。著者の岡田は、日本経済新聞社で20年間、記者や編集委員を務め、テレビ東京では「ワールドビジネスサテライト」など、経済番組のプロデューサーやキャスターを歴任した経済評論家。本書では、昭和2(1927)年の金融恐慌から昭和末期のバブル景気までの経済政策を時系列で解説。近年の事例との類似点も紹介しながら、未来に向けた教訓を示している。

 今年4月に発表されたトランプ大統領の関税引き上げに世界中が驚きましたが、米国が自国経済の保護のために関税を大幅に引き上げることは、今回が初めてではない。昭和4(1929)年の世界大恐慌後に成立したスムート・ホーリー法は、2万品目以上に及ぶ輸入品を対象に、最大60%の関税を課すという内容だった。それに対抗して、各国は関税を引き上げる。著者は、「関税合戦は、米・英・仏などがそれぞれ植民地や同一通貨圏内ごとに『経済ブロック』を形成し、経済的な対立を激化させることになった。植民地の少ないドイツや日本はこれに対抗して、隣国・周辺地域への軍事侵攻を拡大させることで独自の経済圏構築を図り、こうしたことが第二次世界大戦を引き起こす経済的背景となっていく」と述べ、現在の経済的な対立にも警鐘を鳴らしている。

 本書で著者は、大正末期から昭和初期と、昭和末期から平成の時代は、よく似ていると指摘している。日本は第一次世界大戦の好景気から、戦後にバブルがはじけて不景気に、そこへ追い打ちをかけるように関東大震災が発生。その際に発行した震災手形が不良債権となり、銀行の経営を圧迫し、昭和2年に金融恐慌に陥った。こうした一連の流れが、昭和末期から平成にかけてのバブル崩壊、不良債権問題、阪神淡路大震災の発生と酷似していると、両者を比較しながら詳細に解説している。しかし、前者は高橋是清のリフレ政策で恐慌から早期に脱出し、景気回復に向かったのに対し、平成のバブル崩壊では経済政策の失敗が、長く景気回復を阻む結果となった。こうした事例から、昭和の教訓を令和に活かすことが大切だと、著者は強調している。

『経済で読み解く昭和史』 項目例
・大正時代に蓄積されていた銀行の不良債権
・平成バブル崩壊と同じ構図
・昭和恐慌─未曾有のデフレ不況
・金融緩和効果と円安で景気回復始まる
・関税合戦が世界恐慌を一段と深刻化
・英国が金本位制停止、各国が相次ぎ経済ブロックを構築
・欧米と経済対立─「日本はダンピング輸出」
・軍事費が国家財政を支配─大幅増税と国債増発
・敗戦直後の混乱─ハイパーインフレと食糧難
・ドッジ・ラインと一ドル=三六〇円─インフレ克服に荒療治
・神武景気と岩戸景気─高度成長時代の幕開け
・戦後最長「いざなぎ景気」─世界第二の経済大国に
・ニクソン・ショックから変動相場制へ
・石油危機─「日本沈没」の瀬戸際
・半導体が躍進─「重厚長大」から「軽薄短小」へ
・政策の失敗がバブルを膨らませた

著者紹介

岡田晃(おかだ・あきら)
1947年、大阪市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。記者、編集委員を経て、1991年にテレビ東京に異動。米国現地法人の社長、理事・解説委員長を歴任、経済番組のキャスター等を務めた。2006年にテレビ東京退職、大阪経済大学客員教授に就任。2022年より同大学特別招聘教授。経済評論家。著書に『明治日本の産業革命遺産』(集英社)、『徳川幕府の経済政策――その光と影』(PHP新書)などがある。

■書誌情報
『経済で読み解く昭和史』
著者:岡田晃
価格:1,210円(税込)
発売日:2025年12月17日
出版社:PHP研究所 レーベル:PHP新書

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